第17話 喪失
2021/1/23 読み直し(一回目)編集しました。
2021/3/17 誤字脱字、ルビ振り追加、文章追加、台詞の言い回し変更など、編集しました。
そんな店員の変化を知る由もない俺とアイミはホクホクした気持ちで店を後にした。
なんだかんだいって毎日ののんびりした日常にも、開放感は必要で買い物はいい気分転換になる。
すると、
「ん?」
店を出てすぐの事だ。
誰かの視線を感じた気がした。
「気のせいか?」
だが、それを意識的に排除する。
視線など数値化できるものでもないし、俺の経験上、悪い予感も直感も偶然当たることがあっても具体性があるものでもない。
それに、この高揚した気分に水を差すのを嫌だった。
「さて、後は食料買い出しして、帰ろう」
「うん! でも、まだ販売途中じゃないの?」
任せている野菜たちの販売状況を心配したのだろうが、それに関しては問題がない。
そもそも卸した日に金銭の受け渡しは行っていない。
販売し、売上の何パーセントかを露店の店主に渡しているため、その計算上、その日のうちには終わらないのだ。
「それは別日でいいんだけど、台車を回収しないといけないし、そのまま残っている露店で買い出ししていけばいいから」
とりあえず、これで全ての用事が済む。
それから警戒していた冒険者に会うこともなく、平凡な日常がまた終わっていった。
だからこそ、俺は考えもしなかった。
俺の基地ともいえる住処まで尾行されていることも、その後数日間監視下にあることも――。
火柱が木々を超え、苦労して建てた屋根しかない家や、耕して直し成長途中の野菜や果物たち全てを失うことになってしまうなど、想像すらしなかった。




