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第51話

 エレオノーラの船長室で、二人は洗濯物が乾くまでお喋りした。

「これまであんたは、どうやって過ごしてきたんだ?」とエレオノーラがリオナに聞く。

「おばあちゃんは古い屋敷に住んでるおじさんに同情で物置をタダで貸してもらったんだ。あたしの父ちゃんは傭兵で戦争で死んで母は病死。みなしごになっておばあちゃんと住んでたけど、そのおじさんが死んで息子がその家をホテルに立て直すっていうんで出て行ってくれと言われてたのさ。おばあちゃんは家々の洗濯物を預かっては洗濯して届けるので暮らしてた。裏にすごいお屋敷があって綺麗な奥方が住んでたけど、その奥方が病気で亡くなってその屋敷は誰も住む人がいなくなって、壊れた塀の隙間から庭に入ると、高そうな花が手入れされてない庭に野草みたいにいっぱい咲いてたんで、それを摘んで私は毎日往来で売ってたのよ」とリオナが言う。「そうなんだ」とエレオノーラは神妙な顔。

「エレオノーラさんは、どんな暮らしをしてたの?」

「あたしはジステン鉱山町の娼婦宿の娼婦の子として産まれたんだよ。でも、13になって、このままだと、また母親に、娼婦宿のオーナがありもしない莫大な借金をでっちあげて、『母親の借金をお前が返せ!』と、あたしも母と同じ娼婦にさせられるな、と思ったのさ。それで母の元を去ったんだ。母のお客がお金がなくて春代に置いていった大剣を持ち出して装備して女傭兵になったのさ」「へええ、あなたも苦労してるんだね」とリオナ。「……13歳?!……ありえない。あたしより年下? 背も高いし、とても見えないわ」とエレオノーラの発育良すぎる巨乳と自分の貧乳を見比べ、またため息。

「あたしと同い年のジレッタを見たらもっとびっくりするよ。身長180センチで体重180キロだから」

「ひえええええ~!!」とリオナは眼をぱちくり。


 洗濯物が乾いたので、リオナとエレオノーラは取り入れて畳んで、それぞれの部屋に置いておいた。


 夕方6時前に、みんながそれぞれに一日を有意義に過ごして帰って来た。人狼のメーアはすぐに食事の支度を始めたが、エレオノーラが「九人分これからお願いね」と言うのを聞いて

「?」

 エレオノーラはリオナを他の七人に紹介した。夕食は、リオナの歓迎会に変わった。

 デリラもハルナもメーナもジレッタも、フレデリカも、アイオラもアチキも、ビューティアイランドで大量のお買い物をしてきていた。

 リオナがキチンと船の中を片付けてくれていたので助かった。

 人狼のメーナが食事の支度をする間、みんなは今日一日、ビューティアイランドで何があったかを楽しそうに話した。メーアが短時間に巨大なミートパイを造り、シチューを作った。アチキはその間に牛乳と卵と砂糖に魔法をかけてアイスクリームを作った。

 八人の女の子に温かく歓迎され、さらにとびきりのメーアの美味しい美味しい夕食に、リオナはまた感動の涙、涙だった。



 食後にハルナがみんなに美味しいカモミールティを入れてくれた。

「いい香りのお茶だな」とエレオノーラ。

 エレオノーラはリオナの歓迎会である夕食が終わってから、フレデリカに、すっかり忘れていた、マダム・ブラスターからあずかった、魔力を上げる魔具の妖扇と魔力の白銀の髪飾りと魔力の白銀の靴を渡した。「……フレデリカ姉さんの装備をコロっと忘れてた……」

 フレデリカがデリラに聞いた。「うふん♪ わたしの家は代々、地方で神にささげる踊りを踊る巫女の踊り子だったんだけど、両親はそれじゃ食べていけないんで旅芸人になったんだけどん。まあ、結局魔物に殺されて私だけ助けられたんだけど。母から、巫女の魔法のローブとして、『ユニコーンのローブ』と『バイコーンのローブ』というのをもらってるんだけど、どっちを着ればいいん?」「あなたならバイコーンのローブですわね」とデリラは意味深に笑う。

 デリラが言う「ユニコーンのローブは清らかな処女の魔力UP。バイコーンのローブは恋多き女の肉欲の情熱で魔力UP、するのですわ」

 フレデリカ「うふん♪ なるほど、さすがは魔法王女だわん。娼婦のわたしはバイコーンねん」

 これでフレデリカも魔力UPした。


「ねえ、デリラ。わたしは船長だけど、あなたは作戦参謀というか軍師をしてくれない? 今度戦うときはあなたが指揮してほしいんだよ」とデリラにエレオノーラが頼む。

「あら、わたくしが仕切ってよろしいの? いいわ。真摯にお受けしますわ。うふふ」とデリラ。


 ビューティアイランドで買い込んできたスイーツをみんながてんでにテーブルの上に広げて、アイオラが錬金術で海水から作ったコーラを持ってきてくれた。アチキがコーラに氷を入れる。ハルナもカモミールティを大きな銀のティポットで入れてくれる。食後の団らんのお喋りは楽しい。

 みんなの前でリオナがエレオノーラに聞いた。

「生まれて初めて、男性用の大剣を持って、すぐに傭兵になって、13歳で戦えたの?」と興味津々。

 エレオノーラはアチキのアイスクリームを口いっぱいに頬張りながら、答えた。

「鉱山町ジステンのオーナであそこら一体の領主であるパドレ伯爵が毎年開く剣技会に17歳と偽って覆面して少年のフリして参加して戦って優勝したのさ。それで、やれる!、と思ったんだ。賞金を手に入れてそれを持って家出したのさ」

 フレデリカが言う。

「うふん♪ エレは自分の怪力を直前まで隠してたのさん。あたしはただの男っぽい女の子だと思ってたよん。家出する直前に娼婦宿の女将のごうつく婆の金庫をぶっ壊して中にあった全員の契約書や借用書を持ち出して燃やしちまった。娼婦宿の用心棒20人を殴って気絶させちまった。あと酒場にあった二軒のぼったくりバーに殴り込んで、経営者を締め上げて、二度とぼったくりバーは致しません、明朗会計の酒場にします、と誓約書を書かして、その二軒の経営者を服の首根っこを戸口にくぎで打ちつけてその誓約書を張って、さらし者にしたのさ。エレの母親はそれでも娼婦を辞めなかったけどね。この子はジステンの酒場じゃ、伝説の女無法者になってたよん♪ うふん♪」

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