第十九話 一人でやらされてるもんっ
グラントで一泊した後、闘技大会の受付を済ませた勇者一行。
「もう少しで始まるな!」
ウキウキと瞳を輝かせるミア。
「最初は総当り戦みたいだな」
「三つ巴戦ですか・・・」
受付に貰った資料を読むマッスルさんとベルさん。
どれどれ。
「1~4グループに分かれて、グループ毎に総当り戦か。勝ったチームが、準決勝に進めると・・・」
1グループ3チーム。どんだけしんどいんだよ。
「よし、作戦を立てよう」
路上で円陣を組んでヒソヒソと話し出す勇者一行。
どこか入ろうよ。宿とか、酒場とかさぁ。
「・・・ヒソヒソ」
「ヒソヒソ・・・ヒソ?」
「ヒソヒソヒソヒソ!?」
全く会話に着いていけない。
一人場違いな気がするのは気のせいではないだろう。
「うん、これで行こう!」
何で行くの!? 俺にはさっぱりだよ!
「ふははは! 完璧な作戦だな!」
「えっと・・・いいんですか?」
「うん。あまり時間を掛けても仕方ないからな」
悪い予感しかしない。
「という訳でだ。イズミ、頼んだぞ!」
・・・誰か、通訳を呼んできてくれないかな。
「さぁ始まりました! 第32回グラント闘技大会! 第3グループの戦いです!」
司会者の言葉に沸く観客。
闘技場には、総勢12人の猛者が。
「頼んだぞ! イズミ!」
「ふははは! 少年であれば楽勝であろう!」
「えっと、頑張ってください!」
そして、後ろに下がってやんややんやと応援を始める勇者とその他。
・・・えっ? 俺が戦うの?
「何だ、聞いてなかったのか?」
やれやれと首を振るミア。
「この中で一度に大勢と戦えるのはイズミだけだろう?」
「だから、一人で戦えと?」
「うん」
「何で?」
「一々戦ってたら、時間が掛かるじゃないか。巻いていこう、うん」
さいですか。
「俺が負けたら?」
「そうなったら、私達が戦うからな。心配ないぞ?」
さも当然とばかりな態度のミア。
そろそろ本気で怒ってもいいんじゃないだろうか。
「何だぁ? 相手はヒョロいガキ一人か!?」
「後ろの奴らはビビってんのか!?」
「構う事はねぇ! 最初にあいつらを潰せばあとはタイマン張れる!」
ワラワラと押し寄せてくる8人。
仕方無い。ミアと旅してて、こういう事は今に始まった事じゃないし。
それに何より、そろそろ本気でヤマに帰りたいしな!
「本気で来い・・・っ!」
腰を落とし、居合いの構えへ。
ゴゴゴゴゴ。
その異様な雰囲気を感じ取ったのか、止まる8人。
「ユウキ流剣術、嘘の型・・・」
静まり返る会場内。
静かに時が流れる。
「く、くっ! 構う事はねぇ! 突っ込めぇ!」
冷や汗を流しながら、突進してくる8人。
勢いよく剣を振り上げ、叫び、力を込めながら。
・・・8人は揃って落とし穴に落ちていった。
「は~っはっはっは! バカめ! 俺がまともに戦う訳ないだろう!」
土の魔法で落とし穴を作っておいた俺に隙はない。
ユウキ流剣術? 練習もしてなかったのに使える訳ないじゃない。
「てめぇ! 卑怯だぞ!」
落とし穴の中を見下ろしながら優越感に浸る。
卑怯? だって嘘って言ったじゃん。
「畜生! てめぇも降りて来い!」
降りる訳無かろうて。
「そ~れ、アイシクル! アイシクル!」
氷の塊を落とし穴の中に放り込む。
ぎゃーぎゃーと騒ぐ8人。
え? 寒いって? 注文が多いなぁ。
「は~っはっはっは! ファイアボール! ファイアボール!」
「何という事でしょう! まさかの展開! たったの一人で勝負を決めてしまいました!」
興奮する司会者。
「第3グループ勝者は、チーム・ミアです!」
わーわー!
「ふははは! 勝ったぞ!」
ええい黙れ筋肉。お前は特に何もしてない。
「凄いです! 流石は大魔導師さんです!」
瞳をキラキラさせるベルさん。
「よし。次は準決勝だな。イズミは休んでてくれ」
嬉しそうに笑いながら言ってくるミア。
まさか勇者の口から休めの言葉が出るなんて。
多分、明日には魔王の世界侵略が始まるな。
・・・その後。ミア達は難なく準決勝を突破したそうな。
別にさっきも俺が戦わなくたって良かったじゃん。
勇者、準決勝で思いっきり範囲魔法使ってたよ。いつ覚えたし。
ずっとテイルズオブエクシリアをやっていたので、投稿が遅くなりました。申し訳ありません。
それにしても、やっぱりテイルズは面白いですね。
医学生強いよ医学生。
あと、リアルでティポが欲しいと思ってしまった私は末期。