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異世界だろうとのんびりと  作者: ダルマ787
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー第三巻ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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第14話 後日談

第一回編集(2022/3/24)

誤字脱字の修正、文章の修正、文章の追加、ふりがなの追加、言い回しなど編集しました。

事の経緯を聞き終えた医務室でアイミは何も言葉を発せないでいた。


タダシが殴られ吹き飛ばされたのには純粋に驚き、心配をしたのはもちろん。

あの、タダシを殴り飛ばしたという事実。

アルフォナインとの実力さに先をみる。


それとは別に勝敗は引き分け(・・・・)だったという結果に、アイミはタダシとの実力差を計れなくなった。


タダシと争う気などない。


タダシが異世界人だという事実は認めている。


それでも、不思議な存在に目指す先が、あやふやになってしまう。


どんな形でもその姿を見てみたかったとアイミは物思いにふける。


タダシが殴られ吹き飛ばされた後、試験はそれだけでは終わらなかった。


もうすでに終わってしまっている後日談――。




―――死。


監視室で観覧している者ですらそれを疑わないほどの一撃に、騒然と誰もが立ち上がっていた。


きっと誰もが思っている。

ガードはもちろん、源素を使う暇がないほどの隙だらけ、レナの推薦というだけでここに来てしまった少年は強くはなかったのだと。


そんな中でもイェールだけが冷静に、短く指示を出す。


「ミツナさん」


その声に一番状況を理解していないミツナだったが、すぐに救護の為に動きだす。


だが、それを止めたのは悲痛な俺の叫びだった。


「いってぇええええええええええええええええええええええええええええええっっ!」


久々な頬の傷みすぐさま回復が施される。

摩る(さする)、とくにかく痛みを誤魔化すために煙が出るんじゃないかと思わんばかりに摩る。


「いたいったいたいたいたいたいっ!」


現実世界だって殴り合いの喧嘩をしたことがない俺は、初めて人に殴られるという経験に涙目必死である。


「手加減っ手加減を所望する!」


恥とかもうどうでもいいっ!


兎にも角にも俺とは世界が違いすぎる!


「勝負方法っ! 別途提案を要求したいっ!」


もう必死っ! とにかくこの方法では体が持たないっ、心なんかすでに折れています!


そんな必死な俺の必死な要求に、なぜか返答がすぐに返ってこない。

それどころか、心配して駆け寄ってくる人すらいない。

なんて薄情な人たちなんだ。


アイミが暴走寸前でアルフォナイン君を襲った時は必死で助けようとしていたのに、俺の時だけ見殺しにするなんて、あんまりじゃないか!


俺悪いこと何にもしていないのに、どうして俺がこんな目に合わなくちゃいけないんだ!


ふつふつと湧き上がる怒りに、さっきまでいた観覧室を睨みつける。


それをどう捉えたのか、


「ぞ、続行します!」


「ホワッッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーツ!!」


さらなるいじめが発生した。


「違うでしょっ! どう考えたって中止でしょうがぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


人生でこれだけ発狂したのは初めてかもしれない。


それだけ必死だったんだ。


期待を込めつつ俺は恐る恐る、対戦相手であるアルフォナイン君をちらりと覗く。


「お前、何した?」


思いっ切り君に殴られたよ!


「源素で守ってわけでもない、なのになんで起き上がれる。それどころか、回復だと……」


なぜか俺を上回る怒りの感情を源素に乗せている模様。


「いや、違うじゃない……、殴られたの俺だから……、」


俺の頬はひきつきを起こしながら、説得を心みる。


俺の声はどこえやら、


「こい、シル」


悲痛な呼びかけを無視し、アルフォナイン君の呼ぶ声に風が集中し精霊が姿を現した。


蝶のような羽に緑がかった長い髪がさらりと伸びる。

どこか気品が溢れ、髪をかきあげる姿は人間臭い。


現れるや小さい姿の風の精霊はアルフォナインの肩に腰かける。


『さっきも呼べばよかったじゃない?』


「だからだよっ、もう油断なんかしねぇっ!」


俺は、これはダメだと後ずさりながら、色々なことを考えていた。


とりあえず、アイミはもう心配ないだろう。

自分の道を探し、見つけ出した。

これからは暴走という力を理解しながら、新しい出会いや経験で成長し普通の生活を送れる。


レナ、推薦してもらった身で申し訳ないが、こればっかりは身の丈というものが存在しているし、人には向き不向きがある。

残念ながら俺にはセントクロスは向いてなった。


冒険者のジオラル、カルバン、テトラ、きっと俺の住む山を探してくれているだろうけど、自分で探す羽目になりそうです。


「本当にすいませんでした」


逃げます!


謝罪を口にしてからは、余計な事は考えなくなっていた。


相手を待つ必要も準備の必要もない。


身体能力をレベル2にまで一気に上げる。


まずは、出口を探す。

入ってきた扉は閉められているが、こじ開けてそこから外に出よう。


目視でその扉を見つけた途端だった。


「なるほどなっ、お前も身体強化できるってわけだっ!」


はい?


「こっからが本番だ!」


何を勘違いしてんだぁああああああああああ!


「ちがっ、これは逃げ――」


「行くぞシルっ!」


無限風獄(ストーム)』」


強大な竜巻が訓練場に発生した。


「馬鹿じゃぁあああああああああああああああんっ!」


すぐさま俺は出口へと走り出す!


瞬く間に扉の前に到達し、扉に手を掛けようとして思考が停止した。


取っ手がない。


世界が急に発展したように感じた。


「どうやってあけるのぉっ!」


ボタン、自動ドア、魔道具、色々な案が脳裏を駆け巡るが、正解には導かれない。


「開いてぇえええええええ」


浮遊石が必要なのっ!


ドンドンと扉を両手で破壊する勢いで叩いてみるが、開く気配がない。


「『千の風刃(サウザンドウインド)』」


そうこうしているうちにさらなる攻撃が襲ってくる。


「いぃいいや、ムリィイいいいいいいいいいいいいっ!」


すぐさまその場から離れる。

俺の足跡だけを残した空間が、無数の風の刃によって切り刻まれた。


そして気付く。


竜巻がさらに暴風域と速度を増し、追尾してきている。


「ばばばばばばばばっ」


言葉にならない。


「『真空列波(バキュラ)』」


辺りの空気がなくなった。


呼吸ができない事に、俺は焦ることしかできない。


どっちに逃げれば空気がある?


思考は空気、空気、空気の一色に染まる。


普通に考えれば前方に竜巻、その左右に逃げることができる。


「(罠じゃん!)」


だとしたら、その逃げ道はすでに何かを仕掛けられている可能性がある。


身体能力向上をレベル3まで引き上げる?


「(早いだけで意味があるのかっ⁉)」


そう考えた途端、俺は賭けに出る他なかった。


残された俺の能力、種の急速成長&強化だ!


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