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初恋は、×の味。  作者: 狗賓
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前編

 完全甘い系初投稿なり。

 ……自己満足万歳、後悔はしてない。


 3時のおやつにどうぞー!


 ────初恋、でした。


 あなたと出会った、あの日。

 あの頃の私は、人見知りで、臆病で。初めて会ったあなたに驚いて、思わず母の背に隠れてしまった。

 今思うと、我ながら中々に酷い行動だったと思う。

 でも、あなたはそんな私に微笑みかけてくれた。微笑んで、「一緒に、遊ぼう」と言ってくれた。

 そのとき、あなたの琥珀色の瞳と目が合って。──私は、あなたに恋をしたの。



 それから、ずっと。私は、あなただけを想っていました。


 あなたは誰にでも平等で、誠実な人。

 それは美徳であり、……同時に、とても残酷なこと。

 私が、あなたへの想いを募らせていく、その目の前で。あなたは、いくつもの恋を重ねていった。


 出会い、別れる。


 刹那的で、衝動的な逢瀬を繰り返すあなたは、いつまでも幼稚な私を置いてきぼりにして、大人になっていく。

 傍で見ていたときは、その事実が胸を締め付けて。あぁ、苦しいなって。



 高校生になって、お互い違う学校に通い始めて。

 生活の時間帯も、通学路もすれ違わなくなって。……だんだん、会えなくなって。


 今までずっと一緒だったのに、あなたはまた遠い人になった。


 そんな気がして。私は、悲しくなった。そして、寂しくなった。

 たまに会っても、互いの近況を話したり、流行りの映画の話をしたり。その程度。


 ……いや、一度だけ恋愛相談も、されたかな?


 あなたは友達のことだと言って、誤魔化してたけど。私には、あなた自身の話だってすぐに分かった。

 だって、長い付き合いだもの。

 あなたの癖の一つや二つぐらい、すぐに見つけられる。──それに、あなたが「好き」だから。



 このままじゃ、駄目だ。

 ……そう思うようになったのは、高校生活も折り返しに入った頃。

 母から、あなたが二桁目の彼女と別れた話を聞いた頃。


 今さら、遅いかな。


 なんて、本当に今更なことを思いながら。あなたへの甘い甘い贈り物を、大事に宝箱に詰めこんだ。

 そして、(きた)る、バレンタインの日。


 チョコレート味のカップケーキと、ハートのカード。

 それと、私の言葉も。


 小さい頃、一緒に遊んだ公園で贈ったそれに、心なしか頬を染めたように見えたあなた。


 私の願望が魅せた幻か、夕日のせいか。それとも……?


 ドクンドクンと速まる鼓動、上がる熱。その反面、背筋に冷たい汗が流れてく。

 一世一代の大告白。私の頭の中はパニックで、真っ白で。

 さっきからグルグルと、自分から飛び出た言葉に、眩暈がするようだ。

 長いようで、短い時間。いつのまにか日暮れの空は、紺碧へと染まり始めていた。


 そして、待ちに待ったあなたの答えは──「保留」の二文字。

 その期限は次のホワイトデー。



「じゃあ、また」


 その言葉を置いて、逃げ帰るように駆けていったあなたを、私は手を振って見送る。

 初めて、あなたに正面から向き合えた気がして。私はその場で独り、歓声をあげた。

 嬉しさと、恥ずかしさ。い交ぜのごちゃごちゃになった声は、遠い空へと消えていく。


 ……もし、あのとき、それが最後になるって知ってたら、全力で引き留めたのに。



 一ヶ月後。

 約束の日。答え合わせの時間──なのに、あなたは来ない。

 待てども暮らせども、あなたの姿は見当たらず。行き場のない恐怖と不安が私を押し潰す。

 ようやく理由が分かったのは、それから二週間が過ぎた頃。

 母から聞いたあなたの悩み、私への隠し事。──心臓の、手術。


 ねぇ、あなたはいつから私の前で演じてたの?


 きっと、あなた自身はずっと前から知っていたはずで、私に伝える機会だって、何回も……。

 私は、そんなにも信用ならなかったのかな。それとも、伝える価値もないって思ってたのかな。

 ……お願い、答えてよ。


 ちゃんと聞くから。聞いて、それから理解するから。


 ……うぅん、ごめんね。やっぱり、なんでもないや。

 これは、私の八つ当たり。──なんてぐちゃぐちゃした、恐ろしくて醜い感情か。

 あぁ、本当に嫌な気持ち、ね。

 いっそのこと、これで諦められたらいいのに。……そう、何度思っただろう。

 でも、私は今でも、あなたが「好き」。

 ──気持ちのやり場を無くしても尚、想いは止まらない。止められない。


 恋って、本当にすごい。






 あれから3年が経った。

 私はバレンタインとホワイトデーに、この公園であなたを待っている。

 あれ以来、あなたがどうしているか。私は知らない。

 当時は携帯すら持ってないロートルだったし、今もあなたのアドレスを知らない。……今のあなたの居場所も、知らない。


 もしかしたら、私との約束なんてパーッと忘れてるかもしれない。


 この世界のどこかで、あなたは誰かと恋をして。周りが見えなくなるぐらい、幸せになっているのかも。

 そしたら、私は祝福はできないけど。応援もできないけど。あなたの幸せを想って笑える、かな。

 つらいのも、痛いのも上手に呑み込んで、いつかこの想いが褪せるまで、ずっと笑っていられる。

 ……ううん、それならまだマシ。

 だって、もしかしたら、あなたは手術に失敗して、もうこの世にも──。

 いや、もうそう。これ以上は、考えちゃ駄目。私の本能は、そう告げる。



 今年も作ったカップケーキ。味も見た目も、自信作なのに。……美味しくできたのに。

 これを渡すあなたはいない。

 だから、私はその場に蹲り、一人それを齧る。


 ……あれ、あれれ?可笑しいな。


 甘党なあなたのために、甘く作ったのに。何でだろう。

 ……ちょっと、しょっぱいや。

 まるで、今、私の頬を伝っていく涙が沁みてるみたいに。






 ねぇ、愛しいあなたは今、どこにいますか?

 そこで何をして、どう思って、どんな表情かおをしていますか?

 私から一つだけ、あなたにお願いがあります。


 どうか、お幸せになってください。


 ……私のことなんて忘れててもいい。だから、どうか。



 それと、神様。

 もし、私の声が聞こえているなら。どこかで私が見えているなら。どうかお願いします。


 ……私の想いも願いも、全部。どうか消さないで。


 矛盾も葛藤も、上等。




 私は、そう覚悟したのだから────。

 続きはホワイトデーに投稿予定。

 忘れてなきゃいいけど……。

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