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異世界だろうとのんびりと  作者: ダルマ787
ーーーーーーーーーーーーーーーーー 第二巻 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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第25話 完膚なきまでの敗北

「【溶岩人(マグママン)】」


【仙種】の力によって精霊の力を限界まであげた新技を駆使し、ジオラルとカルバンはそれでも苦戦を強いられる。


カルバンによって作り上げられた土石のドームにレナを閉じ込める事に成功したまではいい。

その光が届かない中で、ジオラルの姿だけが発光し格好の的になっている。

それでも、未だ決着が着いていない理由は一つ。


手加減の何物でもない。


現状、レナはルールを推し量るために、どの程度までジオラルに攻撃を当てるかを考えている。

出会いがしらでもそうだった。

攻撃のほとんどは打撃に限定され、狙われるのは強打による気絶。


そして、ここにもタダシとの認識の違いがある。


冒険者である以上、怪我の水準は低いもので骨折以上、打撲は怪我の内に入らない。

すでに数発の打撃がジオラルにクリーンヒットしている。それでも、耐えるしか方法がない。


そもそも、レナを閉じこめたのには、レナの精霊の力を抑えるためにあった。

しかし、レナ自身の素養の高さが、強制的に強くなった二人をはるかに上回る。


これが、クラナディア相手なら違っていただろう。


それほどジャンオル・レナンは格が違った。


「耐えてくれ、ジオラル」


ドームの中に届かない声援を零しながら、それでもカルバンはできる限りを尽くす。

捕獲の為に広げたドームを徐々に小さく、そして重厚に強化し続ける。


そうすることで、いずれ限界はくる。


ドームの中は、高温の蒸し風呂状態なのだ。


「へへ」


炎の精霊によって守られているジオラルはその高温を肌で感じることはない。

むしろ、その熱源そのものになっている。

だから、ジオラルが倒れるとしたら、むりくり跳ねあげている源素が尽きた時。

最初から真っ向からぶつかり合う気などない。


これは、最強の一角に向けた我慢比べなのだ。


ところが、ジオラルは目の当たりにしてしまった。


ぼんやりと淡い光が近づいてくる。


平然と何食わぬ表情で、汗一つ掻かず、源素の壁で体を覆う姿を。


「どこまで……」


ジオラルの新技が霧散する。


その源素の急激な消失に外にいたカルバンは何が起きたのかわからず、外から何度もジオラルを呼ぶ。


ドームに変化はない。

破壊やそれに類似した行為がなされればカルバンは気が付くことができる。

それなのに、とてつもない恐怖がカルバンを襲った。


全てを擲って(なぐうって)でもドームを維持強化しなければならない。


カルバンは急激なドームの強化に全力を注いだ。


ドームが急激に厚みを帯びていく。

並みの人間では破壊できないほどのドームが完成に近づく。

カルバンの源素が無駄に溢れ、強化した源素が瞬く間になくなっていく。


それなのに、


「君たちはまだ若い」


そうたった一言の言葉と共に、ドームは内部から破壊された。


まだ知らぬ技術、まだ知らぬ力、まだ知らぬ存在。


それらを体現するかのように、ジャンオル・レナンはそこにいた。


「ここまでなのか」


そして、まるで終わりを告げるように、山のどこかでタダシの気配が溢れ出た。


何が起きたのかはわからない、源素を使わない限りは決して気配を察知することができないはずのタダシの存在がタイミング悪く現れる。


考えられるのは、もう一人の鬼がタダシに接触した。


「それじゃあ、行くね」


優しくも厳しい言葉を残し、レナはその場から立ち去って行った。


カルバンとジオラルはその場に倒れた。


【仙種】の反動。


「なにもできなかった」

「あの最強を足止めできただけ上出来か」


短い沈黙の後、


「そんなタマじゃないだろ」

「へへ、くそったれ! 俺たち(・・)はまだ強くなるぞ!」


小さい悩みなどとうに忘れた。


本物の才を目の当たりにして、優秀、天才だけでは足りない。


「ああ、僕も高みを目指したくなったよ、三人で」


「あいつには悪いが」

「相手が悪かった」


時間にして五分程度、もう手立てがない。


「あとはアイミさんの実践訓練少しでもうまくいけばいいけど」

「ははは、相手が相手だからね、そこまで持ち込めるか」


圧倒的に力の前に、ジオラルとカルバンはすがすがしいまでの敗北を喫した。





「うぅおおおおおおおおおおおおおお、草原が丸禿にされるっうううううううううううううううううううううう」


その頃タダシは身体能力を向上させてCランク討伐対象、カマソンから全力で逃げていた。


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