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契約

暖かい…、心地良い…。

けど、額には痛いほど冷たい手が乗せられている感覚がある。


俺は目を開けて視線を額に向ける。


「…あら、起きたの?」


少し低くて色っぽい声のする方を見ると、俺よりは歳上の女性が冷たくて痛気持ちいい手を俺の額に乗せていた。


「あの、俺は熊に…」


「大丈夫、傷は手当したから。2、3日したらまともに歩けるようになるわ。あなた、名前は?」


「…信大 凌太しんだいりょうたです。」


「りょうた…ね。新見 あらみさき。」


新見 咲と名乗った女性は俺に握手を求めてきたので差し出すと、俺の手を引き体を持ち上げその勢いで俺の体を抱きしめた。


凌太「…あの。」


咲「少し…だけ。」


凌太「…はい。」


新見さんは体が冷えているのかこうやって抱きしめられてる間も冷えを感じる。


何分経っただろうか。


俺は抱きしめられてる合間に部屋の様子を目だけでぐるりと見回す。


ここは和室で畳のい草のいい香りがする。

俺が住んでいた古びた埃臭い畳とは全く別物だ。


襖の向こうからは時々、人の足音や声が微かに聞こえる。

けど病院に和室なんかあるのか?

さっきまで眠っていた俺がなぜ病室にいないんだろう。


凌太「…あの、新見さん。」


咲「咲ね。何?」


咲さんは俺を抱きしめたまま話す。


凌太「はい…、咲さん。ここはどこなんですか?」


咲「休憩部屋。」


凌太「ここの施設の話です。」


咲「華宮はなのみやの家よ。」


凌太「はな…?誰ですか?」


咲さんは俺から何故か名残惜しそうに体を離れて姿勢を正した。


咲「ここは慰撫団いぶだんという団体の拠点よ。華宮家当主の弟がこの屋敷を管理してるわ。」


凌太「…あの、イブ団?ってなんですか?」


咲「簡単に言ったら多数の災害を食い止める団体ね。」


は?災害を食い止める?

被災地に出向いて救助活動してるってことじゃないのか?


凌太「災害は食い止めるものじゃなくないですか?」


咲「出来るのよ。あなたもやってみる?」


そんな簡単に出来るもんだったら愛は死んでない。


自衛隊だって消防団だって人手が少なくて救える命を救えないことだってない。


第一自然に抗えるほど人間は強くない。


凌太「変な宗教勧誘は止めてください。俺、無一文なんで取るもんないですよ。」


そう言うと咲さんのにゃんこ口の口角が少し下がり、不機嫌そうにつり上がった目で俺をみる。


咲「私、嘘嫌いなの。自分で言うのも相手からも。」


さっきより半音下がった声で俺に話を続ける。


咲「金には興味ない。私はあなたと次の時代しか興味がない。」


少しつり上がった目が俺の目を刺してくる。


なんだ?この咲さんという人は。


俺と次の時代…?

会ったばかりの俺と災害時代と名称されたこの時代の先を考えているのか?

咲さんの考えている事が全く分からない。


咲「凌太は何もないの?」


軽く首を傾げて俺の脚の間に座り込んだ。


なぜ俺の脚の間に入ってきた?

しかも少しも顔色が変わらない。

何がしたいんだ?


咲「…聞かれた事はしっかり答えなさい。いくつなの?」


凌太「…24歳です。」


咲「…そう。で?」


凌太「…金は親の作った借金のみ。家はこの間追い出され、何もなくなったので死のうとしてました。」


咲「じゃあ凌太の時間、私にちょうだい。」


咲さんが俺の首を撫でる。

こんなに暖かい部屋にいるのに全く温まらない体。

しかも刺すような痛みさえ感じるほど。


凌太「…俺の時間どう使うんですか。」


咲「自ら終わらせようとした時間に未練があるの?」


無いと言ったら無い。

あると言ったらあるだろう。


元は死のうとしていたんだ。

あの熊に食い殺されて終わろうとしていた人生。

あの時さえ生きたいとは思えなかった。

ただ、残った時間を好きなように使いたかったんだ。


凌太「…命に未練はありません。けど、時間には未練があります。」


そう言うと咲さんは不機嫌そうな顔から元の顔に戻る。


咲「分かったわ。じゃあ命は私にくれるという事ね。」


凌太「…死の瞬間は俺に選ばしてください。」


咲「殺しはしないわ。“命”が欲しいの。」


殺されないなら…、いいか。


凌太「はい。どうぞ。」


咲「“契約”ね。」


咲さんはそう言うと俺の頭を両手で掴み、口に舌を突っ込んできた。

咲さんはどこも冷えていて口の中でさえ凍り付いていた。


俺は何が起きたのか混乱していると俺の舌を吸われて八重歯で噛まれ血が出る。

すると、咲さんの舌が引っ込んでまた別の血の匂いが鼻に通る。


…なんか、クラクラしてきた。


咲「…口、開けて。」


俺はそのまま押し倒され、俺の腹の上で咲さんが馬乗りになる。

俺は言われた通り、口を開ける。


すると咲さんは赤く染まった唾液を俺の口の中に垂らす。


咲「全部飲んで。」


俺は流し込まれた全ての液体を喉に流し込む。


咲「りょ…、これ…ず…しょ。」


目の前が霞み始め、咲さんの声が遠くなっていきまた俺は眠ってしまった。




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