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仲間に裏切られ最低ランクへ落とされた元勇者は謀略だけで生きていく   作者: 田丸 彬禰


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9/62

裏切りの算段

一日十時間、計六日間の徒歩に久しぶりに太陽を拝んだアーベルたち。

むろんその間に多くの他パーティを出くわし、情報交換をおこなうが、自分たちがこの洞窟の守護者デモクリトスを倒したことや、デモクリトスからもたらされた情報、さらに手に入れた秘宝メヘレトについては一切触れることはなかった。


そして、その日久々の外界の風景を楽しんだ後、アーベルは冒険者組合に報告に行く。

これは戻ってきた冒険者の義務であり、さらに冒険者が今までとは違う洞窟に入る際には必ず組合の許可を得なければならないという規則があるからだ。

もちろんその際には相応の金を支払わなければならない。

だが、これが法外な料金となっている。

さらに言えば、本来洞窟内で手に入れた宝はすべて組合が買い取ることになっているのだが、こちらについては非常に安い。

情報となれば、なおさらだ。

当然、冒険者たちの多くは組合ではなく、高価で買い取る非公認の買い取り業者に売る。

もちろん規則違反ではあるが、厳しく取り締まってしまうと、命を賭けて洞窟に潜る者がいなくなってしまうため、気づかぬふりをする、いわば黙認状態となっている。


「……カッシーニたちが出し渋りするのも理解できる」


自身は律儀に組合に売っていたアーベルは苦笑いしながら呟く。


「まあ、今回は魔法が付与されたもの。あれは自分たちで使うべきものだから大目に見てもらおうか」


そして、アーベルが冒険者組合に出向き、リーダーとしての仕事をしている頃、残された三人の仲間は暗い話に興じていた。


「……その秘宝をアーベルに対して使う?本気か。カッシーニ」


カッシーニから話を聞かされたセルシウスが呻き声のような声を上げる。


「一応言っておけば、すでにダレストには話をし、了承を得ている」

「ああ。そして、一応おまえにも声をかけた」


「乗らないか」


セルシウスは考える。


損得を。


おそらく、その秘宝を使い、カッシーニはアーベルの剣技を、ダレストは魔法を奪うのだろう。

だが、俺は得られるものはない。

それどころか、アーベルは自分に転移魔法を付与するように言っていたのだから、得になるのはアーベルの案。

ただし、話をした以上、賛成しなければ口封じの対象になるのは間違いない。

つまり、ここではイエス以外の答えはない。


「ひとつ聞く」


「それをやった場合、俺の取り分は何だ?」


「剣技、魔法、秘術。常識的にセルシウスには秘術となる」

「まあ、そうだろうな。だが、アーベルがそんなものを持っているなど聞いたことがない。大きな得になるおまえたちに比べてあきらかに差だ」


「チームの財産。それから今後の取り分。八割を俺のものと認めるなら考える。もちろん、おまえたちの企みに参加しなくても、アーベルに告げ口はしないことは約束するが、アーベルから力を奪うおまえたちと一緒にやっていくのならそれくらい貰わなければ合わない」


「どうだ?」


話をした以上、セルシウスも仲間に加えたい。

いや。

加えるべき。

だが、この要求は大きすぎる。

そうかと言ってここで口封じをしてしまっては、アーベルが自分たちに疑いを持つ。


「ダレスト。どうだ?」

「俺は六割なら手を打つが、八割はさすがに考えるものがある」

「なるほど」


「セルシウス。では、こうしよう」


「アーベルから手に入れる剣技と魔法。これについては俺とダレストが対象者とする。そして、アーベルが秘儀を持っていないことを考慮し、セルシウスには、現在手持ちの財については八割を渡し、今後の報酬と手に入れた財貨については六割を渡す。これでどうだ?」


「まあ、いいだろう」


こうして三人の暗い協定は成立した。


「では、具体的な方法に入ろうか」


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