第16話 目標
一つの悩みが解消されている頃、アイミは二人の冒険者をこっそりと呼び出し、外へ出ていた。
そしてその第一声に、テトラとジオラルは驚かされた。
「強くなりたい」
「おいおいそれって」
「アイミさん聖騎士団国家に」
アイミは焦ったように首を振る。
「違うのっ、でもあの人に言われたことで思ったことがある」
「それって」
「うん。私はまだ暴走を完全に抑えきれていない。今回はあの人がそうしなかったんだと思う」
「タイミングよくタダシが現れたんじゃなくてか?」
「きっとそれもあると思うけど、でも仮にそうでなかったとしても、私はまた暴走してしまう危険がある。前はタダシにジオラル、テトラちゃんが止めてくれた。でも次がそうなるとは限らない」
さらにアイミは思い出したことを口にする。
「あの時、あの人は『暴走を抑えた者は過去に何人もいたわ。でも、コントロールできた者はほとんどいないのよ』って言ってた」
そこまで言い、ジオラルとテトラは目を合わせる。
「ほとんど……か」
「それなら、クラナディア様がアイミさんを聖騎士団国家に推薦するのも理解できる」
だが、とジオラルは疑問も口にした。
「それなら、どうして暴走者討伐の基本ルールがあるんだ?」
仮にアンの口ぶりからそう言った存在しているのならば、暴走者に適切な対応を取らないのか。
「考えられるのは、実例が少なすぎるから」
「お金がかかるとか?」
「もしくは、実例が特殊すぎて他に例を見ないとかか?」
考えれば考えるほど、その予想は無限に出てくる。
「だが、どうする? 仮にその可能性が聖騎士団国家にあったとしても、見つけられないぞ」
「どうして?」
「あのね、【暴走】に関しての資料は聖騎士団国家の生徒なら誰でも閲覧できるの。詳しい内容自体は覚えてないけど、」
「カルバンなら覚えてる」
「そのカルバンが知らなかったってことは」
「聖騎士団国家にはないってこと?」
「もしくは――」
「禁書かだ」
この引っ越しの旅に冒険者である三人が着いて来た時の、理由を思い出す。
「世間には公表できないナニかがあるかだな」
う~ん、と本来こういう役割のカルバンがいないことに二人は悩み始める。
すると、テトラはアイミの言葉に疑問を持つ。
「どうして、アイミさんは強くなりたいの?」
根本的にアンは聖騎士団国家に入園させようとしただけ、ここまでの話は憶測の域を出ていない。
そうなると、アイミが強くなりたいといったい理由は別にある。
テトラの質問にどんどん顔を赤くなっていく。
「だって、その、」
ジオラルはわけがわからなそうにテトラを見ると、どんどんにやけ顔になる事に気味の悪さを感じ頬をひきつらせた。
「それは誰の為に?」
テトラも年頃の女の子、仲間は男二人で浮ついた話もない。
色恋の話に興味の方向性が変わっていく。
しかし、
「こ、今度は私がみんなを守りたい!」
その対象はたった一人ではなかった。
さらにいえば、アイミの知り合いは限られており、その対象に自分たちも入っている。
むしろ、アンとの戦いの後とくればその対象は紛れもない自分たちだ。
予想外の発表にテトラの心臓がキュンと締め付けられ顔の温度が急上昇する。
「くっ、あまりに可愛すぎる」
乙女な二人を余所に、冒険者としては屈辱的な発言をされたとしか感じ取れなかったジオラルは苦々しい顔を作りながら、
「で?」
冷たくそう言った。
話を戻されたことにテトラは舌打ちをしつつ、話を戻す。
「強くかぁ、私は強くなりたいと思ったわけじゃないしなぁ」
そうなるとジオラルに視線が集まる。
「基本的には訓練だろ」
そんなことは誰でも分かるとテトラは冷めた目で見る。
「うっ、そ、それこそ聖騎士団国家に入った方が早いだろ!」
「そうなんだよねぇ。でも聖騎士団国家って騎士を育成する機関であって、強くなりたい人の機関じゃないんだよねぇ」
「テトラちゃんは騎士になろうと思ったわけじゃないの?」
「ああ、聖騎士団国家っていっても、全員が騎士になるわけじゃないの? たとえば、騎士をサポートする役割だったり、それこそ、治癒専門だったり」
「まぁ、こんな田舎じゃなければ、種族も多いしな。ただ、ゴーゴンってかなり少ない種族だよな」
「聖騎士団国家にもゴーゴン族の出っていないかも。なにより、聖騎士団国家に入れたこと自体が名誉なことって思われてるし、その分冒険者みたいに自由になんでもってわけにもいかなくなるかな」
なんでこの二人は聖騎士団国家に入ったんだろうと素朴な疑問を抱く。
「そうなると冒険者か?」
「タダシが嫌がりそう」
「はは、それは聖騎士団国家も同じかも」
それもそっか、とテトラは納得する。
「結局、実践的な訓練が必要って話だな。冒険者には訓練なんてものはないから、先駆者の真似や、我流で強くなる。その分、常に命がけで未来の保証もない。返って聖騎士団国家は命の危険がないものの、将来が固定される」
ふいにアイミはつい先ほど抱いた疑問を口に出した。
「二人はどうして聖騎士団国家を出たのに冒険者になったの?」
素朴で純粋なアイミの質問に、ジオラルとテトラは見合わせ口を揃えて言った。
「「つまらないから」」
アイミはもう一人の冒険者であるカルバンが気の毒に感じながら、
「実践か……」
そう零していた。




