補給と特需
そこから始まったアーベルたちの探索は冒険者の歴史にその名を刻むのには相応しいものだった。
アーベルが仲間たちに語ったとおり、まず前面の敵を排除する。
そして、松明によって光を確保する。
これによって、暗闇から突然敵が現れるという前線の冒険者たちにとっての最悪の事態を回避できるようになる。
さらに、補給を確保することによって後退することなく進み続けることができるようになる。
これも言葉では簡単に言えるものの、それまではそれを実現した冒険者チームはいなかった。
冒険者は共同して前進することはあったものの、基本的にはチームごとに動く。
それによって各冒険者チームは対等な関係を保つことができたのだが、すべてをチーム内で完結させなければならないという避けられない問題も浮かび上がる。
特に、食料や水、薪、武具の修理や手入れ、消費した治癒剤や魔法水晶の補充といった補給に関わるものは冒険者が洞窟の最前線に留まっていられない枷となっていた。
むろん、冒険者組合が設置した拠点がそれを担う場所となるのだが、それでも、最低でも現在の前線からは数日は後退しなければならず、その移動時間だけでも往復五日前後の食料などが消費されることになる。
より前線に近い場所に補給拠点ができればよいのだが、前線に近い、それは魔物の襲撃を受けやすいことを意味する。
当然相応の警備をする必要があるため、それを購入する際の対価も高くなるということになり、緊急意外は利用を躊躇する。
そういうことで「卵が先か、鶏が先か」的状況によって補給が足枷になっていた冒険者たちの洞窟探索。
アーベルはそれを打破した。
もっとも、それは他のチームも追従できるのかといえばできないといえるものだったのだが。
補給物資を運搬する者たちを組織化し自チームに組み込んだのだ。
もちろんそれを担うのは冒険者たち。
品物の代金のほかに運搬賃しはらわなければならないうえに、複数のチーム、両手でも足りない数の補給物資運搬チームが必要になる。
それをおこなうことができるのは、別名「金満チーム」、蔑称「守銭奴チーム」、最蔑称「チーム・金がすべて」であるアーベルのチームならではということになるだろう。
ついでに言っておけば、金をバラまきながらおこなうこのやり方であるが、アーベルたちの成功は見て続きたいとは思ったものの、そこまで軍資金に余裕がない他チームは複数のチームが共同で運搬チームを組織するという方法を考案する。
これによってその運搬チームの担い手である駆け出し冒険者たちの懐が非常に温まるという待遇改善現象が起きる。
もちろんその支払者側であるベテラン冒険者たちも時間のロスが大幅に減少し、今まで以上の戦果、そして、そこから生まれる報酬が得られるようになるのである。




