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異世界だろうとのんびりと  作者: ダルマ787
ーーーーーーーーーーーーーーーーー 第二巻 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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第26話 能力の工夫

むかーし、むかし、あれは俺が小学六年生の頃の事だ。

友人数名と駄菓子屋で待ち合わせをし、自転車を漕いで約束の時間に辿り着いた。

そこにすでに友人たちが集まっており、その姿を俺が見つけると友人たちは慌てて逃げ出していった。


最初は何が起きているのかわからなかった。


でも、すぐに気が付いた。


これは友人たちがふざけて俺から逃げているのだと。

でもやられた方は傷つく。

まだおれの性格が必死に追いかけ、ふざけんなよ、の一言を言えればよかった。


でも、その時の俺は追いかけるのを止め、そのまま岐路に着いた。

まだ幼いながらのプライドがそうさせたのだろう。


今思い返せば些細な事だ。


次の日には普通に友人たちと会話をし、前の日の事を誰も蒸し返したりはしない。

きっと本人たちも悪いと思ったのだろう。

それでも些細な溝は確かにできてしまった。


そんなことを、


「思い出したわぁあああああああああああああっっ!」


カマソンという生物から逃げる事十数分、ようやくそんな時間が終わりを告げた。


「君はそんなに追われるのが好きなのかしら?」


氷漬けにされたカマソン数体が草原のあちこちに転がる。


「どちらかといえば、逃げられる立場でした……」


暗い過去もなんのその、現在の自分の身長を超えた謎の生物は恐怖でしかない。

それを上回る過去のトラウマ。

ありがとう、来てくれて、ありがとう、鬼。


「つくづく意味が解らないわ、どうしてあの子たちは君に惹かれているのか?」

「え⁉ 俺、引かれてるの?」


そして、なぜかさらに傷つく言葉を浴びせられた。

でも、俺には言い訳がある、だって異世界人だもん。


「まぁ、ありがとう。ガチで助かりました。そんなわけで、逃げます」


鬼ごっこ開始からようやく試合らしい展開に俺はお礼を残して勝負ために駆け出した。


「一つだけ、この数日我慢していたことがあるわ」


後ろの方で何か言っているが、広い草原の端から中心まで駆け出した俺にはその声を聴く事は出来ない。

それも能力を上げればできなくはないが、そもそも鬼であるアンが声を張り上げることもしてないのだから、聞いて欲しいというわけでもないのだろうと解釈している。


俺は氷漬けのカマソンの間を縫うように、まだ無事な背丈よりも成長した草むらへと姿事に成功。

あとは、草原を抜け森の中に入れば本格な鬼ごっこの始まりだ。


「それはね、君がどんな存在なのかってこと?」


草原を抜けるまであとわずかというタイミングで、アンの指がパチンっと音をたてる。


その瞬間、俺の体はカマソンと同じ運命を辿った。


詐欺師(異世界人)、君の言葉を解釈すればそう捉える事もできる古語。冗談で使われることがあっても、あの場面で使うにはあまりにいい加減に受け取ることもできる。でもね、問題なのはそこではないの。一番の問題はレナが疑わなかった事よ!」


氷塊にヒビが入る。


この世界に来てから文字通り固まることが多くなった。


だが、氷漬けは石化よりはまだ軽い。


強いて言うなら、


「さっむっ!」


ただ、それだけだった。


「っ⁉」


問題は氷漬けにさせられ動きを止められたことより、アンという少女の発言。


「俺が知るかいっ!」


そこの方が重要だった。


「この短期間で驚くことが多いわね」


その眼光は驚きよりも、次に向いている。


「想定済みなようで何より」


表情一つで俺は見極める。


「私がルールを守れるかどうかはあなた次第よ」


俺の身体能力はレベル2に移行するには十分だった。


「ルールは自分で守れ!」


俺の言葉を合図に無数の氷の蝶が舞う。


「うひっ」


弾丸よろしく、逃げる先に蝶が追いかけてきた。


「俺が知ってる鬼ごっこじゃねぇえええええええええええええええええ!」


逃げる事はできる。

ただ、氷の蝶の出現する場所は、後ろだけとは限らない。

逃げた先、逃げるべき方向、タイミング問わず次々出現する。


避けきるのは不可能だ。


触れるたび、触れた個所が凍りつく。


そのたび、力づくで破壊していくが、このままでは速度を保てない。

それにルールを完全に破ってはおらず、俺は怪我の一つ追わない。


「まだ手加減中なのねっ」


ゲームのボスでいう、パターン一であり、変化することを前提としていた。


「しょうがない」


俺はアンとの距離を一定取ると一旦足を止めた。


「降参してくれる?」


憎たらしいほど綺麗なお顔だこと。


「思いつく限り出し尽くしたらな」


身体能力向上部分強化――脚。


これは、アイミの気配を視覚ができるようにした時の脚バージョンだ。

全体よりも体の一部分に特化した向上。


「逃げ特化だ」


再び走り出した瞬間、逃げた経路の蝶がはじけていく。


「速いっ」


あっという間にアンの視界から外れ、蝶の出現も追いついていない。


「ぐっ」


ただ、それでいて距離をさらに離したところで俺は立ち止まる。

鬼であるアンから逃げる事は可能であったが、氷の蝶を避けられるわけではない。

触れてしまった体は凍りつき、その度に俺は破壊しなければならない。


「本当に優秀なのね」


いつまでも呟かれる上から目線。


「あなたはどれだけ持つかしら?」


辺りに霧が立ち込める。


ふいに俺の後ろに人影が現れる。


「うっそっ!」


いつの間にか後ろに移動したのか、アンがすぐそこにいる。


俺はすぐさま全力でその場を離れる。


が、


「こっちでいいの?」


逃げた先にもアンがいる。


「うぎっ!」


その度に、蛇行を繰り返すが、どう考えてもおかしい。

ただ、俺はこの技に検討を付けることができる。


「分身なのね!」


ただ、分かったところで対応のしようがない。

本物か偽物が分かったところで、できることがない。

俺ができるのはあくまで逃げること。

あまりに相性が悪すぎる。


「チェックメイト」


偽物のアンが突進し、俺の体を抱きしめる。


その瞬間、再び俺は凍りついた。


すぐに、それを中から破壊しにかかるが、今度は簡単にはいかなくなった。

氷の世界から見える外では、偽物のアンが次々へと氷漬けの俺に覆いかぶさると、氷の層を厚くしていく。


「その程度なのね」


遠い場所からそんな声が届くのを最後に、俺の新しい能力は敗北を喫した。


本日、17時頃次話UP予定。


UP更新頻度に関して、活動報告に記載します。

今日のある方は閲覧してください。


ではでは、引き続きよろしくお願いいたします!


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