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異世界だろうとのんびりと  作者: ダルマ787
ーーーーーーーーーーーーーーーーー 第一巻 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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第16話 無知にも優しい店

2021/1/23 読み直し(一回目)編集しました。

2021/3/17 誤字脱字、ルビ振り追加、文章追加、台詞の言い回し変更など、編集しました。

店に入ると場違い感がすごい。

数名の冒険者達が俺たちの姿をみると訝しむ。


確かに俺たちが冒険者には見えないだろう。

事実違うわけだし、俺はとりあえず店内の一角に立ち止まり、全く関係のない武器コーナーで立ち止まる。


「どうしたの?」


薄目で見たのだろう。


「待つ」

「へ?」


その意味が分からない様子で、アイミは俺と同じように武器が置かれたコーナーに向き合う。

しばらくたっても俺がその場から動かないことに、やはりアイミは理解できない。


「店員の人に聞いた方が早いと思うよ」


確かに、時間は掛けていられないし、それは正論だ。

しかしだ、店員に声を掛けるなんて俺には難易度が高い。


その理由を話すとアイミは、首を傾げた。


「さっきは普通に話してたじゃない? それに野菜を卸したときだって」


理解できないのならそれでいい。


「僕は話かけられるのは平気だが、自分からは話しかけられないタイプの人間です」


服屋の店員も代理販売のハゲ頭の髭面店主も、相手側から話しかけてきたに過ぎない。

さらにいえば、ある程度期間を開けずに話をするようになれば、さすがの俺も慣れる。


隣でため息が漏れた。


「私が話すよ」

「まって、それはそれで僕のプライドが」


「面倒でしょ?」

「ぐっ……。あ、ああ」


そのまま今度は俺が手を引かれて店員も前まで連れていかれた。


「すいません、石化に関するアイテムが見たいんですが?」


やる気のなさそうな店員は、俺とアイミを交互にみる。


「またですか……、まぁちょうどいいか」


どうやら他にも石化に関連するアイテムを探していた人がいたようだ。

店員は、影に置いておいたアイテムをカウンターテーブルに並べていく。


「うちにあるのはこれで全部です。説明入ります?」

「あ、お願いします」


アイミがそう答えると、店員は変な事を言う。


「途中で帰ったりしないで下さいよ」


なにか嫌な事でもあったのだろうか、愛想っけもなくアイテムの一つを手に取り説明に入った。


「これは『石化の布』です」

「ふんふん」


会話が始めってしまえば、俺は横からそれらしい反応で混ざる。


「布というよりも包帯みたいだね」

「石化したところに巻いて使うんでしょうね」

「そうです。次は」


なにやら省略されたような気もするが、必要な情報は出たから良しとしておく。


「『石化のペンダント』」


名前からして防ぎそうだ。


「石化を多少防ぐとか」

「……多少」

「……微妙」


ゲームのように何パーセントで防ぐとか期待していたが、そんな単純なものでもないのだろうと納得する。


俺とアイミは次の商品の紹介に店員を見た。


それが意外だったのか、店員は頭をぽりぽりかいていた。


「次が、『石化ころころ』」


BB弾くらいの球がコロコロといくつかテーブルを転がる。


「戦闘用のアイテムで鉱物のように固い皮膚にもダメージを与えます」

「ちょっと違うね」

「戦わないしな」


そんな事を繰り替えしながら、残った数点も紹介された。


「『石化の塩分』、石化したものの塩分濃度を測ります」

「何の意味があるんだろ」

「よくよく考えたら、石化って特殊案件じゃないのだろうか」


「『コカトリスの涙』、飲むと石化します」

「…………ん?」

(みずか)らいくの?」


「『蛇の石化』」

「蛇が石化してる」

「標本だね」


テーブルの商品も残り少なくなった頃、どことなく店員が恥ずかしそうにし始めた。

普通、こんな役に立たなさそうなアイテムを誰も欲しがらない。

仮に買っていくとしたら、新人冒険者がダメ元で期待もせず買っていく。

それを知らない俺とアイミは興味津々できちんと説明も聞いていた。


それが店員を追い詰めていた。


「い、今更ですが、こんな田舎にある商品なので、冒険者が使うような石化関連のアイテムはありませんよ」


それに対して、俺たちは顔を見合わせると、


「はい」

「はい、わかりました」


その返事も予想に反していたのだろうか。

店員はあたりにいる冒険者に助けを求めるように視線を彷徨わせる。

だが、店内の冒険者たちは純粋な眼差しでアイテムを眺める少年と少女に何も言ってやれない。

それどころか、巻き込まれる前にと店外へと非難していく。


「つ、つ次が最後ですっ」


面倒臭そうにしていたのも最初だけで、意外と親切な対応で接してくれる店員に俺とアイミは真剣に聞き入る態勢になる。


「や、やりづらい……」


そう零しながら最後に液体が入った小さな小瓶が取り出された。


「『石化解除の小瓶(小)』です。効果は、石化を徐々に解除、副作用は腹を下します」


最後という安堵と副作用の効果に、まいったかと言わんばかりにやる気がなかった店員は胸を張って見せていた。


「すごい、石化が治る薬だ」

「ふむ、一番それっぽい効果だ」


残念なことに俺とアイミはその店員の態度を自信の商品を出してきたと受け取っていた。


「徐々に解除ってのがリアルだ。しかもきちんと副作用まである」

「ペンビ草も混ぜてあるのかも」

「なにそれ?」


「便秘に効く薬草」

「なるほど」


普段やる気がない分疲労したのだろう、店員はへなへなとイスに持たれかけた。


「どうする?」


アイミが俺に尋ねてきた。


俺はテーブルに並べられた商品を一周見渡す。


はぁ、とため息を吐く店員は、


「さ、もういいですね」


売れないと思ったのか、商品を片づけ始めようとする。


「まって、よし、全部買います」

「はぁいぃっ⁉」


突然の店員の反応に俺とアイミはビクッと驚いて肩をビクつかせる。


「ぜ、全部ほしいんですが、ダメでしたか」


確かに、石化に関してのアイテムは全部だと言っていた。

それを独占するのは良くないのだろうか。

そもそも冒険者が買いにくるようなお店だ。

だとしたら、依頼を受けた冒険者に優先的に売りたいと思うのも心情。

だとしたら、仕方ない。


「そそ、そうですよねっ、全部はまずいですよね」


無知なことに恥ずかしさを覚えて、慌てて否定した。


店員がなぜか遠い方を見ている。


「……イエ、ダイジョウブデス。ゼンブデ二〇〇〇ガイアニナリマス」


「思ったより安いっ!」

「本当だっ」


やる気のなかった店員は、俺たちが店を出る最後まで頭を下げ続けていた。

きっと商品が売れたことがうれしかったのだろう。

店員が今後やる気を出して店を切り盛りしてくれることを祈りつつ俺たちは、店を後にしたのだった。


「……やる気だそうかな、俺」


無知が一人の青年の善意を膨らませる。


「全ての商品説明できるようにしておこう……」


無知にも優しい店が誕生した瞬間だった。


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