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1.戦後処理と就職活動

蛇足っぽく続編など開始してみます。

毎日1話予定で更新していく予定です。

「やっぱりね……。」

 彼女はその手をルクトの肩に置きつつ、さらに言葉を続ける。

「いつかはこういう日が来ると思ってたんだよ、私は。」

 彼女の瞳には、同情とともに僅かな侮蔑の色も見えた。


「な……、ばかな、なぜ、こんな……。」

 ルクトは声が震えている。



「か……、」



「完全に濡れ衣ですよっ!!」

 そしてルクトは叫んだ。



「でもいいのかい? 大分年上に見えるけど。」

 ルクトの叫びを完全に無視し、サンディさんはレインに話しかける。

「はい、もちろんです。私にとってはコースケが一番です。」

 レインは俺の腕を抱きながら、笑顔で答える。うん、まじ天使。


 俺こと、"識名(しきな) 孝介(こうすけ)"は、先の戦いでルクトと完全に分離し、今は全身義体アモルファスになった。

 アモルファスは五感のフィードバックも優れた全身義体だ。だから、レインに抱かれた二の腕からの柔らかなフィードバックも素晴らしい。いや、これはレインの義体が素晴らしい技術をもって構築されていると考えられ……、

 いかん、思考が逸れた。


 ルクトと別れたことで、これまで存在していなかった"識名 孝介"という人物が出現した。

 このままだと無職の根無し草だ。まずは、住む家から、ということで、サンディさんの下宿を訪れたわけだが。


「ふぅん、まぁ、わたしとしちゃ、レインちゃんは働き者だし、いろいろバタついた後で人手が欲しいところだから助かるよ。なによりレインちゃんは娘みたいなもの。」

 サンディさんは笑顔でレインを歓迎した。

「むしろわたしの娘だからね。」

 唐突に声のトーンが変わる。俺には全く笑顔を見せてくれないらしい。


「お姫さんのおかげで、大した被害もなかったけど、それでも被害が無かったわけじゃない。住むなら、修理や片付けを手伝ってもらうことになっちゃうけど、構わないかい?」

 うって変わり、普通のトーンでサンディさんが俺に問う。最後に「もちろん家賃は別でもらうけどね」と一言も忘れない。


「はい、お手伝いします。」

 俺の言葉に、サンディさんは満足そうに頷き、レインは俺に笑顔を向ける。



 帝国侵攻から続けざまに起きたオメガによる王都襲撃。特にオメガの襲撃では王都住民の大半が操られる事態になった。このままだと、王都全体が混乱し、事態の収拾が難しい状況だったため、少々裏技を使った。

 レインのシステム・アルファを解除するまえに、一部記憶の改変をおこなった。といっても、それほど複雑なことはしていない。住民たちには操られていたときの記憶がなかったため、"モンスターが王都に大量に攻めてきたため、揃って避難した"という記憶をセットした。ついでに"エリーゼが殲滅卿の協力を得て、これを撃退した"という情報も付け加えたので、今頃二人は英雄に祭り上げられているだろう。その過程で、俺とレイン、ルクトの戦果が、エリーゼとアルバートに置き換わったのもご愛敬だろう。そうしておこう。けっして、面倒事を全て二人に押し付けたわけではない。断じてない。

 俺やレインの義体技術などを大っぴらに軍事利用されるのも危険だし、それにルクトも秘密裏にヒーロー出来るし、このほうが良いだろう。


 ルクトは一人「おかしい、濡れ衣だ。」とつぶやき続けているため放置しておこう。俺の部屋は二階の一番奥、ルクトの部屋の正面だった。






「うちの隊員になりなさい。」

 下宿の食堂。朝食を食べている俺の目の前には、極自然にエリーゼが座り、当たり前のように朝食を食べながら、今日の天気の話をするくらいの気軽さでそう述べた。

「だって、今あなた無職(・・)でしょ? それともレインに養ってもらう?」

「うぐ。」

 それでさえ固めの朝食パンが喉につかえる。

「私は構いません。コースケがやりたい仕事を見つけるまで、いえ、いつまででも養います。」

 食べ終わったエリーゼの食器を片付け、食後の飲み物を出しながら、レインは言った。

「ダメよ!! そういうのが男をダメにするのよ!!」

「そうよ! 男なんて、甘やかしたらどれだけでも甘えるんだから!!」

 なぜかエリーゼとサンディさんがものすごいシンクロ率でハモってくる。この喧噪では一向に朝食が進まない。


「大変ですね。」

 ルクトがニヤニヤしながら出かけて行った。なんだろう、この気持ち。

「これが憎しみか、今なら世界を滅ぼせる……、」

「馬鹿な事言ってないで、早く食べちゃって。」

 食べ終わって間もない俺の元に、サンディさんが食後の飲み物を置いていった。今日はコーヒーか。


「ちょうど今日は仕事を探しに行くところだったんだよ。荒事はレインが心配するから、荒事じゃない仕事で。」

 俺はコーヒーに砂糖を入れつつエリーゼに告げる。


「近衛兵団はどちらかと言えば荒事からは無縁よ? 王族の護衛や式典警備が主な任務だし。」

「ウソだぁぁ、誰かの隊は週一で戦闘に駆り出されてたぞ?」

「そんなことないわよ。せいぜい月に四回程度よ。」

「それを週一って言うんだよ!!」

 エリーゼが未練がましく「出撃しない週だってあるし……」と呟く。つまり週に二回出撃する場合もあるってことじゃないか……。やっぱりブラック分隊だ。


「コースケには、自分の特技や経験が生かせて、やりがいある仕事を見つけてほしいです。」

 レインは食卓を通りすぎながら、そう言った。

「え? 装備開発(とくぎ)戦闘経験(けいけん)?」

「おかしなルビを振るんじゃない。」

 確かにその特技や経験も間違いじゃないが、俺自身は元々製造業の一社員だったわけで。できればそんな感じの仕事が……。


「大体、戦闘向きの体なんだから、それを生かすべきじゃない?」

「ふっふっふっ」

 俺は思わせ振りな笑みを浮かべる。

「このボディはすでに改良しているのだ!」

 全身義体アモルファスをベースにしているが、省エネ化するために体の大部分は人工筋繊維を使った義体に置き換えた。

 まあ、有事の際にはそれらをパージして無形体(アモルファス)化できるんだが……。


「わかったわ! なら整備班ならどうかしら!! それなら戦闘には出ないわ!!」

 何が"わかった"のか全く分からない提案がエリーゼからなされる。直前の俺の発言は全く聞いていないらしい。

「まずは体験入隊してみて。大丈夫、一日からでも日当出すから。今ならそのまま正式入隊で入隊祝い金も出るわよ!!」

 なんか怪しいお店の求人みたいになってるぞ? でも整備班なら悪くないか……。あ、でも整備班ってアレだよな、「魔核の声を聴くんだ!!」っていうアレだよな……?

「よし! 早速今日から体験ね。さぁ! 行くわよ!!」

 言うが早いか、エリーゼは即立ち上がり、俺の手を引き出ていこうとする。

「え、いや、俺まだコーヒー……、」

 俺はコーヒーを飲むこと叶わず、引きずられるように下宿の外へと連れ出された。


「アル! 行くわよ!!」

「え、エリーゼ様!?」

 いつものように外ではアルバートが待っていた。アルバートを完全に置き去りにし、俺はエリーゼに引きずられて行った。







「ばかやろう! その魔核は脚に使うんじゃねぇ!! そいつはコックピット回りだ!」

「しっかり魔核の性質を診てから使え!!」

「魔核の扱いは特性重視だ。じっくり魔核を調べて、特性で判断するんだ。」


 整備班の親方らしいき年嵩人物が数名の職人に叱責をしている。

 この現場は相変わらずだなぁ……。って、アレ? なんか少し変わった?


 いや、だいぶ変わった。以前は大真面目に耳を当てて音を聴いてた、音なんてしないのに。

 それが今は違う。なにかの検査装置みたいなもので魔核を調べている。あれはもしかして魔核のシステム特性を調べているのか?


「以前ルクトが来てから……、あーっと、あの時も中身はコースケだったのよね? あなたの整備を見て、整備長が発奮してね。独自に研究して、あの検査器を作ったのよ。」

 すごい人だ。俺は情報端末(メディア)が分析してくれる情報を見たり、システム書き換えも情報端末(メディア)頼みだ。俺自身が特に何かをしているわけじゃない。でも整備長さんは、自力で調べてアレを作ったのか。

「まぁ、あなたみたいに、魔核の特性を書き換えたりはできないから、マグナの性能自体に特に変わりはないんだけどね。でもあの装置のおかげで、これまで経験と勘頼りだったマグナ開発・修理の現場は、劇的に変わったわ。」

「まさに職人だな。」

 なんだか、俺が情報端末(メディア)でマグナをいじるのが申し訳ない気持ちになってくるな。




「よし、アルバートのマグナでも改造するか。」

「えっ!?」

 気分転換だ!

スペックシート:識名 孝介


氏名:識名(しきな) 孝介(こうすけ)

性別:男

年齢:28(見た目上)

タイプ:中近距離戦

装備:

・PEバッテリー×2

 高性能なエネルギー蓄積装置。装置内部に陽電子化した状態でエネルギーを保持するため、小型で超高容量。

 無線給電によりエネルギー量は自然回復する。

・全身義体 アモルファス・セーヴィング

 外殻とフィールド発生器、PEバッテリーのみで構成された全身義体。

 駆動はWAS(Willact Actuation System 思念力(ウィラクト)により対象物を稼働させる駆動系)にて行う。

 そのため、非常に軽量で恐ろしく柔軟な稼働が可能。極論、人型を取る必要も無いため、無形体(アモルファス)

 名称がつけられた。

 スペック上は史上最強とも言うべき義体だが、あまりに人型を離れてしまうため正常な精神で使用できる使用者が現れなかった。

 この義体に馴染める者は、"新たな人類種"であると言える。

 機能改修:

 本機体は非常に燃費が悪く、最大稼働状態(アモルファス化)していなくてもエネルギー消費が非常に多い。

 そのため通常は駆動系WASを用いない機械式の義手義足で運用できるように改修を行った。

 最大稼働状態(アモルファス化)には、機械式の装備は全てパージされる。

 この改修により圧縮格納μファージをより多く内蔵できるようになった。

・圧縮格納μファージ

 機能を停止し、体積圧縮されたμファージ。体内の余剰スペースに格納保存されている。

 そのままでは使用できない。使用する場合には解凍展開、機能の再起動を行う必要がある。

 展開すると黒い粘液体で広がる。展開状態であれば装備の設計変更、再構築など、様々な用途に使用可能。

諸元:

・PEバッテリー×2

 容量:6000kWh、最大出力:1000kW、最大蓄積能力:600kW

・フィールド発生器×6(全身の各部位)

 最大出力:290kW(推力:3000N)(6基合計)

技能:

・飛行

迫撃掌(アサルト)

 ウィラクトによる衝撃波。近距離用であるため、射程は数十cm。

束撃弾(スラスト)

 ウィラクトによる衝撃波。高収束による遠距離用。射程は数m。

 スラストタイプは距離で威力が減衰するため、攻撃力は迫撃掌(アサルト)の方が高い。

速射束撃(ガトリング)

 連射式の束撃弾(スラスト)。義手内部のフィールド発生器を改造し、圧縮器を並列2層としたことで可能となった。

攻勢手甲(ガントレット)

 ウィラクトで手足のアーマーを強化し、攻撃力を上げる。射程は手足の届く範囲。

 威力は迫撃掌(アサルト)束撃弾(スラスト)に及ばないが、一旦起動すると数分間は効果が持続する。

思考攪乱(パラライザ)

 ディール粒子かく乱により思考混乱。一時的な全身麻痺を起こす

 相手の頭部付近に直接触れる必要がある。

思考攪乱改(ハイパラライザ)

 思考領域の一部に自立稼働プログラムを埋め込む。そのプログラムは継続的に思考攪乱を発生させ、全身麻痺を誘発する。

 従来の思考攪乱では効果の薄い相手への対策として考案したシステム。

 使用には相手の頭部付近に直接触れる必要がある。

拒絶障壁(ウィラクトシールド)

 思念波を球状に展開し、防御用の障壁を生成する。物理的攻撃や思念力攻撃を防ぐことができる。

 改修前のアモルファスは防御不要のため搭載していなかったが、機械式の四肢を搭載したことで防御用機能を追加した。

無幻残影(デヴァイドミラージュ)

 全身の簡易式フィールド発生器から放出されるウィラクトで、自身の残像体を発生させる。

 体の一部だけ、もしくは全身の残像を発生させることができる。

 残像体はウィラクトの塊であるため、攻撃として使用することが可能。ただし攻撃すると消滅する。

攻勢手甲(ガントレット)重撃(オーバーレイ)

 攻勢手甲(ガントレット)による攻撃に無幻残影(デヴァイドミラージュ)の分身体による攻撃を積層し、

 お互いの効果を増幅させた攻撃。それぞれ単発で行った場合の攻撃に比べ数倍の威力がある。


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