クロエ
「……俺たち冒険者は仲間の詮索をしない決まりがある。だから、話をしたくなければしなくてもいいが……」
「俺が見たところ、あんたを含めてそう能力が高いように見えなかった。あのチームはどのような経緯で出来上がったのだ?」
そう言ってアーベルはクロエを見やる。
一瞬後、クロエが口を開く。
「あのチームはふたつのチームが合わさったものです。最初に倒されたふたり組と私を含めて三人組です。ふたり組は中級の冒険者だったらしいのですが、魔術師が抜けてしまい、その補充のために駆け出しではあるものの魔術師である私をスカウトしにきたとのことでした。その際ふたりも一緒に加えたのです」
「その結果、五人になったというわけか。だが、ベテランのふたりが最初に倒された?ということは、そいつらのたいしたことが……」
「目の前に突然現したのです」
転移魔法か。
アーベルは心の中で呟く。
だが、それを口にするわけにはいかない。
「何度か見たことがあるが、あの奇術か。だが、馬鹿なマイムーがそんが芸当を見せるなど聞いたことがない」
「いえ。もうひとりいたのです。おそらく魔術師。ですが、すぐにその魔物は姿を消して……」
「マイムーは使い捨ての駒か」
「おそらく」
「ついでに聞いておこう」
「女の冒険者がいないわけではない。だが、少ないのも事実。危険な仕事をわざわざ選ぶ理由はなんだ?」
「ハッキリ言って、あんたは冒険者になるには実力不足だ。特別な事情がないのなら、助かった今回を機に、やめた方がいい」
「私自身、冒険者に執着しているわけではないのですが……」
「魔術師協会より探索の経験を積むようにと強く言われ……」
「なぜ……」
と言ったものの、アーベルには察しがついていた。
冒険者に属する魔術師には二種類いる。
アーベルやダレストのように自身の魔術師の才能に気づき、独力で上達していく者。
そして、もうひとつが魔術師協会の試験を突破し、基礎から徹底した指導を受けた者。
むろんクロエは後者。
そして、将来のエース候補に実戦経験を積ませるために探索に送り込まれた。
むろん魔術師協会としてそのような者を簡単に死なせるような真似はしない。
おそらく元々の仲間だというふたりは彼女の護衛。
もしかしたら、後から加わったふたりも魔術師協会からの護衛依頼があったのかもしれない。
だが、不運にも、経験を積み始めてまもなく強敵にあたってしまったということなのだろう。
しかも、奇襲。
本当についていなかったといえるだろう。
「まあ、凡そのことはわかった。そして、あんたが魔術師協会の出身ということであれば、魔法に関して才がないということはないだろうから、先ほど口にした才能がないという言葉は撤回しておこう。とりあえず、生きて洞窟から出たら魔術師協会に今回の奇襲について詳しく報告しておいた方がいいだろう」
「わかりました」
そう言ってクロエは笑う。
ようやく見せた笑顔だった。
「アーベルさんはなぜひとりで探索を。あの戦い方を見れば、相当経験を積んでいるように見えますが」
「……ああ。経験は積んでいる」
「だが、それこそ才がない。だから、洞窟内で仲間に捨てられて、外に出る際中だった」
さすがに才を奪われたとは言えなかった。
それを言ったところでどうにもならないし、それどころか、その発端となった秘宝メヘレトを隠し持っていたことが発覚し問題になるかもしれないから。
「……灯りが見えてきた。あれは冒険者組合の店だ」
「俺は一文無しだが、魔術師協会出身のエリート様なら金はたんまり持っているだろう。助けてやった礼に何か食わせてくれ」




