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異世界だろうとのんびりと  作者: ダルマ787
ーーーーーーーーーーーーーーーーー 第二巻 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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第15話 大人

考え事という名目で、一人になった俺は外に出て離れた場所にやってきた。

農場らしき土地の柵に腰かけ、改めて俺は主人公にはなれないと実感する。

時間をもらったはいいものの、その場限りの言い訳は、大きな悩みを作らされたからだ。


そもそも悩むにしても俺はこの世界の事を知らな過ぎる。

そのためにこの引っ越しを決めたのだが、今度の悩みは俺が持つ常識では考えつくはずがない。

アンという少女がアイミを学園に入れたがる理由はわからなくはない。

もちろん、アイミの置かれている境遇を考えたうえで、現実にも起こり得る闇の部分がないと判断したうえでだ。

それは勘といえなくもないが、少なくともアンという少女からはそれを感じられなかったし、アイミが一瞬でも悩んだのが特に大きい。


問題なのが、俺の方だ。


逃げ回っていた時もそうなのだが、なぜ、レナという少女が俺に興味を持っているのかまったく理解できない。

異世界人というものに惹かれたならまだ理解できた。

しかし、町の中でレナは俺が異世界人だということを考えてはいなかったはずだ。


そうなると余計に分からなくなった。


「子供にしては頭が回っているように思われたか?」


だが、15歳で成人を迎えるこの世界で、俺ぐらい、もしくはそれ以上に切れ者の子供は良そうなものだ。


とまぁ、こんな堂々巡りになるのを見越して、俺は引っ越しの同行者である一人を相談者として呼び出し待っていた。


その人物は思いのほか早くやってくる。


「待たせたかな?」

「いや、いい感じだな」


どこか重い雰囲気の中、相談者にふさわしいカルバンはやってくる。


「様子は?」

「はは、息苦しくはあるかな。あの二人は名も顔を売れているから簡単に外に出られないから、その分ね」


自分たちよりも上の立場の人間がいればだいたいそうなるだろう。

俺も元の世界では上司や派遣先の肩書を持った人の前では緊張したもんだ。


「ただ偶然ここに来ただけではファン程度の騒ぎじゃ収まらない可能性もあるし」

「ん?」


「例えば、何か重大な事件が起きているとかね」

「あ~」


つまり、余計な不安で町中が騒ぎになるとそれ自体が問題になってしまうということだろう。


「なるほどね~」


よその世界の事を他人事程度で流すと、カルバンは面持ち固めに俺の前に立った。


「話を聞く前に、一つ正直に話してほしい」


なんだ、改まってと思うが口には出さない。

それほどカルバンは真剣な様子で茶化してはいけないと感じた。


「ナカムラ……君は、本当は貴族なんじゃないか?」


そして、突拍子もないことではじめられた。


「は?」


だからだろう、俺は茶化すつもりも冗談なしに、疑問が口に出た。


「君は、貴族の立場を捨て生きるためにその歳で、山で暮らしていたんじゃないのか?」

「ちょちょ、ちょっとまて、なんでそうなる?」


異世界人であることを信用するかどうかは託したが、どうとったらそうなるのか全く分からない。


「人族の平民に字はない。だからジオラルやテトラのように僕には字はないんだ」

「そんだけ?」


「それだけって……」


「まぁ、この際だからなんだっていいんだけど……、う~ん、どう説明したものか。一応、説明はするけど、大前提としてこれから話すことは俺の常識、俺の元いた世界、つまりカルバンからしたら異世界の説明になるぞ。つまり、そもそも俺が異世界人っていうことを信用してもらって初めて納得できると思うけど」


カルバンは何も言えない。


それはそうだろうなぁ、と俺は説明をする前に苦しむ。


「じゃあ、いや……」


なんとなくカルバンが言おうとしたことを察する。

貴族じゃないと証明するために、逆に貴族でない証明をさせようにも、全ては異世界人という言葉で説明できてしまう。

その所為で、異世界人だと証明ができないという矛盾。


これはどうしようもない。


そこで、


「だったら、もう頭のおかしい奴でいいよ」

「え?」


「俺からすると立場なんて犯罪者じゃなきゃなんでもいいんだ。異世界人=詐欺師っていうのも理解したから、今後異世界人だと名乗るのも危険だし、」


「でもっ、さっきは」


「確かに詐欺師って名乗ったけど、どうせまた信用されないと思ったし、なにより、信用できない奴らに本当の事名乗るのもなぁっと、だいたい、あの段階であいつら敵みたいなもんだったろ」


あいつらって……、と零したカルバンは、この世界の人間ならば誰もが知っている存在の扱いに驚いた表情を作る。


そして、再び悩んでしまう。


結局それが、俺が貴族でない証明に繋がって余計に混乱したのだろう。


「俺からするとさ、立場って関係ないのよ。仮に、あの山でアイミがどっかの貴族で、なんかの理由で逃げてきたとしても、俺は結局一緒に逃げる事しかしてやれないし。仮に、追っかけてきた側がさ、正しいと感じたら、そっちに引き渡したわけ」


「それでも――」

「あ、そもそも貴族の出でそれを隠したいなら、字名乗らないでしょ。むしろ、貴族に憧れて、勝手に字名乗っている方がピンとこない? まぁ、百歩譲って俺が貴族だったとしよう。だからなによ、俺は踊ったり優雅にお茶は飲めないし、堅苦しい社交場? そんなのに出たら、俺の心臓がもたない……、想像しただけで悪寒が……。結局逃げるな」


そう言って自分の不甲斐なさに笑いがこみあげてくる。


「ナカムラが……タダシが異世界人だと信用できた気がするよ」


それをどう捉えたのかはわからない。

それでもカルバンの表情は悩み苦しみ、考え抜いたそんな表情をした。

きっと聞きたかったことはそれじゃないんだろうなと、俺は確信する。


そして、俺が異世界人だからこそ、ほしい回答の為に最後の質問してきた。


「僕の所為であの二人の命が脅かされる事態になったら、僕はどうしたらいいんだろう……?」


質問の内容が重い。

ただ、この世界では命のやり取りが身近なものにあることはアイミの件で実感している。


だからこそ、俺は簡単に答えた。


「一緒に死んだらいい」


とても無責任な言葉だ。


「だって、そうなっても……違うか。そうならないために一緒にいるんだろ。仮にそうなっても一緒にいたいと思えるから仲間でいられる。そういう感じだろきっと」


悩んだところで正しい正解などでありはしない。

人間生まれて死ぬまで悩み続ける。

それはどこの世界で生まれても変わらない。

悩み考え、それでも生きなきゃいけないというならば、


「俺は考えるのを辞めるためにここにきた」


――ってことにした。


「はは、本当はわかってたんだ。僕も二人と一緒にいたい。それでも、僕の所為で二人の人生をむくちゃくちゃにしたんじゃないかって……」


必死に涙を堪える姿は男の子だなと思うのは、いけないことだろうか。

背負う必要のない責任を一人で抱え、苦しんだ。


だったら、俺が言えることは一つだ。


「え? 俺の新しい人生現在進行形で無茶苦茶にされてるんだが」


そう言った後のカルバンの表情は呆気にとられていた。


そして、


「ぷふっ、あははははははははっ、確かに、あははははははは、ごめんっ」


何かが崩壊したように笑い続ける。


「笑い事じゃねぇぞ! こっちは全財産失ってんだぞ!」


心は大人として、無責任の責任の言葉は送った。


「――はははははっ、ありがとう」

「あ?」


「じゃあ、せめてタダシの住みやすい環境の為に『新しい波』が全力で協力するよ」

「はっ、俺は冒険者に依頼なんか出さねぇっての」


関わりたくない物は関わりたくない。


そう言い残し、


「友達としてさ」


そう小さく呟いたカルバンの声は俺に届かなかった。


次回3/5(明日)午前中、短いかもしれませんが続きUP予定です。

よろしくどうぞ!

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