2.開通式典
書きため分があるので、今日はちょっと続1章分の一気公開してみます!
閲覧いただける方、増えるかな!? 増えたらいいな!
現在は早朝。日の出まであと一時間ほどだろうか。
「完成したのね。」
第13独立部隊屯所、格納庫。そこには真新しいマグナアルミスが屹立していた。
「ああ。お陰でこんな短期間で組み上げることができたよ。」
俺は完成したばかりのマグナを見上げながら言った。
「なら、予定通りに流せばいいのね?」
エリーゼはわずかに笑みを浮かる。
「悪いな、場所を借りた上に、そんな手間まで。」
「大したことじゃないわ。あなたにも、ルクトにも大いに助けられたのだし。それに、整備班のメンバーも、コレの組み立てはかなりいい経験になったみたいだしね。」
俺は周囲を見渡す。整備班の面々がそこかしこで倒れ、いびきをかいている。まさに死屍累々だ。
最初の頃は時間外に趣味的な感じで少しずつ組み立てしていたのだが、いつしかメンバーが増え、だんだんと熱が入り、気が付くと毎日午前様だった。
「いい経験ね……。」
良くも悪くも、"いい経験"かもしれない……。
「これで約束が果たせるな……。」
俺はルクトとの約束を思い出しつつ、再度マグナを見上げつつ独り言ちた。
「ほら! うちの整備班に入ってよかったでしょ?」
エリーゼは胸を張る。決して小さくはない、かといって大きすぎないソレが強調される。
「は、はは、まあな。」
俺は苦笑いしつつ、凝視しそうになる自分を抑える。エリーゼの言う通り、正直なところ整備班に誘ってもらったのはありがたかったと思う。
「と、ところで、今日はずいぶんと朝早いんだな。」
しかし、それを素直に言うのも気恥ずかしい俺は、少々強引に話題転換を図った。
「今日は8時からの"開通式典"警備があるから、早朝集合よ?」
そんな話題転換を気にする様子もなく、エリーゼは答えた。
「へぇ、そうだったのか。まぁ、警備なら整備班は関係ないし、俺は帰るよ。」
「え? あなたも行くじゃない?」
「へ?」
完全に想定外の言葉に、俺は声が裏返った。
「開通式典って、もしかしてあの魔導艦の?」
「他に何の開通式典があるのか知らないけど、その魔導艦よ。」
従来の魔導艦は航続距離が短く、飛行高度が低い。そのため、さながら伏魔殿のような海の上を飛行することができなかった。うっかり海の上に出ようものなら即座に巨大モンスターの餌食だ。どうして海に住んでる生き物(?)ってのはああも巨大なのかね……。
そんな魔導艦だったが、魔王が多数撃破され、その残骸から見つかった様々な新技術を導入することで、飛躍的に性能が向上したらしい。目覚ましい技術革新だが、これについて俺は一切関与していない。むしろ、これまでの技術の停滞っぷりが異常だったと思う。もしかしたら、これもオメガの影響だったのかもしれないが……。
「帝国定期航路開通式典って……、あれ、今日だったっけ……?」
帝国との戦後調停で、両国は不可侵条約を締結した。その条約には、魔導艦による両国間の交易路開通が盛り込まれているらしい。
「2週間前に予定の連絡と指示は行ったわ。まさか本当に忘れてたの……?」
なんとなく、聞いた覚えがあるような……。
「ま、まさかぁ……。もちろんこれから準備するに決まってるじゃないか!!」
「ふぅん、ちなみに、明日は海外への調査艦出発式の警備もあるから、頼むわね。」
エリーゼは疑わし気な表情で付け加えてくる。
「了解しました! 隊長殿!!」
俺はわざとらしく敬礼しておいた。
ここは王都郊外、新たに開港した魔道艦空港。本日、ここに帝国からの定期交易便が初めて到着する。
近衛兵団 第13独立部隊も、この記念すべき日の警備として動員されているのだが……。
おかしい。俺は整備班のはず。なぜ徹夜明け、朝日が目に染みるような時間帯に、直立不動で立たされているのか……。
徹夜したのは自分のせいか。
今日の予定を忘れていたのも自分のせいか。
全身義体だから機能的には寝なくても大丈夫だし、立ちっぱなしでも疲労しないはずだけど、精神的疲労感ってやっぱりあるんだな……。
大型魔導艦は、既に視界に見えている。空港の発着場へと緩やかに降下してくる。空港とは言っても、魔導艦は垂直離着陸だからあまり広さが要らないのはいいよね。
というか、俺の警備位置おかしくない? なんでこんなに魔導艦に近い位置なんだ? 出迎えとして王族のエリーゼが居て、あと初めて見たけど、たぶん王太子かな。なぜか俺の位置はエリーゼのほぼ真後ろ。目の前にアルバートが立っている。整備班所属の人員を立たせる場所じゃないだろ。いや、そもそも整備班立たせるな。
その疑問も、魔導艦が着陸し、タラップから降りてきた人物を見て解けた。
その人物はまず王太子へ挨拶し、続けてエリーゼへと挨拶。促されて豪奢な馬車へと歩を進める途中、俺に向けて鋭い視線を飛ばしてきた。
『久しぶりだな。』
鋭い思念波が俺の眉間を貫くように届く。
──殲滅卿!!
『その名は好まないと伝えたはずだが? それと私は子爵位を返上した。今は"卿"ではない』
どうやら驚きで心の声が漏れ聞こえてしまったらしい。
『それなら殲滅さん?』
直後凄まじい殺気が俺を包む。俺は全身隙間なくナイフを突きつけられたような気分になった。
『サーセンサーセンサーセン』
ひたすら気持ちの中で土下座しておいた。俺、よくあの人に勝てたな……。
思念でのやり取り、この間1秒未満。この1秒で俺の顔色はかなり悪くなっただろう。全身脂汗ものだ。いや、義体だから脂汗は出ないけどね……。
馬車に乗り込む直前、エリーゼにまですごい顔で睨まれた。
まさかハーヴァシター卿あらため、ハーヴァシター氏が開通便でやってくるとは。あの人への顔見せの意味で、俺はこの位置に配置されたわけか。
二日連続の式典警備で、精神的疲労感MAXだ。もう当分式典警備はしたくない。
俺は下宿の食堂で、食卓にぐったりと突っ伏した。
「珍しく、隊服姿ですね。」
今は夕食にはまだ少し早い時間だ。食卓を台拭きで拭いて回っていたレインから声がかかる。
「あー、そうだった……。」
そういえば、式典用に隊服姿になってそのままだった。白の詰襟で、たぶん普通に来たらかなり堅苦しいだろうし、なにより汚れが目立ちそうだ。なんでこんなデザインなのか。
体表の表示設定を変更し、麻上下のラフな格好に切り替える。瞬間的に体表のμファージが再構成され、服装が切り替わる。"着心地"とかないため、切り替え忘れていた。
「大丈夫ですか? だいぶお疲れのようです。」
レインは俺の傍らに立ち少し屈む。俺の目をのぞき込むように、赤い瞳がこちらを見ている。少し心配げな表情だ。
白銀の髪が垂れないように軽く耳の上で押さえている姿は、改めて見ても息をのむほど美しく……。
「うん、大丈夫、レインで癒された。」
「そうですか。」
レインは体を起こし、ぐるりと俺の後ろを回り込むと、ベンチ状に繋がった食卓椅子の隣に座った。
俺も上体を起こし、隣に腰かけたレインを見る。
「……、その、少しずつ、鈴城怜の記憶をサルベージしています。」
「うん。」
レインは俺と目を合わせず、言葉を続ける。
「怜の記憶の中に、"膝枕"というものがあって……。」
外に向けられた顔はよく見えない、が、耳が少し赤くなってる気がする。
俺は言葉の続きを待たず、そのままレインの膝の上に倒れこむ。ああ……、天国はここにあったのか……。
本当にレインの全身義体はすごい。膝枕は夢見心地だ。そういえば、さっきも赤面してたしなぁ。
「まだまだ夕方にもならない時間帯から、見せつけてくれますね……。」
食堂の入り口、ルクトが立っていた。
「おかえり。」
「おかえりなさい。すみません、夕食はまだです。」
俺に続き、レインが挨拶をする。ルクトは小さく「ただいま」と答える。なんだか暗いぞ?
「今日、学校に新しいマグナが配備されました……。」
お、昨日の今日だが、早速納入されたらしい。さすが、エリーゼ仕事が速い。
「おぅ、どうだったんだ?」
「……、おれ、選ばれました……。」
「おぉ! そうか、やったじゃないかっ!!」
レインの膝枕は少々名残惜しかったが、ここは強い意志を持ち起き上がり、ルクトを祝福しよう。
「……、コースケさんですよね……? わかりますよ、おれだって……。」
「あ……。」
やっぱり、露骨すぎたか。
以前、ルクト用のマグナを作る約束をしていた。せっかくマグナを準備するなら、裏でこっそりよりも、表立って乗れるほうがいいかと考え、学校へ納入できるようにエリーゼに取り計らってもらったのだが……。ルクトのプライドを傷つけてしまったか……。
「すまない……、余計なことをしてしまったみたいだな……、」
「本当に、そう思っているんですか?」
「うぐ、」
相当怒っているのだろうか……。
「そんなわけないじゃないですかっ!! めっちゃうれしいですよ!! おれ機兵科編入になったんですよ!! コースケさんのおかげです!!」
「……、エ、ア、ハイ。ドウイタシマシテ。」
急激なハイテンションでルクトは俺の手を両手で握り、乱暴なほどの勢いで握手してくる。ダメだ、若者のテンションについていけない。
「あ、すみません、ついテンション上がっちゃって。帰ってきて直ぐにお礼を言おうと思ってたんですが、憎たらしいくらい二人だけの世界に入り込んでたんで、少々いたずら心が出ちゃいました。」
ア、ウン、ソウダヨネ。こんなところでイチャついてる俺たちが悪いよね……。
「えっと、喜んでもらえてよかったよ……。」
ルクトは「機兵科教科の予習してくるんで」とハイテンションで述べ、二階へと駆け上がっていった。なんだったんだ……。
「まあ、徹夜した甲斐はあったかな。」
ふと横を見ると、既にレインは座っていない。厨房へと続く食堂出口に向かい、その手前で振り返る。
「続きは、また後にしましょう。」
心臓は無いはずの胸が、ドキリと高鳴った。
スペックシート:ルクト専用マグナ
名称:なし
種別:マグナアルミス
搭乗者:ルクト・コープ
全高:5.0m
重量:7.2t
装備:
・高周波振動式大剣
高周波振動により対象を切削する大剣。それを両手に所持し二刀流で戦う。
・障壁展開式シールド
思念力障壁搭載のシールド。
・鋼鉄製装甲
マグナ専用に鍛えられた鋼鉄で造られた装甲。
・管制システム
各部機能、各火器の制御システム。機体全体の動作サポートや火器類の出力調整などを行う。
さらに、機体の破損個所を診断し、自己修復を行う。修復には予備μファージを利用するが、
素材が足りない場合には優先度の低い部位を解体して補填するなどの処置も行う。
・思念同調システム
機体との同調を格段に引き上げるシステム。
手動操作も受け付けするが、思念による操作が可能となり、反応速度は劇的に向上する。
本システムは同時に使用者制限も設定されている。(使用者:ルクト・コープ)
・アクチュエータ
人工筋繊維と思念力を併用した駆動系を使用。
操作者が直感的に使用しやすいように骨格構成や動作パターンは人体を模している。
・PEバッテリー
高性能なエネルギー蓄積装置。装置内部に陽電子化した状態でエネルギーを保持するため、
小型で超高容量。無線給電によりエネルギー量は自然回復する。
諸元:
・PEバッテリー
容量:3000kWh、最大出力:500kW、最大蓄積能力:300kW
・フィールド発生器
最大出力:100kW(推力:20000N)
技能:
・飛刃
大剣に思念力を纏わせ、斬撃と共に撃ち出す。
・光盾
盾の思念力障壁にエネルギーを過剰供給し、瞬間的に小爆発を起こす。
シールドを使った体当たりというわけではないが、シールドバッシュと呼ばれることが多い。
特記:
・アルバート専用マグナの改修機を元にコースケが新たに構築した、ルクト専用のマグナアルミス。
最新のアルバート専用マグナと比べると、かなり落ち着いた設定となっている。




