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情熱の治世と独断の果て ――皇帝リーデ・デ・サバ・ブナチェラ・パウ・エジュテバの軌跡――

【注意】本稿には、物語の核心に触れる重大な内容が含まれております。これは、1人の人間の想像力が作品として結実していく過程そのものを楽しむという創作方針に基づき、あえて核心的な記述を隠さず公開しているためです。このため、『sogno di vorlare』などの作品を通常の物語として楽しまれている方は、閲覧をお控えください。

745年、現ドゥアピーズ皇帝「リーデ・デ・サバ」は先帝「ドゥ・カザルキ」の嫡女として生を受ける。

帝室の慣例に基づき、次代を担う正当な皇位継承者としての地位は早期かつ穏便に確約された。


769年、歴代の皇族が修学する由緒正しき学習機関である瑞明院での一貫教育を修了する。しかしながら在学中の彼女に対する評価は決して芳しいものではなく、当時の恩師からも優秀とは到底言い難い状況であったことが率直に述懐されている。ここで特筆すべきは、本来であればいかなる不手際も美辞麗句によって粉飾され、無難な賛辞のみで構成されるはずの公式の教育録にさえ、粉飾不可能な分野においてはその低評価が明確な事実として刻み込まれている点である。


当時、王配の既定路線として選定されていたのは、帝国と朝貢関係にある惑星コシブの大公家次子、レビト爵カリメだった。

この縁組は先帝ドゥ・カザルキの治世下における外交戦略の枢要な一環だったが、

当の彼女は平民の青年シュピクセリアに対し、身分を越えた切実な恋情を抱いていた。

国家的な政治思惑と個人の情愛が激しく交差した果てに、彼女を待ち受けていたのは、一切の救済を拒絶する過酷な未来だった。

極めて短期間の内に、愛した男と結ばれるはずであった男の両名が、相次いで命を落とすという非業の結末を迎えることとなった。


事案の経緯に関しては、両名が彼女を巡って相争い、共倒れに至ったとする説が流布された。

あるいは、カリメの死を奇貨としてシュピクセリアとの格差婚が成立することを危惧したドゥアピーズの行政機関が、

独断で平民の青年を抹殺したという陰惨な風説も根強く残っている。


しかし、その実相は依然として厚い闇に閉ざされたままである。確実なのは、

不条理な喪失と真実の秘匿が彼女の精神に癒えぬ傷を刻み、その後の生涯に暗い影を落とし続けたという事実のみだ。


彼女自身は後者の謀略説を真実として受容していた形跡がある。愛する者の命が国家の策謀に供されたという疑念は、

王配選定や継承問題といった政治的営為への拒絶を決定的なものとした。

一連の打算に心身を摩耗させた彼女は、自らを皇統維持のための機能的な器と定義し、

保管用卵子の提供という事務的な義務のみを承諾。以降、婚姻および後継者に関する一切の関与を、断固として拒絶するに至った。


775年、皇位を継承。早期の戴冠と、久方ぶりとなる女帝の誕生は各方面に大きな反響を呼んだ。

この急ぎ足の権力継承の背景には、瑞明院時代における彼女の放胆な振る舞いや、継承問題への関与の拒否を

起因として一部でくすぶり始めていた、次期統治者としての資質を問う懐疑論を、

即位という既成事実をもって封殺する先帝の意図が含まれていたと推察されている。


776年、正史の記録には一切記されることのない、きわめて重大な一夜を彼女は迎える。

当初、彼女は先帝ドゥ・カザルキが宿願としたクドゥクシュへの武力進攻――即位を巡る裏取引として、

親子間で交わされた密約があったにもかかわらず――を継承せぬ方針を明示しており、

この非戦の志向は家臣団における共通の了解となっていた。


しかしながら、秘匿機関キツォンによる接触と、それに伴う帝国史の禁忌たる実相の露見が、彼女の資質を根本から変質させた。

かつて「傷物の女帝」と揶揄された1人の女性が、帝国の深淵に触れることで、透徹した合理性を備えた為政者へと覚醒を遂げたのである。


表舞台から隔絶された裏の皇位継承式において、秘録の全貌を聞き遂げた彼女は、万感の憂慮を込めて静かに頷いた。

過去の悲劇さえも統治の具として受容する強固な意志を固め、キツォンの代表者であり従兄でもあるカル・ラーズに対し、峻烈なる宣言を授けた。


「傷物の女帝」という痛ましくも好都合な風評を、国家の存続を謀るための欺瞞として徹底的に活用せよ。

その暗い帳の陰で、国家にとっての最善を先帝の治世よりも粛然と、あるいは至極堂々と遂行しなさい。


自らはそのためにいかなる労も厭わず、帝権の行使を背景とした支援を一切惜しまぬことを確約した。

恭しく平伏するカル・ラーズの姿を凝視し、そう、彼女が紡いだのは、私的な哀傷を排し、国家の守護者として真に立った者の、

苛烈な熱を帯びた言葉の数々だった。たとえ後世において昏君の汚名を着せられようとも、

臣民の母として己のすべてを犠牲に供する。この凄絶な指導者像の確立こそが、帝国の命運を左右する転換点となった。


784年、満を持し、ドゥアピーズはクドゥクシュへの軍事侵攻を開始する。

一事の穏忍な姿勢を翻したこの武力行使は、諸外国および国内勢力を大きく震憾させた。


785年、帝都を遷都。既存の利権構造を破却し、国家の基盤を再定義するこの一連の強硬策は、彼女が演じ続ける「壊れた女帝」という虚像の裏側で、極めて緻密かつ周到に推し進められた帝国存続のための必然だった。


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