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異世界だろうとのんびりと  作者: ダルマ787
ーーーーーーーーーーーーーーーーー 第二巻 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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第24話 決意漲る嫉妬

この戦いで一番特殊な立ち位置に着いていたテトラは、自身の役割を全うしながら人知れず恐怖を感じていた。


予定通りと言えば予定通りの展開ではあるものの、これほどにも早くアン・クラナディアが戦線を離脱して治療に時間を奪われていることまでは計画にない。


そして、その治療に当たり一切の手抜きをしなくとも時間が掛かることに、頂点に近い者と自分たちの距離を改めて知る。


別に頂点を目標に掲げていたわけではない。

ルーキーとしては自分たちも自慢ではないが高い位置にいる。

それにしても、これほどにも力の差が存在していることに世界の広さからため息が漏れた。


「あら、退屈からしら?」

「あ、いえ、そう意味ではっ」


ふいに掛けられた言葉に慌てて否定し、飲み込んでいたはずの言葉を漏らす。


「あの人はここまで強かったんですね……。あ、知ってはいたはずなんです! でもここまでなんて……」


目の前にいる自分たちでは到底及ばなかった者の背中ですら、遠いのだ。


「あの子を目標にするなら、やめておきなさい」

「え、」


「あれは、目標なんて追いつける次元の世界の話の存在ではないわ」

「でも、クラナディア様は――」


「ふふ、少しだけ本音を言えば、こうなったことに少しだけ感謝しているのよ。学園にいた頃はあの子に向かっていく事が日常だったのよ。でも私はそれを放棄した。あの子の一番の理解者として傍にいたくてね。でも、未だにわからない。あの子が何を考えて、何を求めているのか」


テトラとジオラルはカルバンが一緒にいる事の意味について考えた。

ただ、結局それはただ一緒にいたい、お互いの足りない部分を補うなんて言葉にできてしまう。


しかし、レナという少女は補う部分はどこにあるのか、そして、一緒にいたいと思う相手の方向をタダシに向けている。


「いっその事、拒絶してくれた方が楽なのにね」


憧れの的である存在の吐露に、テトラは懸ける掛ける言葉が思いつかない。


そんな時、ふいに草むらから音がする。


「あら盗み聞きなんて感心しないわよ」

「しらじらしいです。初めから気付いていたんですよね」


「アイミさんっ⁉」


本来の計画ではそこにいるはずのないアイミの姿にテトラは驚いた。


「ごめんね、テトラちゃん」

「え、え?」


「でも、あなたが負けた瞬間、目指す場所が明確になりました。それに、あなたも私と同じなんですね。私はタダシに救ってもらった。タダシは優しいから、一緒にいてくれる。でも私がタダシの傍にいることは、タダシにとってなんの意味を持たない」


「アイミさん……」


「だから、私は強くなってタダシの傍にいるって決めた!」

「だから、あの子、レナに立ち向かう気?」


タダシ以外なら誰でも理解している。

目の前で治療を受けているアンですら敵わない相手に、アイミが勝てるはずがない。


「まだ敵わないかもしれない。でも、今だけはまだ勝つ可能性はなくなってない」


それはルールという命に即決しない勝負での行方だ。


「それに、私にとってこれは訓練です!」

「え?」

「…………」


それはあまりに常識はずれの発言。


勝負に勝つと言いながら、その中で特訓するという矛盾。


短い静寂の後。


「あ、アイミさん……毒されてる」


それはあまりに無茶苦茶なズレた思考、それに影響されてしまっている結果。


テトラにはその存在がすぐに思いつく。


「ぷ、くく、あはははははははははははっ」


そんな様子に堪えきれないと、今まで妖艶に満ちていた笑みが無邪気な子供の笑顔のようにアンは笑い出した。


「く、クラナディア様?」


涙を指一本でふき取りながら、


「それで、あなたは私の所へきたのね?」


この意味不明な展開にテトラ一人だけがついていけない。


「ど、どういうこと?」


「つまり、アイミちゃんは、一人ではどうしようもないと気が付いた。だから、いっその事私と一緒にあの子を止めようとしている。さらに、その経験すら頂こうってことよね」


アイミはコクンと頷く。


「ちょ、ちょっと待ってください! だって、アイミさんとクラナディア様は逃げる側と鬼側で……え、手を組むって……え?」


この鬼ごっこには一つだけ、大きな無意味が存在している。

それがアイミの立場だった。

元々、それはお互いが納得している分口に出されることはなかったが、報酬の獲得条件はあくまでタダシを先に捕まえた方であり、アイミを先に捕まえるということは意味がない。

ただし、鬼ごっこのルール上、勝敗は二人が捕まった時点で決定する。


つまりはアイミも捕まえなくてはならない標的ではあるものの、優先順位は低く、タダシを捕まえた後と認識されていた。


そして、もうすでに草原での一連から、それは簡単な事として片づけられている。


「あ、そうか、とりあえず、レナン様を治療にまで追い込めれば、最悪タダシは自分から捕まりに来ることができる」


タダシとアイミからすれば、それが一番被害の少ない負け方。


「ただ、あくまでそれができればの話よ。言う必要がないと思うけど、アイミちゃんが私と手を組んだところで、状況的に変化が乏しい。それこそ、アドヴァンテージとしては、レナがアイミちゃんを傷つけられないって程度」


「かすり傷作った程度じゃ、大した時間稼ぎにもならないか……それに、かすり傷でも奇跡に等しい」


「そういうことよ」


すると、アイミは少し怒った口調で言った。


「違う」


何が違うのかと二人が耳を傾ける。


「タダシはきっと、自分から捕まりには来ない」


まっさきに否定されたテトラは、即座に謝る。


「それに奇跡は必要ない」


そう言って手に出したのは、【仙種】だった。


「あ、そうか」


その価値を知らないアンだけが首を傾げる。


「これがあれば、可能性はもっと上がる」


さらにアイミは付け加えた。


「どんな手段を使ってもあの人だけには勝たせない」


あー、と声に出したテトラはアイミの真意を悟った。


「なんなのよ、それ?」

「あはは、一言でいえば嫉妬かな」


固い決意に漲る(みなぎる)アイミの瞳は真っ赤に燃えていた。





一方、合図からなんだかんだで、数分経過した俺は草原のど真ん中でカマソンの大群に囲まれていた。


「討伐したんじゃないのかよぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


それはまた認識の違い。


必要数の討伐は、間違っても全滅ではないということだった。


本日もう一話17時ころ、Up予定


続けてよろしくお願いいたします。

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