表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/14

靄闇

月の灯りが俺が歩く地面を照らすことなく、周りの木々も闇で何も見えない新月の夜、アーコと共に咲さんに連れられ冷える風が首元を撫でる中、山奥に来ていた。


司令塔の鐘は一度も鳴っていなかったのに、咲さんは時々凶妖狩りを進めているらしい。


咲さんは耳が良く凶妖の居場所を察知するのがとても早く、俺たちをたまに置いていってしまうほど。

けれど今日は俺とアーコに凶妖を探させる。


天音「…凌太さん。なんか感じたりします?」


凌太「…何も。」


2人で目、鼻、耳を集中して使うが葉が擦れ合う音と自分たちの足音、もう少しで霜が降りる香りがするだけ。


凌太「いますか?」


咲「いるわよ。」


咲さんは俺たちの数歩後ろで様子を伺っている。


天音「呼んだら出てきてくれますかね?」


凌太「そんなんで出てきたら鐘の番がいらないだろ。」


天音「そうですよね…。」


アーコはぎゅっと顔を絞って、目を凝らし集中し直す。

俺も負けじと集中するために少しだけ意識を心に向け、瞑想をする。


すると薄目で見ていた森林から暗闇の色ではない黒色にとても近いモヤが現れたのが見える。


俺は1人でそこに走り出し、刀を構えモヤの中でも濃い色をした部分に刃を振り下ろす。


すると重い何かが2つ地面に落ちる音と一瞬苦しそうな鳴き声が聞こえ、闇に慣れ始めた目を凝らしてみると首を切られた鹿が地面に溶け始めていた。


咲「初回にしては大物ね。」


天音「すごい!どうやって見つけたんですか?」


凌太「黒いモヤが見えた。」


アーコは目を輝かせながら自分にもそのモヤが見えないか変顔をしながら周りを見始める。


咲「同じことを繰り返して。無心で出来るようになったら凌太のものになる。」


凌太「分かりました。」


俺は数秒の瞑想とモヤを見つける感覚を徐々に狭めていき、20近い凶妖を狩った頃からその黒いモヤにも種類があることを知る。


モヤが凶妖の体より小さいものはなりたてなのか凶暴で暴れやすい。

モヤが体と同じくらいだと少し手間がかかる。

そして体よりも大きいモヤの持ち主は形態を変え、知恵もあり今の俺ではするりと逃げられてしまう。


咲「…そろそろ朝が来るからやめどきかしら。」


天音「もうですか…。私、1匹も見つけられませんでした。」


凌太「俺は逃してしまいました…。」


咲「いいの。これからもっと数は増える。今、数が少ないうちに見つけ方を習得するの。」


「「はい!」」


咲さんは少し満足げな表情をしながら俺たちの手を取って、世永の屋敷に戻りすぐに布団に入る支度をする。


この夜の見回りは世永に内緒にしているらしく、団員の誰かと鉢合わせすると咲さんはその人の秘密事を耳元で言い口封じをするのが当たり前になってる。


ここにいる人たちでも他人に聞かれたくない秘密事があるなんて、どんなやつも信用出来ないなと思いながら寝る前に刀の手入れをしていると寝巻き姿のアーコが俺の部屋にやって来た。


凌太「なんだ?バレる前に自分の部屋に行けよ。」


天音「モヤの見方をどうしても教えて欲しくて…。」


凌太「寝た後、教えてやるよ。」


天音「今がいいんです。」


凌太「俺は寝るぞ。」


俺はアーコが体を揺らす中、目を瞑り寝る前の自分の振り返りを始める。


天音「お願いします。時間は有限です。私寝ながら死んじゃうかもしれませんよ。」


凌太「…じゃあ出来たって仕方がない。」


天音「知ったこと、出来ること、1日1つどちらかはクリアしないと寝れません!」


凌太「俺は寝れる。」


天音「寝ても叩き起こします!」


俺が本気で寝ようとしても天音が体を30分近く揺らし続け、俺は酔いが来始めたので根負けし自分がやった方法を教えて部屋に返す。


これでまた一歩、アーコが俺に近づいた。


俺はアーコに抜かされないよう次に出来るようになりたいことを頭にまとめて眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ