勇者アーベルは真の悪党だった件
アーベルからカッシーニたち「黄金の盾」の残党へのアドバイス。
だが、彼がその言葉を口にするのはもう少し先のことであり、ふたりの話はまだ終わっておらず、さらに、アーベルとカッシーニが別れるのもまだ先のこととなる。
「……ところで、どちらが先に突破するにしても、その前に問題は解決しなければいけないだろう」
「問題?」
「転移魔法でやってくる魔物どもをどうするかということだ」
「さすがのアーベルでも打つ手なしか」
「そうなるな」
「もう少し観察しなければならない」
「そうかと言って、どこに出てくるかがわからないところが問題だろう」
「そうなのだが、ひとつ手がある」
「ということ?」
「奴らのうち、相応の知性がある魔物はこちらの言葉がわかる」
「つまり、こちらが盛大に餌を撒けば、奴らがやってくる可能性は十分にある。どうだ?」
「悪くないな。さすが悪党」
そう言ったところで、カッシーニは苦笑いする。
「どうせメヘレトを使うのなら、その悪知恵を奪い取れるようにすべきだったと反省している」
「今頃気づいたのか?カッシーニ。実は俺がおまえたちを許したのはそれだ」
「くそっ」
「それで……肝心な餌であるが」
「むろんその餌は俺たち自身だろう」
「デモクリトスも勇者を知っていた。おそらく情報は魔物の中で共有しているだろう。そうなれば、人間には有効な手立てがない転移魔法を使って目障りな勇者を討とうと魔物たちは考える。間違いなくエリート兵を転移させて勇者を討ちに来るだろうな」
「だが、それこそが狙いというわけか」
「そう。もっとも、勇者を狙うチームだ。当然厳しい戦いになる」
「つまり、おまえたちも対価を支払うのだから、そこで得られた情報はおまえたちにも渡す。そこは信頼してもらっていい」
「わかった。では、しばらくの間は共闘するということにしようか」




