裏世界初任務!特変体討伐⑩
セフィーは腰のポシェットから魔霧瓶と同形状のガラス管を取り出し、蓋を開け振って見せた。
すると、ガラス管の中に徐々に紫色の気体が蓋を開けた入口から吸い込まれる反応が生まれた。
紫色の気体がガラス管の上部まで溜まった所で蓋を閉めた。
「これでよし、と……」
「何それ?」
「たぶん、狂黒素」
「狂黒素……?クレジウムって、黒くないっけ?」
「本来はそうだけど、変質してこの色になってるんだと思う」
狂黒素とは……空気中の黒霧の割合が多いと発生する気体で生物が一定量吸い込むと「狂症」という理性が消える変わりに肉体が強化された状態になる。
表世界の頃にも何度か「狂症」状態になった魔物や他の種族と対峙した事があった。
「待って……?てことは、今俺「狂黒素」吸っちゃってる?」
「うん、さっきからずっと吸ってるよ」
「マジ!?はやく言ってよ!!俺今耐性低いんだからぁ!!!」
俺は慌ててセフィーから離れた。
「ど、どど、どうしよう……俺、このままじゃ「狂症」になっちゃうよおおお!嫌だああああ!!狂いたくない!!いやああああああ!!!」
「もう、""なってる""じゃない」
「てか、はやく言ってよ!狂黒素が浮いてるって!!
てか、ど、どこから浮いてたの?」
「森に入ってから浮いてたけど、この切り株の近くから濃くなってたよ」
「は……はやく……!!狂症にかかる前に早く浄化ポーションを……!!」
俺は鼻と口を手で抑えながらセフィーに訴えた。
「そんなに慌てなくても大丈夫だよ」
「でも、吸ってるんじゃ……?」
「さっき森に入る瞬間に『耐性強化』掛けといたから」
「は……はやく言ってよ〜……」
安堵した俺は後ろの「大巨人の足」の根元に背を寄り掛けズルズルと座り込んだ。
「とりあえず、帰ってこれを解析しましょ、特変体化の原因は間違いなくこれよ」
「んじゃ、帰りますか……おーい、アニー帰るぞ〜」
「おう」
ズガーーーーーン!!!!!!!!!
グワングワングワン…………!!!!
突如、爆音が鳴り響いたと思いきや、地面が畝る様に大きく揺れ動いた。
爆音と大揺れの原因は明白で、アニーが持ち上げた『大巨人の足』を雑に地面に下ろしたからだろう。
あんな大巨樹の丸々一本を持ち上げ、雑に地面に戻せば地面が揺れ動くのは当然だろう。
「アニー、もっとソッと置いてよ……」
俺は地面に横になりながら『大巨人の足』から手を離したアニーに訴えた。
「わりぃ」
アニーは片手を顔まで上げて軽く謝るポーズを取った。
いや、全然悪いと思ってないだろ…………。




