第49話
ドワーフの島エルゲドス島へ向かう魔動帆船
料理人の人狼メーアの作った美味しいお昼。
きょうは、あっさり天津飯とフルーツサラダ。舌鼓を打って食べていると、船が突然、大きく揺れた。
「なんだろう?」「何かしら?」
魔動船運転士のアイオラか操舵手のデリラのどちらかは食事時でも持ち場をはずせない。
アイオラから
「あの~ぉ船の前方になにか巨大な生物が出現です~ぅ!」
みんな走り出る。食事時も油断がならないのか
なんと、海の中の浅瀬の岩礁に人魚のトリトン族の男の子が鎖に縛り付けられて、その子供を食べようとしたモサザウルスとメガロドンが獲物の取り合いで戦っていた。
「げっ!」
「あんなでかい怪物の戦いなんて手が出しようがないですわ。遠回りしてスルーして通過ですわっ!」と航海士のデリラが言う。
それより早く、エレオノーラが、「アチキ、足場たのむわ」と叫ぶと、空中に飛び出した。
「はいだわさっ!」と小さな氷姫のアチキは叫ぶと大きな氷の塊を何個もエレオノーラの前方の空中に浮かばせた。
自分も首のペンダントに触れて、白鳥を出すと、その白鳥に乗ってエレオノーラの後を追う。
「まさかーーモサザウルスとメガロドン敵に回して戦う気?! あの船長はーー」
エレオノーラは大きな氷の塊を足場に、ドウルガの魔剣をスラリと抜くと、大きくジャンプした。
そして下で口を開けて待つモサザウルスとメガロドンめがけて、ドウルガの剣を大きく後ろに勢いをつけると、重心を変えて、その上顎モサザウルスの鼻先にザクッ!切り込んだ。
姿勢を変えてメガロドンの脳天にザクッ!と大剣を切り込んだ
二匹とも、大きさが40メートルはある怪物である。
二匹が怒り狂ってのたうち回る。
モサザウルスが横へ避けようとデリラが大きく舵を切った逃げようとする魔動帆船に襲い掛かって来た。
「他の人のことも考えない、ひどい船長ね」と舵を握り眼の前の大口あけて襲い掛かる怪物に真っ青なデリラ。
「あの~あたしが運転するのでデリラさんもぉ、みなさんも戦ってくださ~いぃ!」とアイオラが座席から叫ぶ。
はるか前方の海の上で、エレオノーラがアチキと海の上でメガロドンと戦っている。
アチキが海面を凍らせて、そこを足場にエレオノーラはドウルガの剣でザクザク巨大サメを切りまくる。
巨大サメはその大きな口でエレオノーラを一口に食おう!とするが、なにぶん、動きが鈍い。
魔動帆船の方では、「きゃーーっ!! ひぃーーっ!!」
他の女の子たちはエレオノーラの様に戦いなれていない。
フレデリカが戦いを煽る踊りを踊った。
全員の攻撃力と魔力があがった。
デリラが呪文の詠唱を始めた。
ハルナが全員の神聖防御力を上げる呪文を唱えたーーしかしこの場合あまり意味がない
ジレッタが左手を挙げると「大弓!」と叫んだ
ジレッタの左指のガラスの指輪が光り左手に大きなガラスの弓が現れた。
その弓を持って、「光の矢により! 皮の手袋よ、怪物の素早さを盗め!」と叫んだ。
ジレッタが光の矢を撃つごと、モサザウルスは動きが遅くなっていった。
デリラは「業火!」と最強の炎呪文をぶつけた。
メーアは大きく自分の爪を研ぐと、両手両足の爪が金色に輝き、その4つの爪でモサザウルスを激しく切り裂いた。
40メートルあるモサザウルスは、身体の半分が巨大な口だった。
その口で魔動帆船の胴体に噛みつき、船を噛み砕こうとする。
ジレッタの弓のおかげで素早いモサザウルスもだいぶ、動きがのろくなっている。
ハルナは白銀の盾で防御しながら白銀のレイピアでモサザウルスの歯1本と戦っている。
アイオラは座席で操作し魔動帆船の砲門を開く。モサザウルスが右側にいるのに、左側の魔動大砲5門を発射!!
弾は何もない海の上で爆発。「あららぁーーまちがえたわぁーー!!」
今度は右側の砲門を開き、間違いなく発射!!
「どどーーーん!!」「どどーーん!!」「どどーーん!!」「どどーーん!!」
全弾命中!!
モサザウルスを倒した。
エレオノーラもドウルガの魔剣で、メガロドンの心臓にめがけて大きな一撃を食らわせて、メガロドンにとどめを刺した。
そのまま、アチキに海面を凍らせて人魚の少年が鎖で繋がれている岩場まで行くと、ドウルガの魔剣でガキーン!と一撃食らわせて、鎖を断ち切った。
人魚の少年は衰弱している様子だった。
ハルナが駆け付けて、人魚の少年に、「ヒーリング!」を唱えた。
人魚の少年は少し元気になった。
「〇△◎♪△〇」と何か言っているが、言葉が分からない。
エレオノーラが少年を背中に背負って船まで連れて行った。
上半身は普通の少年だが下半身はイルカのような肌だった。
「何か、美味しいもの食べたら元気がでるんじゃない」「人魚って、何を食べるのかなガウ?」
メーアは海藻スープと焼き魚を出してみた。
人魚の少年は匂いを嗅いで、直ぐに食べだした。
アンチョビを塗ったサンドイッチを出すと、それも美味しそうに食べた。
「〇△◎♪」何か言ったが、言葉が分からない。
人魚の少年は、お腹がいっぱいになった様子で、器用に、イルカの様なひれ足で、ヒョイヒョイと歩くと、甲板に出て、みんなに笑顔で何か言い、頭を下げると、そのまま海に飛び込んで姿を消した。
「ああ、良い事したー」とエレオノーラが上機嫌で言ったが、全員から「何考えてんの。あんたはっ!」と怒られた。