9話 伝承 【完】
「ゼェ!ハァ!(やばいやばいやばい!)」
必死で逃げるバスティの視線の先に、砦に押しかける人ごみの脇に佇む、黒髪の少女が見えた!
大きな荷物を足元に置いている。
……あれは間違いない、ルイーナだ。
助けに出迎えてくれたのだろうか。
だが、彼女は魔法出力ができないはずだ。
バスティに見えるように大きく飛び跳ねポニーテールを揺らし、両手を高く振っている。
「助けて〜……」
半泣きで駆け寄るバスティに、荷物を指差し、なにやら合図を送っている。
声が届く距離まで近づくと、両手を肩幅に開き、落ち着きを促すように上下に動かしている。
「よくやったわ!」
「?……砦の中に、早く!」
「もう大丈夫よ!魔物達が帰っていく!」
「(?……なんで??)なに言ってるの!?」
ルイーナの元まで到達し、恐る恐る後ろを振り返る——
「ッハァ、ハァ……ホントだ……」
呆気にとられるバスティの腕に、荷物の肩ひもを掛けながら「これ、持って!」とせがむ。
「ぅん……重っ!」
とりあえず、砦の中でひと息つこう。そう考えた矢先、女神さまのありがたい言葉が続く。
「ちゃんと担いだわね……よし、もうひとっ走り!急ぎましょ!」
「えっ!?……もう魔物達はいないのに?」
真っ当な疑問を投げかけると、既に走り出しているルイーナの背中。
砦の中に入らず、来た道を逆戻りしている。
「早く!早く〜!」
バスティの方へ振り返り、何度も大きく手招きしている。
「……なんで?……どうして〜??」
フラフラと、ようやくバスティが追いつくと、ルイーナからその理由が明かされた。
「このまま船乗り場まで走って島を出るわよ!」
本来の目的である、東半島行き定期船の搭乗は確かに今日だが、乗り遅れるような時間ではない。
避難集団とは逆走する2つの遠影から、卒業試験期間中見習い魔法使いの声が響く。
「バスティが今かっ飛ばしたシャナッコ……あの【大きな元・お姉さん】があとで売り物にするやつでしょーっ!」
【ユマージォ島】編 —— 完 ——
ルイーナの肩下げ鞄の中には、滞在初日に書店で見つけた“目標を内部から破壊する”【ホノクトケ厶】の書籍が密かに忍ばせてあり、指立て伏せ1万回の特訓も思案していたようだ。
以後、この国では“国民の熱狂で威圧する”防衛戦術が定着。
颯爽と現れ名乗らず去った旅人の伝説として、後世に語り継がれるのである——
初創作が完結まで書けてよかったです。
リスペクトオマージュ元作品の数々は、
おわかりいただけましたでしょうか?
お楽しみいただけたら嬉しいです。
みなさま、ありがとうございます!
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