1 暗闇からの足音
異世界の恋愛物です。(魔法世界ではありません)
自分の置かれた境遇から逃げて、どうしたいか、何ができるか、考えて、選んで、頑張る女の子を書いてみたくなって。
どうぞよろしくお願いします。
暗い、何も見えない、寒い……。
ジュディスは手足を縮こませて唇を噛んだ。
<最近は見てなかったのに……>
頭の中で幼い自分を客観的に見ている今のジュディスがいるのに、だんだん恐怖が身体を頭を支配していく。
<まずい、まずい、早く起きて!>
幼い自分が恐怖に飲まれて暗闇の中で動けなくなるのを感じる。
自分が頭をつけている床に微かな振動。
ゆっくり近づいてくる足音。
<足音? これは、今までなかった!>
ジュディス・ロイヤー子爵令嬢はベッドの上で目を覚まし、震えた。
手足が冷たい。なのに心臓はドクドク痛いぐらい鳴り響いていて、額に変な汗をかいている。
ベッドサイドのランプはまだ揺らめいていて、心を落ち着かせてくれた。
薄いカーテンから漏れてくる朝日にほっとする。
「ああ、夢……。そう、夢だとわかってるのに……」
呟いて起き上がる。
学園の寮の部屋、2年生になり、すっかり自分の部屋だと思えるようになった小さな部屋。
幼い時はこの暗闇の夢をよく見てうなされて泣きながら起きることがあったけれど、学園に来て日中忙しく楽しく過ごすようになってほとんど見なくなっていたのに。
原因はわかっている。
サーザ。
サーザ・カーライル侯爵令息。
彼が1年生としてこの学園に入学してきたからだ。
ジュディスはため息をついた。
もう新学期から2ヶ月経つ、あと1ヶ月弱、何とか耐えれば長期夏季休みだ。
それまでは頑張ろう!
「それにしても、足音か……。
追いかけられてる恐怖からかしら……」
ジュディスは呟いて、手足を少し動かしてから、ゆっくり立ち上がった。
まだ早朝のようだ。
起きてしまったのだから、早めに動き、サーザ・カーライルがエントランスに立つ前に2年の教室へ行ってしまおう。
ジュディスは貴族学園2年生の16歳。
貴族学院は15~17歳の3年間、貴族の子女が在学する学園だ。
他に王立学院もあるが、そちらは平民にも門戸が開かれている。
貴族令息はどちらかに進学することが多いが、貴族令嬢のほとんどは貴族学園の方に進学してくるのが慣習となっている。
ジュディスとしてはどちらでもかまわなかったのだが、ロイヤー子爵家としては体面を考えて長女の進学先は貴族学園一択だった。
カーテンを開け、窓を開け、冷たい水で顔を洗い、すっきりする。
制服に着替える。
そして、明るめの茶色の髪、友人のアマンダには『胡桃色』と言われる髪を丁寧に梳かし、肩から手前に垂らすように一本の三つ編みにする。
鏡を覗くと明るい緑の瞳のおとなしい感じの少女が微笑んでいる。
「よし!」
ジュディスはベッドと寝間着を軽く整え、机の上のカバンの中をチェックして、自室を後にした。
これからもどうぞよろしくお願いします。




