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天上の不適合者~クソクラスと言われた式神使いで世界を歪めた者たちへ反逆する~  作者: 風間悟
第1章:2人の不適合者

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星の巫女という不適合者⑤ 地底の門

─── 下北沢Cランクダンジョン 3層 ───



「友梨佳、そっち行ったぞ!!」

「はいはい」


 クルクルと、手足のように槍を回しつつ、魔物の攻撃を切っ先で受け止め、力を別方向へといなす。


 それから軽やかに身体を翻しながら、トントンッと、魔物へ1突き2突きと素早く刺し貫いていく。



「弥生、トドメ」

「はい! ……『フレアボール』!」


「!!!」


 私たちと同じパーティーメンバーの弥生ちゃんが無詠唱で魔法を放ち、敵の急所である()へと直撃する。


 バキンッと、()()()()()()()により核が破壊されたことで、核だけが灰となり、魔物だった物がガラガラと崩れていく。



 私たちが扱う魔法には、階位という段階が存在する。

 現在、第Ⅰ〜第Ⅷまで分類されている。


  第Ⅰ階位:初級下位魔法

  第Ⅱ階位:初級上位魔法

  第Ⅲ階位:中級下位魔法

  第Ⅳ階位:中級上位魔法

  第Ⅴ階位:上級下位魔法

  第Ⅵ階位:上級上位魔法

  第Ⅶ階位:最上級魔法

  第Ⅷ階位:極大魔法


 なおレベルを上げていけば、本来詠唱が必要とされる魔法を無詠唱で放つことも可能だ。その変わり、威力が7割程度まで減少するため、一長一短となっている。



「はい、お疲れ〜」

「はぁ……、ゴーレムとは言っても、オークとそんなに変わらないな」

「むしろ、核さえ壊しちゃえば倒せるし、こっちの方が簡単じゃないかな?」



 私たちがいる下北沢ダンジョンは地下迷宮となっていて、出てくる魔物はゴーレムや蠍といった、神殿?系に出てきそうな魔物が多い。


 そしてゴーレムとは、無機物に『魔核』という特殊な()()()()()がはめ込まれた存在で、その魔核が操っている物体の総称でもある。



「それにしても、やっぱり友梨佳ちゃんは安定してるね〜。レベル51とは思えないよ」

「うちの高校、無駄に平均レベルが高いよな。ったく、やる気ありすぎだろ」

「死にたがりの奴らなんて、放っておけばいいの。私たちは楽にボスを倒して、後方に行ければそれだけでいいんだから」


 いつ死ぬのか分からない世界で、守護者ガーディアンの誰しもが率先して戦いたい訳ではない。死ぬのは誰だって怖いし、家族たちと離れたくない。


 だからこそ、多少なりとも戦うことが義務付けられている後方支援に回りたいと考える人たちは多い。



 更には、少しでも多くの人に娯楽をと、ダンジョン内の様子や戦闘風景をライブ配信する者たちも、世の中には一部存在する。



 どんな状況であれ、みんな、今を生きるのに精一杯なんだ。



「ねぇ、ぼ〜っとしてないで、魔石を回収してよ。藤宮ちゃん」

「あ、うん。ごめんね、すぐに回収する」


 戦いに参加することの出来ない私は、必死に魔物の攻撃から逃げつつ、戦闘が終わればこうして魔石を回収するのが、仕事だ。



「ったく。Fランクなんだから、きびっと動けよな」

「ねぇねぇ、友梨佳ちゃん。いつまでこんなお荷物を懐に置いとくの? 正直言って、足手まといじゃん」



 斉藤さんの言うことは正しい。正直、レベル0でFランクの私が、今日まで生き延びられているのか、不思議でならない。



「はぁ? そんなのこいつがボス戦で役に立つからに決まってるじゃん」

「それはそうだがよ。それだけでパーティーに入れるくらいなら、戦える奴を1人入れた方が効率も上がってよくねぇ?」

「バカね。それじゃ、経験値が4等分になるじゃない。こいつがいるから3等分になってるのに、更に経験値を減らすとか、効率悪すぎ」


「まぁ、言いたいことは分かるけどよぉ……」



 戦闘に参加しないということは、経験値が手に入らないということ。そもそもレベル0なので、参加したところで、経験値は入らないんだけどね。



「葉隠ちゃん。魔石の回収、終わったよ」

「そっ。じゃあ、いつものお願い。これからボス戦なんだから」

「……うん」


 目の前には、ボスに繋がる扉がある。ここを通れば、ボス戦だ。


 祈りのポーズを取りながら、魔力を練り上げる。ゆっくりと足元に魔法陣が構築され始めたのを確認した後、歌うように詠唱をゆっくりと口ずさむ。



"我、星の巫女が祈る"

"生命の母たる大地に、我が祈りを届けよう"

"差し出すは己がすべて"

"祝福せしは、大地を守護する守人なり"

"我が祈りに応え、今ここに、星の奇跡を授けよ"

"全能力向上オールブースト!!"



 詠唱が完了し、魔法名を唱える。

 パァッと、魔法陣が光り輝き、葉隠ちゃんの身体が光に包まれる。バフがかかった証拠だ。



「はい、お疲れ。じゃあ、サクッとボス倒してくるから、藤宮ちゃんはここにいてね〜」

「うん。皆、気をつけてね」


 私の仕事は終わった。なので後はみんなの無事を祈りながら、ボス部屋の前で待機するだけだ。


 それから三人がボス部屋へと入り、戻って来たのは僅か3分後だった。つまり、ここのボスは5分で倒されたことを意味する。



 Cランクダンジョンのボス討伐にかかる時間は平均で20分。それを鑑みれば、咲のバフがかかった状態でのボス討伐の速さは、異常な討伐速度だ。



「おかえりなさい」


「はぁ……、Cランクなんだから、もう少しマシな経験値寄越しなさいよ」

「ゴーレム系って、倒しやすい割に経験値少ねぇよな。レベルなんて、1つしか上がらなかったぞ」

「いいじゃん、倒しやすくて。それにしても、やっぱり20倍バフって凄いよね〜。あっという間にボスの四肢が砕けたし」


 一言も返事が返らないまま、三人は私の横を通り過ぎなら話し続ける。これも、いつも通りだ。



(…………あれ?)



 何気なくボス部屋の方を見てみれば、これまでとは少し違うことに気づく。

 そのまま咲は三人を呼び止める。



「はぁ……、何? さっさと帰ってシャワー浴びたいんだけど」

「その、奥に()が……」

「はぁあ? そんな訳……」



 めんどくさそうにボス部屋の方に視線を向ける。そのまま目を見開きながら、葉隠は呆然とする。


 そのまま視線を横に動かし、凝視する。



「え、マジであるじゃん。なんかの特殊な条件でも達成したのか?」

「ほんとだ〜。さっきはなかったよね?」


 他の二人にも見えていることから、見間違いではないらしい。



「葉隠ちゃん。あれって、なんだろう?」

「…………あんたら、今日は戻るよ」


 そう尋ねてみるけど、葉隠ちゃんは身体の向きを再びダンジョンの方へと向けて歩き出す。



「え、帰っちゃうの!?」

「おいおい、もしかしたらボーナス部屋かもしれねぇんだぞ」

「あんたらバカ? なんの準備もしないで入るとか、絶対に無理。罠があったらどうすんの」

「だったらどうすんだよ」


 前衛でタンク役の常守君がそう尋ねると、『業腹だけど……』と、葉隠ちゃんはある提案をする。



「罠系に強いシーフクラスの奴を1人、今回に限り加入させる。報酬は少なくなるけど、死ぬよりはマシでしょ」

「他の奴に横取りされるかもしれないぞ」

「大丈夫。私のウィンドウに、討伐者ボーナスって出てるから、私たちが入らない限り、他の奴らも入れないと思う。確証はないけど」


「まぁそれもそうか。でも、安心できねぇんじゃ早めに来ないといけねぇだろ?」

「だね〜、いつ入る?」

「後腐れない奴を探さないといけないし、3、4日後辺りが合理的でしょ」



 それを聞き、ふと咲の脳裏によぎるのはある一人の守護者ガーディアン

 シーフクラスではないが、彼のクラス特性上、罠系の対策が取れるはずだと、そう考えた。


 それに、強くなりたいと渇望している彼にとってもメリットはあると思うし、昨日の提案を断った負い目もあったことから、そのまま葉隠に提案する。



「ねぇ葉隠ちゃん。神薙君とか、どうかな?」

「あぁ? なんでお前と同じ不適合者を入れないといけねぇんだよ」

「だよね〜。もしかして、自分が強くなれないからって、最近調子乗ってる不適合者を虐めたいの?」


「違うよ。神薙君のことだから、罠系に強い式神と契約してるかもと思って……」

「はぁ? それこそありえねぇだろ。あいつ、クソ雑魚の狐型の式神しかいねぇんだから」


「あれ? でもそういえば昨日、別の式神がいた気がする」

「マジで!? あの不遇クラスのレベルを上げるとか、マゾすぎるだろ。……でも、それならアリか?」


「…………」

「それで、どうかな?」


 そう提案しすれば、葉隠ちゃんは口に手を当てながら考え始める。それから少しして考えが纏まったのか、ただ一言『無しね』とつぶやく。



「いいのか? 不適合者なんだから、ダンジョンについていけるってだけで、泣いて喜ぶぞ?」

「使えるかも分からない奴を信用するとか無理。私は確実性を取りたいの」


 どうやら私の提案はダメだったらしい。

 二人も『それもそうだな』と、同意していた。



「んじゃ、俺らも伝手を頼って、探してみるか」

「だね〜」

「じゃ、帰るわよ」


 葉隠ちゃんの号令で、二人もダンジョンを出るために歩き出す。


 なので私も着いていこうとするのだけど──



「それにしても、神薙君を推薦するだなんてね。藤宮ちゃん、もしかしてスカウト蹴ったこと、後悔してるの?」

「っ、そ、そんなこと、ないよ」

「ふぅ〜ん。ま、いいや」


 探るような視線から目を背けるながら答えるんだけど、葉隠ちゃんのことだ、きっと気づいてる。


 それから『あぁそうそう』と、私にあることを告げる。


「ボスがいたら困るし、あんたも連れて行くからそのつもりでね」

「……うん、分かった」


 私が出来ることは少ない。だけど、少しでも葉隠ちゃんの役に立てるのなら、今はそれでいい。



「ほんと、その目がウザいのよね。あんたも神薙君も。……………………()()()()()()()()()

「え?」


 何かを吐き捨てるかのように、何かを小さくつぶやきながら、葉隠ちゃんは歩き出す。


 なので今度こそ、私もみんなから置いていかれないよう、歩き出す。



 だけど私たちはまだ知らなかった。ボーナスという甘い蜜を垂らした、あの扉の先に待ち受ける悪意の正体に。

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