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8.邂逅再び

いつもお読みいただきありがとうございます。

本日も更新いたします。

「エリーゼ様!! ここは危険です!!」

 既に度重なる戦闘で共同溝の強度は限界だった。崩壊が始まっている。

「ルクトを置いてはいけないわ!!」

「し、しかし、あの速度域では我々にはどうすることも……!!」

「っ!!」

「コースケッ!!」



 攻撃が交錯するたびに|視界投影型ディスプレイ《インサイトビュー》に表示される異常個所が増えていく。


 足同士が交錯し、お互いの外殻を弾き飛ばしながら吹き飛ぶ。

 右手と左手が衝突する。反動でお互いに数mずつ後方へと吹き飛ぶ。俺は義手の指が数本外れた、フィーデも手の外殻が剥がれている。


 お互いに通じあったように、その手に力を溜める。

 俺は左手の圧縮器にチャージを、フィーデは右手から炎が立ち上るほどに思念力(ウィラクト)を注ぎ込む。



 突然の静寂。



 天井のかけらが1粒、落下し──、



 自壊迫撃(アウトバースト)と炎熱した拳が衝突する!!

 行き場を失った思念力(ウィラクト)が漏れ出し、周囲の物体を無差別に圧壊する。


 圧迫された思念力(ウィラクト)の力場が限界を超え、激しい爆発を起こし、狭い溝内に衝撃波の乱気流が吹き乱れる。





 明るい……。一瞬意識が飛んでいた。気が付いたときには瓦礫に半分埋まり、崩れた天井の先、青い空を見上げていた。

 やけに空の青さがしみると思ったら、フルフェイスも破壊されて裸眼で空を見ていたからだった……。


 体を起こすと、瓦礫がガラガラと崩れ落ちる。


「くっ」

 左手の義手も粉砕し、肘から先がもげてしまった。


「グォォォォォ!!」

 やはり健在であるフィーデは俺の姿を確かめると、瓦礫を乗り越え真っ直ぐに俺へと向かってくる。その右腕は折れ曲がり、通常は曲がらないの方向へ向いている、が、左手は無事のようだ。

 瓦礫を跳躍し、俺に向かって落下軌道を取りながら左手による鋭利な突きが繰り出される。


 右ハイキックで突きを迎え撃つ! 爪が足を貫く。|視界投影型ディスプレイ《インサイトビュー》では右足に「全壊」表示が灯る。


 勢いのままに俺の右足を裁断したフィーデは、そのまま俺の胴体に向け左爪を──、

自壊迫撃(アウトバースト)ぉぉ!!」

 左足のフィールド発生器は、自身を破壊しつつ強烈な衝撃波をフィーデの胸に叩き込んだ。


「グボァァァァッ!」

 外殻をまき散らしつつ、フィーデは瓦礫の上をワンバウンドし、数m先に落下した。俺もそのまま瓦礫の山へと落下した。


「いってぇ……、」

 もう左足しか残ってないし、起き上がれない。



「コースケ!!」

 瓦礫に躓きながら、レインが駆け寄ってくる。先ほどよりも更に埃だらけになっている。だが、無事らしい……。よかった。


「コースケ!! しっかり!!」

「だ、大丈夫だって……。」

「あぁぁぁ……。」

 レインは感極まって俺の頭を胸に抱く。う、や、やわらかいものが……。


「大丈夫か──、!!」

 アルバートは接近しつつ、何かを見つけた。


「……、少し冷静になったよ……、」

 レインの胸に埋まりながら、瓦礫の上に立つフィーデを見る。全身の外殻はボロボロで、右腕も折れ曲がったまま。

 どうやら、自壊迫撃(アウトバースト)のチャージが不十分だったことが、彼女の命を救ったようだ。


 途端、フィーデの残った外殻が全て吹き飛び、盛大に白煙をまき散らす。


「に、逃げるつもりだ……、」

 夜警の時と同じだ。煙幕に紛れて逃げられる。


「……、でも、礼は言わない。」

 近いような、遠くからの声。そしてそのまま気配は消えた。




 白煙が晴れた後、そこにはフィーデと……、ロディの姿は無かった。

「やれやれ、証拠を持って行かれたわ……。」






 手足無しのままでは帰るに帰れないため、即興で簡易義手義足を構築し、帰宅した。

 棒状に申し訳程度の稼働装置がつけられただけの、明らかに見た目が異常な義手義足だ。全体のフォルムは"人体"としていかがな物か、と言いたくなる様相だったと思う。しかし、薄汚れてドレスアーマーがボロボロになったレインをみて、サンディさんの思考は停止したらしかった。負傷は俺の方が重傷なんだけどなぁ……。

 そのおかげか、"浮気疑惑"という濡れ衣について追及されずに済んだのは不幸中の幸いか。


 今回の戦闘でほとんどの装備が壊れてしまった。エリーゼには魔核の報酬をたっぷりと要求しておいた。「もちろん! 期待しておいて!!」と、全く期待できない言葉を残し、エリーゼどアルバートは兵団屯所へと戻っていった。



 レインに肩を借りることで、自分の部屋前までなんとかやってこれた。


「ありがとう、レイン。もうここでいいよ。」

 レインに礼を告げ、俺は部屋の戸に手をかける。


「無理を言って付いて行ったのに、私は役に立てませんでした……。もっと、強くならないと……。」

 レインが熱い視線を向けてくる。うん、これは強化よろしく!って意味だな。

「あ、はい、わかりました。」





 体が重い。おかしいな。むにゃむにゃ、寝る前に義手と義足の修繕だけは行ったはず。

 んぁ? これは夢か?


 目を開くと、山吹色に染まる空が目に入る。


「あー、ここはいつぞやの……。」

 俺は体に視線をやる。


「なんで俺、畑に埋まってるんだ?」

 首から下が全て埋まっていた。誰だよ、こんな嫌がらせしたの。


「やぁ、コースケ。」

 しゃがみこみ、ルクトが俺を覗き込んでいた。


「よぅ、ルクト。悪いけど、掘り起こしてくれない?」

 俺の言葉に、ルクトはしばし畑を見まわし、そして非情な言葉を告げる。


「いや、無理そう。見た目は畑の土だけど、触れたら異常に硬質なナニカだ。たぶん、疲れすぎなんじゃないかな……。」

 "まいったね"と言いつつも、ルクトの表情は少しも"まいった"感がない。ちくしょう、人ごとだと思って。


「いやいや、人ごとでもないよ。確かにコースケが"ルクト・コープ"として生きてくれた方がいいかも、とは言ったけど、あんまり無茶すると、おれの身体が死んじゃうからね。まあ、これも戒めだと思って。」

 そう言いつつ、ルクトはにっこりと笑う。なんか明るくなったな。いや、むしろこれが本当のルクトなのかも。兵学校での様々で追い詰められたいたんだろうな。


「そうそう、それでさ。」

 ルクトは華麗に話題を転換する。あー、やっぱ俺はこのままなのね。


「何かコースケを手伝えることが無いかと思って、情報端末(メディア)で勉強していたんだ。」

 ルクトは分厚い革張りの本を開き、ぱらぱらとページをめくる。どうやらルクトにとっての情報端末(メディア)はああいうイメージらしい。


「あ、もちろん記憶関係は見てないよ!! 例のアレみたいな──、」

「だー! やめれ!! それ以上言うなっ!!」

 俺は首だけをじたばたと動かしてつつ、ルクトの声をかき消すように叫ぶ。


「あーっと、これ、これを見てほしい。」

 さほど動揺した感じもない。さすがに神経が太い。

 ルクトは俺に分厚い本のあるページを開いて見せた。


「こ、これは……、全身義体の設計図面?」

 すごい。表記されているスペックが事実なら、これは恐ろしい力を持っている……。でもこんな図面見た覚えがない。


「この本は、ずっと鍵がかけられていたんだ。だけど、少し前に突然鍵が外れた。」

 確かに、本には金属補強した革ベルトがつけられており、元々は施錠されていただろうことが窺える。


「たぶん……、君があの弟くんに、最後の攻撃を当てた時だと思う。」

 あの、時か……。なんだろう。もしかして、俺もかなり多くの記憶を失っているのだろうか……? 急に不安が押し寄せてくる。


 気が付けば、山吹色だった空は宵闇が広がりつつあった。


「すまない。コースケを不安にさせるつもりは無かったんだ。」

 この空の変化は、俺の心境によるものか……。うん。気にしすぎるのは良くない。気分を上げて行こう。ほんの少し、空が明るく変わった気がした。


 俺は|視界投影型ディスプレイ《インサイトビュー》で情報端末(メディア)にアクセスし、ルクトが解放した図面を流し見る。

「これだ。」

 俺はその中の一つをポインターし、ルクトにも見えるように空間へと投影した。この半分夢の世界だからできる芸当だな。


 中空に浮かぶ設計図面。そこにはディール粒子の思念伝達特性を用いて、思考を継続したまま器を移動する機構、つまり全身義体へと転換するための装置が記載されていた。


「この装置と、さっきの全身義体を準備すれば、ルクトに体を返せる!」

 ルクトは嬉しいような、寂しいような不思議な表情をしている。


「大丈夫! 別の体になっても、俺はルクトの味方だ。ルクト専用のマグナも作る!!」

「……、ありがとう。」

 ルクトは笑顔で答えた。


「しかし、問題がある。」

「そうだね。」

 俺とルクトは頷きあう。


「魔核が全然足りない。」

 また、当面は魔核集めだな。




==================================================




 東の大帝国、神聖レジオカント帝国の帝都。その中心部には豪奢にして勇壮な宮殿が存在する。

 ただ執務をするだけにしては広大な執務室。その最奥には老齢にさしかかる1人の男が執務机に向かい、難しい表情で報告資料に目を通す。

「陛下、ハーヴァシター卿はなんと?」

「かの"巨人"は、どうやら新たな種として根付いてしまったそうだ。」

 陛下と呼ばれた老齢の男は、書類から目を上げずに答える。


「な、なんと……。」

 側近らしき男は、わざとらしいほどのリアクションで驚きを表現している。


(ふむ、新種の定着は成功したか……。)


「だが、弱点も判明し、撃退することも難しくはないそうだ。」


(アレでも、やはり足らぬか。)


 何者かは、陛下と呼ばれた男の意識相へと手を伸ばす。


「これなら、ふんぐぅ!!」

 "陛下"は目を見開き、中空を見たまま停止した。


「へ、陛下?」

 "陛下"の異常に、側近の男は恐る恐る近づく。


「大丈夫……、ですか?」

 "陛下"の体が細かく振動し、目に生気が戻る。


「こレナら、王コクを攻メ滅ボせるナ。」

「陛下……、今なんと?」


(歴史では、人の敵は必ず……。)


ブクマや感想などいただけるとありがたいです。

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