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世界観および作品舞台の設定過程3

この世界における「大航海時代」の到来は、大きく2つの要因に端を発する。

1つは国際情勢の変容、もう1つは技術体系の革新である。


まず、国際情勢の側面から記述する。

内側世界の歴史は、ここ800年余りにわたり、ドゥアピーズ帝国を軸とする抗争と和平の反復によって形成されてきた。

ドゥアピーズは、内側世界における繁栄の中枢を領土とし、最古にして最大の星系文明としての座を維持し続けている。

対するネトヴィツ、およびタポルラン諸星同盟という2大国は、いずれも内側世界の外縁部に位置する。そのため、ドゥアピーズに比して星間社会全体へ及ぼす影響力は、限定的なものに留まっていた。


しかし、この辺境という立地は、同時に「宇宙の洋」と呼ばれる空白宙域に隣接するという、地理的特性をも意味していた。

ドゥアピーズとの絶え間ない開発競争と領土争いに疲弊した2大国は、飽和した内側世界に見切りをつけ、外の世界――すなわち未踏の宙域に、新たな繁栄の活路を求め始めたのである。


そして第 2の要因たる技術的進展とは、飛空艇における空間跳躍ワープ技術の成熟、

ならびに「宇宙の洋」における宇宙港および小惑星の港湾化が、実用的な航行密度に達した事実を指す。


タポルラン諸星同盟は、外側世界の惑星ヒシモシポラスとかねてより接触を持ち、細々とした交易の歴史を有していた。この実績を礎に、両文明は未曾有の共同事業へと踏み出す。互いの領域から「宇宙の洋」に向けて順次拠点を敷設し、内外世界を結ぶ恒常的な通商路を確立するという計画である。この野心的な試みは 751年に結実し、両文明を繋ぐ大動脈がついに完成を見た。


750年代という時代は、多方面での変革が同時多発的に実を結んだ特異点でもあった。

地理的近接ゆえに長年敵対していたネトヴィツと、外側世界の大国ドガーシュ・ハンレイ(ヒシモシポラスとは別大陸に位置する)が、720年代に締結した歴史的な和平協定。長きにわたる戦火を鎮め、宇宙船の往来目的を「砲撃」から「交易」へと転じさせたこの英断の成果が、インフラの整備と共にようやく可視化され始めた時期と重なったのである。


こうして、ネトヴィツとタポルランという 2大国は、それぞれ異なるアプローチで外側世界への回廊を切り拓き、世界に未体験の価値観と可能性をもたらした。


ここに、「大航海時代」の幕が上がったのである。


【Tips:大気の壁と「天文学的」な気象】


この世界には数多の星間文明が割拠し、航路が複雑に交錯しているにもかかわらず、天文学――とりわけ遠方観測技術に関しては、驚くほど進展が遅れている。この文明的なパラドックスは、宇宙空間に「空気」が充満しているという、この時空特有の物理法則に起因する。


その環境は、地球という一個の惑星が持つ大気圏を、100億光年単位にまで極端に拡張した状態に等しい。天体間の距離が開けば開くほど、その間には必然的に高密度の分子層――すなわち「宇宙規模の大気圏」が厚く立ちはだかることになる。これが光の伝播に対し、レイリー散乱をはじめとする深刻な減衰と撹乱をもたらし、光学的な深宇宙観測を事実上不可能にしているのだ。


さらに、媒質としての空気が存在する以上、そこには必然的に「気象」が生じる。

気圧の劇的な変動、星間規模で吹き荒れる暴風雨、突発的な対流、あるいは星系全体を呑み込むほど濃密な星間雲。この宇宙において気象とは、一惑星の局地現象ではなく、航行や通信を物理的に遮断する天文学的スケールの障壁そのものである。


ゆえに、新たな航路の開拓とは、常に予測不能な嵐の海へ漕ぎ出すことに他ならない。既知の座標はあくまで目安に過ぎず、現場は無数の気象変数に支配されているからだ。

最新の理論ではなく、肌で風を読む経験を積み重ねた船乗りたちこそが、この宇宙における唯一の「未知」の解明者であり続けている。】


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