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学園一の美少女が失恋したいと泣きついてくるので困っています……  作者: 田奈から来た使者
美少女が失恋したいと泣きついてくるので困っています……
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美少女と作戦会議

 放課後、俺と澄花は約束通り駅で待ち合わせをして近くの喫茶店に入った。


 結局、俺は彼女の熱意に押され弟子入りさせることにした。

 

 俺は鞄からクリアファイルを取り出す。


「これ、なんですか?」


 クリアファイルから出した写真をテーブルの上に並べると澄花は何やら不思議そうに首をかしげた。


「おい、弟子よ」


「なんですか、師匠」


「失恋がどういうものか答えて見ろ」


「えぇ……それはなんというかその……好きな人にフラれることだと思いますが」


「その通りだ。流石はわが弟子だ」


 俺が頭を撫でてやると澄花は少し照れたように顔を赤くした。


「でも、それがどうかしたんですか?」

「とても重要な事だ」


 そう根本的な問題だ。


「お前、今、好きな人はいるのか?」

「え? いないですけど」

「たわけっ!!」


 俺がそう言って怒ると澄花は「ひゃっ!!」と驚いた声を上げる。


「好きな人がいないやつに失恋なんてできるわけがないだろっ!!」


 そう。失恋をするためにはまず好きな人を作らなければならない。

 好きな人がいなければ失恋なんて当然できるはずがない。


「が、そう返ってくると思ったから、ここにその候補をいくつか用意した」


 というわけで俺は昨日の夜に俺たちの高校に通う生徒の中でも女子からの人気の高い生徒を数人ピックアップしてきたのだ。


「これ、全部師匠が撮ったんですか?」


「SNSで検索したんだよ」


「なんかやり方が陰湿ですね」


「うるせえ。お前のためにやってんだから、むしろありがたく思いやがれ」


 そう言うと澄花は「ごめんなさい」と素直に謝って写真を眺めた。


 我ながら素晴らしい人選だと思う。さわやか系、オラオラ系、文化系、さらにはガチムチ系にいたるまであらゆるタイプのイケメンを揃えた。


 これだけいれば一人ぐらい澄花が気に入りそうな男は見つかるはずだ。


「ほら、早く好きなのを選べ」


 が、澄花はう~んと唸り声をあげる。


「いないのか?」


「急に好きな人を作れって言われても難しいです……」


「それに……」


 と、そこで澄花は俺の顔を見た。


「私、この人たち全員から告白されたので失恋するのは難しいと思います……」


「はあっ!?」


 思わず声を上げてしまう。


「全員って、ここにいる奴ら全員か?」


 澄花はこくりと答えた。


「全員お断りしてしまいましたし、今更会話をするのもなんだか気まずいです……」


 澄花から返ってきた答えは俺の想像を遥かに凌駕したものだった。


 どうやら彼女の失恋できない力を俺は侮っていたようだ……。


 そんな彼女なら、俺がフラれるのを見て憧れを抱くのも無理はないのかもしれない。


「じゃあ、どうするんだよ……」


 となると俺としてはもう打つ手がない。何せ、彼女に好きな人を作ってもらわなければ彼女を失恋させることなど夢のまた夢なのだから。


 俺は頭を抱える。

 そんな俺を澄花は「師匠……」と心配そうに眺めていた。


 そして、俺を見つめたままつぶやく。


「好きになる努力をしてみようと思います」


「そうだな。頼むよ。で、誰にするんだ」


 俺はテーブルの上に写真を澄花の方へと押しやる。


 すると、澄花はそれらの写真を丁寧に手に取って一つに束ねると何故か俺の方へと差し出した。


「なんだよ」


「この中にはいません」


「はあ?」


 と、わけのわからないことを言う澄花に俺は首を傾げる。


 すると、澄花は少しだけ恥ずかしそうに顔を赤らめると小さく口を開いた。


「師匠」


「だから、なんだよ……」


 澄花が急に俺のことを真剣に見つめるので思わずドキッとしてしまった。


 澄花は顔を赤くしたまましばらく俺を見つめていたが、何やら意を決したように口を開いた。


「私、師匠のことを好きになりたいです……」


「はあっ!?」


 その驚愕すぎる言葉に俺は思わず大声を出してしまった。


 周りの客たちが一斉に俺たちを見るので俺は恥ずかしくなって思わず俯いてしまう。


 が、そんな俺に構うことなく澄花は続ける。


「師匠、私が師匠のことを好きになったら師匠は迷惑ですか?」


 そんな大胆すぎる告白に俺はしばらく返事をすることができなかった……。

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