表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
養子  作者: 藤田謙志
PR
3/4

その三

大学の授業料は心配しなくていい。

俺たちはまだまだ働ける。

健太には是非立派な弁護士になって欲しい。

鈴木夫妻はそのことを強く説いた。


鈴木夫婦には、自分たちのせいで健太の将来が閉ざされてしまうことが、何よりも耐えられなかったのだ。


しかし、健太は大学進学を頑なに拒んだ。


早く二人に楽をさせてあげたい。

これ以上鈴木夫妻に負担はかけたくない。

そんな気持ちが強かった。


話し合いは平行線に終わった。


鈴木夫妻と健太は、夏休みの終わりにもう一度話し合言うことにして、とりあえずこの話を保留にした。

進路を決めるのはもう少し先でも間に合う。


実は鈴木夫妻は、夜中遅くまで健太が勉強しているのをよく知っていた。

恐らくは試験勉強なのだろう。

健太はまだ大学進学を諦めていないと、二人は確信していた。


健太の勉強は、数年後の大学受験のためのものだった。

高校卒業したら働きながら大学の夜間学部に通い、大学卒業の資格を得る。

そして鈴木夫妻に恩返しをした後に、弁護士になればいい。

健太はそう思っていた。


そして、高校最後の夏休みがやってきた。


毎年夏休みは、健太が鈴木夫妻の工場を手伝うことになっている。

健太は今年もそのつもりでいると、鈴木夫妻が健太に別のアルバイト先を見つけてきた。

いつも工場の関係でお世話になっている弁護士の秘書だった。


博が言った。


「健太、まずは弁護士というのがどんな職業なのか、身をもって体験してみろ。進路を決めるのはそれからでいいだろう?」


「わかった。やってみるよ」


健太は少し迷いながらも、博の申し出を快く承諾した。

健太に立派な弁護士になって欲しい。

博の気持ちが痛い程にわかっていた。


次の日の朝、健太は教えられた事務所へ顔を出した。

『有本法律事務所』は雑居ビルの三階にその居を構えていた。


「失礼します」


健太が事務所のドアを開けた。

事務所には机が二つと応接用のソファーが一セットあるだけの、簡素な事務所だった。

その内に一つの机に、男性が一人座っていた。


その男性は六十歳前後であろうか。

白髪交じりの髪に口元に髭をたくわえて、広げた新聞に目を通していた。

健太が事務所に入ると、男性が顔を上げて健太を出迎えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ