第50話
船は、小さな島に着いた。ビューティ島という。
ここは海の要所にある人口島で、もともと浅瀬だったところを、100年以上の歳月をかけてドワーフたちが工事をして造り上げた島だと、旅行好きのデリラが言った。彼女はこの島にすでに何度も来ているそうだ。
ここは交易港であり大きな交易船が行きかう。
人口の非常に多い島で島にある建物は高層建築ばかりである。
その上に人工の緑と花園が造られていて、お洒落な服や美味しい料理、スイーツ。
めずらしい貴重な魔法で造られた錬金術の製品が武器や防具、魔法の道具の生活用品、便利用品まで、あらゆる商品が取引されている。
人込みでごった返し、街は華やかで美しい。
デリラの希望で、ここに数日停泊することになった。八人は夜六時の夕食まで自由行動。アチキはエレオノーラといつも一緒だけれど、きょうはスイーツが食べたくて単独行動
美しい表通りの裏側に、ごみごみした薄汚れた裏通りがある。エレオノーラはそういう場所が好きである。
裏通りを、慣れた感じで歩いて行くと、後ろを一人の女の子が付いて来る。そばかすのある可愛い大人しそうな顔した子だ。
その子は「花はいりませんかー」と一束の花を売っていた。
その子に5,6人の不良グループが絡み始めて、不良グループは彼女の花を取り上げると足で踏みつけて笑っている。
エレオノーラはその不良をいきなり胸倉捕まえて、一発づつ殴って気絶させると、
「その花の値段はいくら?」「銅貨10枚だよ」と女の子。
エレオノーラは不良グループのリーダーらしい少年のポケットの財布から銅貨10枚を取り上げると、残りを少年に返し、銅貨10枚を女の子に渡した。
「これでいいね?」とにっこり。また、ブラブラ歩きを始めた。その女の子はまたついて来る。
裏通りの屋台街で初めて見る美味しそうな海鮮クレープを買い食べていると、その女の子がじっと見ている。
「私に何か用事?」と聞くと、「うん」と答える。
彼女のお腹がグー!と鳴った。エレオノーラは、海鮮クレープをもう1個買うと、彼女におごってあげた。
「ありがとう」と少女はうつ向いたまま、美味しそうに食べた。
エレオノーラは屋台の長椅子に座りながら聞いた。
「私に何か用?」
「うん、あのね、ハンターになって成功するにはどうすればいい?」と聞く。
「あんたはだれ? 何が希望だよ?」と聞くと
「私はリオナ。きのうで15歳なったばかり。面倒見てくれてたおばあちゃんが先週死んで、自分の身の振り様を考えてたの。冒険者になりたいけど、強くない。魔力のある家系でもない。おばあちゃんはただの洗濯屋だったから」
「あなたはとても強そうで、きっと強いハンターなんでしょう?」
「ああ、ハンターだけど、まだ白銀だよ」ーーこの前のアイロス小公子の護衛でエレオノーラは白銀クラスになっていた。
「私、冒険者になって強くなりたいの。どうすればいい? 私は魔物なんか一度も見たこともない。戦ったこともない。スライムすら見たことないんだもの」
エレオノーラは少女をそのビューティ島のギルド酒場に連れて行った。
ビューティ島のギルド酒場はお洒落な建物だった。
「あの、冒険ギルドは何歳から登録できるんですか?」
マスターが言う「こちらで、面接やテストをして合格しさえすれば、何歳からでも問題ないです。規制はありません」
「ここで冒険者に登録するんだよ」エレオノーラは、女の子にかわってマスターと話し、女の子を登録して、初級のハンターにしてあげた。
「初心者で何もわからないので説明を受けたいんですが」
「わかりました」とおじさんは言うと、パンパンと手を叩いた。
奥から若い女性が出て来た「この子に説明をしてあげてね」と言うと、
次に待ってるハンターたちの相手を始めた。
「どうやったら、強くなれるんですか?」
「モンスターの弱いのと戦ってみて、何の武器が自分に適してるかをまず知ること。そして地道に回数多く戦って戦い方を覚える事。あと、お金を貯めて、より性能の良い武器や防具を買う、という方法がまずありますね」とお姉さんはリオナに説明した。
「そして戦いを幾度も経験して、自分で訓練や修行してその武器の使い方に習熟することです。その武器と相性が良ければ必殺技とかを習得してる人もいますね。そうやって自分で努力して訓練で場数を踏むことで強くなっていくんですよ」と女性が説明する。
「まあでも、最初から、高レベルの武器防具を手に入れて装備している、初心者だけどとんでもなく強い、と言う人も、たまにいますね」とお姉さんは笑う。
「そういう高レベルの武器や防具はどうやって手に入れるんですか?」
「素材を集めて、錬金術師に作ってもらうんですよ。色々魔法の性能もオーダーして付けて貰ったりね。それかそういう性能のついた武器防具を武器屋で買うんですね。錬金術師の知り合いがいなければ」
「自分で勉強して錬金術はできないんですか?」
「錬金術師も魔法使いと同じで、産まれながらに魔力がないと全くできないですね」
「……」
「産まれながらに魔力が無くても、魔力を上げる装備や魔法の杖や魔具で魔力を持てるようになるよ」と横からエレオノーラ。
「……ホントですか? メモメモ……」とお姉さん。
「私は今日の食べる物買うのがやっとで、そんな武器も防具も買うお金なんてない……でも冒険者になりたい」
「まあ、ぼちぼち頑張ってください。じゃあ説明はこれで終わります。依頼を受けるなら、またカウンターのマスターに話してくださいね。じゃあ」と言うとお姉さんは奥へ引っ込んでしまった。
女の子はうつ向いたっきりだ。
「ああ、良かったら、おばあさんは洗濯得意だったんだね。あなたも洗濯得意?」
「うん、洗濯は得意だよ」とリオナ。
「じゃあ、私たちの船においで。洗濯物と片付けや掃除もしてくれればありがたいけど」とエレオノーラが誘う。
「みんな、クルーは洗濯が苦手で、つぎの島まで洗濯物ため込んで、まとめて洗濯屋に出してるんだよ」
「私はハンターの修行がしたいんだけど。船って輸送船?」
「女海賊船だよ」とエレオノーラ。
「か、かいぞく?!」
「あはは、三つ編み海賊団、王女様が魔法のワンピースを捜す旅をしてるのさ」
「そ、そうなの、驚いた、王族のお遊び?」
「お遊びじゃないよ。どう?うちへ来る? ハンターとして強くなれる様に協力してあげるよ」
「ほ、ほんと? 私なんかでいいなら、行く」
「おーけー」
「でも、あたしは今着てるこの古いローブしか着る服も持ってないし……」
「じゃあ、ちょうどそこにこの島の武器屋があるから、見てみよう」
「あ、お金持ってないよ。あなたが不良から取り返してくれた銅貨10枚しか……」
「まあ、いいさね、行こう」と威勢よくエレオノーラはリオナの手を引っ張ってこの島で一番大きな武器屋に入店した。
エレオノーラとリオナはガラスのショーウインドウの中にある武器や防具を見た。
「魔法のついてるのがいいんだよね。たしか」とリオナが言う。
若い男の店員が出て来た
「この店の武器防具はすべて何かの魔法の効果がついております。当店はこの近海では一番の高級武器店でございます。何かお望みの魔法の効果は御座いますか?」
「攻撃力と身を交しと防御力が高い武器と防具の女性用はどれ?」
「こちらの売り場で御座います。これは全部女性冒険者様用の魔法の武器防具で御座いますよ。当店自慢の品揃えで御座います」
エレオノーラとリオナは値段を見てびっくりした。どれもこれも金貨10枚以上の値段だった。本当に強そうな武器は金貨500枚以上する……
リオナは値段を見て、気絶した。
リオナが気が付くと、エレオノーラが往来の木陰でリオナの顔を見守っていた。
「仕方ない。船に帰ろう。あたしも実は、武器屋へ入って売ってる武器の値段を見たのは初めてなのさ」とエレオノーラは頭をかく。
「私の船長室の宝箱に、ばあちゃんの倉庫からいっぱい、魔法の武器と防具を持って来たから、好きな武器と防具選びな」とエレオノーラ。
「えええええええ?!」とリオナは眼を白黒させた。
エレオノーラは、みんなから「船の整理整頓と掃除と洗濯は船長の責任だからっ!」と船の片づけを押しつけられていた。
リオナを埠頭に停泊中の魔道帆船に連れて帰ると「なんてすごい船なの?!」とリオナは息を呑む
しかし、船の中は、女の子八人が全員が片づけしないので、汚部屋状態だった。
几帳面なハルナも女の子全員の雰囲気で、少し自堕落になっていた。
その様子を見て、リオナは「くすっ♪」と笑うと、すぐテキパキと片付けた。
船内は瞬く間にきちんと片付いた。そして、リオナは、溜まった全員の洗濯物も、きれいに洗濯して、それを干すために船の中にロープを張ると、清々しく、船は洗濯物で満艦飾となった。
「ありがとう、助かったわ」とエオノーラ。
「いえいえ、私も働き口が見つかって嬉しいわ」とリオナ。
船内と洗濯物が片付いたところで、エレオノーラはリオナと、船長室にある宝箱の中から、リオナに会う武器と防具を選んだーーリオナはエレオノーラの箱の中を見てそこにある武器防具が「これ、あの武器屋で金貨千枚以上の品物じゃないの?」と腰を抜かした。
「この魔法装備を造った人は誰?」
「マダム・ブラスターだよ」
「げっ!」
それを聞いて、眼が点になったリオナは、エレオノーラと出会った自分の幸運に気が付いた。
宝箱の中にはあらゆる武器があったが、リオナは「これがなんかしっくりくる」と鞭を選んだ。
リオナはなんでも凍らせるという氷の鞭と速足の靴と身交わしの帽子をエレオノーラから……ポンと……貰った。「私、か、借りる、ということにしとくから……」とリオナ。あとデリラの捨てた服の中にーーみんなを素早く動けるようにする踊りを踊れるーーという魔法の特技のついた可愛い上着があった。リオナはそれを着ることにした。嬉しそうに「なんでデリラさん、この服捨てるって?!」「デザインがダサイとか言ってたな、デリラ」とエレオノーラ。
あと、王女のデリラから「これ捨てといて」とエレオノーラが渡された、飽きた古着を突っ込んだ袋をまだ捨てずに船長室に置いていたが……デリラの服は魔法付きの最高レベルのお洒落着であるが、自分の着た物をデリラは、他人に着られるのは嫌なので、古着屋に売る気はない。
しかしリオナが「これ、欲しい服、もらってもいい?」と聞くので、エレオノーラはリオナに全部あげた。
リオナの寝場所はエレオノーラの部屋の隅っこの簡易ベッドにもなる長椅子に、リオナ本人が決めた。
貧しくて、自分の食べる物も着る服も生きるギリギリであったリオナはいきなり
高度な魔法の武器と防具を手に入れて、唐突に始めたばかりの新米冒険者を、エレオノーラから強引に、高レベル見切り発車させられた。
三つ編み海賊団に、九人目の仲間、洗濯屋の娘リオナ15歳が仲間になった。




