魔王幹部の魔者ディエイデン②
放たれた光は遠方に聳える山脈の一角を消し飛ばした。
セフィーから見て前方の木々は跡形もなく消え去り、地面が抉られ、巨大な破壊痕が生まれていた。
「な〜んだ、アニーが苦戦した割には、あっけなかったな」
「気をつけろ!セフィー!!そいつは身体の1部でも残っていりゃ生き返れる!!!」
「大丈夫だよ、今のじゃ塵すら残ってないでしょ」
「そりゃ、全部当たってればな」
「あの至近距離の最大出力で撃ったから大丈夫でしょ」
「だ…だと良いが………」
倒れているリクの傍で膝を着くとセフィーはリクの負傷している箇所に触れて治癒魔法を施した。
「これで、良しと…さあ、起きなさいっと!」
セフィーはリクの負傷してない箇所を叩いた。リクは「いったあ!?」と叫ぶと飛び起きて、叩かれた箇所を擦った。
「いてて…なんだよぉ…天国でも痛みを感じるのかよ……てか、今叩いたの誰?」
「私だよ。あと、ここはまだ現世だからね?」
「なんだセフィーか…って、えっ…?えぇええっ!?セフィー!?!?まさかお前もあの魔者に殺されてここに!?」
「そう思うんなら、はい」
「ふぇ?」
セフィーは両手でリクの両頬を掴むと
そのまま目覚めたばかりで呆けているリクの両頬を抓った。
「いでででで!!!」
「自分が死んでると思う?」
「へはっへ!へはっへ!ひへへはんへっへへっほう、ははあへははあー!!(※わかった!わかった!死んでないってもうわかったからー!!」
セフィーはリクの頬を抓る手を離した。
「ふぅ…あいててて……じゃあ、アニーは?」
「そこにいるよ」
セフィーが指を差した先には木に寄り掛かるようにして地面に座っているアニーが居た。
「ほっ………なぁ、セフィー…やっぱ俺……」
「アンタにはやっぱり『勇者』という生き方が似合ってるよ」
「え!?えーーと…今、真逆のこと言おうとしたんだけど?」
「自分に『勇者』という生き方は向いてないって?」
「向いてないっつーか…俺、アニーとセフィーが居なけりゃ確実に…死んでたし……」
「でも、魔者から助ける為に戦ったんでしょ?あの子のことを」
セフィーが視線を動かすと、その視線の先にはリクが助けた子供が木に隠れながらこっちを見ている。
「つい、さっきまでの裏世界に来てからのリクじゃ、自分より遥かに強そうな相手と戦おうとするなんて考えもつかなかったでしょ?それなのにこうやって挑んだのは、リクが『勇者』が持つべき【勇敢な意志】を心の中に、魂に持ち合わせているから、無意識に行動に現れたのだと。
そして、同時に気づいたの、リクの強さだけに惹かれて今まで着いてきたんじゃない、心の中に秘めている【勇敢な意志】に惹かれたからなんだって、それが変わってないとわかった今だからこそ言える、アナタと共に、またこの裏世界を冒険したい!って」
「いや……んなこと言われたって……痛いのはやっぱ嫌だし、怖いし……いつ死ぬかわからんし……」
「まだそんなこと言う、もうアンタが弱いのはわかってるんだから、その分はアニーと私でフォローする」
「でも、それって俺ただのお荷物じゃ?」
「うるさーーーい!!!」
「えぇ…」
急に声を荒げたセフィーに驚きリクは目を見開いた。そんなリクに向けてセフィーは話を続ける。
「私は…いいえ…私達はアナタと共に魔王を倒しに行きたいの!」
「・・・」
「そして、その思いは、リクの強さは借り物だったとしても、心に秘めていた意志は同じなんだなって分かったことで、私のアナタに着いて行きたいという意思がより堅くなったよ」
「で…でも……」
「今すぐじゃなくていい、あと、3日間この街で待つから…それまで」
「お…ぉおい!!お前らぁ!!う…上ぇ!!!!!!」
「…ッ!!!???」
2人が空を見上げると視線の先には消し飛ばした筈のディエイデンの姿が…!
ディエイデンの頭上に、巨大な"黒い手"が君臨している
巨大な手の下でディエイデンが両手を挙げ、五本の鉤爪から生成されている黒い光が集まり
巨大な【魔力球】を作り上げている。
「貴様ら!!褒めてやる!!この俺に4度も魔霧渡りを使わせるとはなあ!!!
「させない!!!」
セフィーは地を蹴りディエイデンの元まで飛び、挙げている両手を斬ろうと剣を振ったが一瞬にして躱されセフィーの刃は空の雲を斬っていた。
「は…速い!!!」
「気づかれたら防がれるだろうと思って俊敏値を少し魔力を使ってブーストしているのだ。もうお前のスピードでは俺は防げんよ」
「舐めてもらっちゃ困るわ!まだ私もブーストすれば速く…!!!!」
「防がれる前に貴様らを後ろの街諸共消し去ってやるよ!!!!」
黒い光の手の平に巨大な光の玉が生まれた
「大魔黒球!!!!」
全てを破壊する黒き光の玉が巨大な黒い手から放たれようとしている寸前………!
「ひさしぶりだな、ディエイデン」
空に浮かぶ魔者を地上から呼ぶ声が聞こえた。
「し…シーラ!!?な、何故ここに…!?」
「何故って、この街で冒険者ギルドを営んでいるんでね」
「ちっ……貴様か縛られている街とやらが”この街”だったとは…!」
「さあ、放ちなよ、その技を……」
「ケッ…!」
ふっ…と黒い巨大な光の玉も大きな手も消え去ったと思えばディエイデンも姿を消した。
「どこ行った!きっとまだ近くに…!」
「いいや、もう大丈夫だよ、セフィー」
「アイツ、遠くまで逃げたみたい、またいずれ現れるかもしれないけど、今はもう戻って来ないでしょう」
「ほ、本当ですか?」
「本当、だから今はまずギルドに戻って休みなさいな3人共…いや、勇者のピンチを知らせた小さな勇者を含めて…4人ともね」
ギルド長シーラは遠くの木に隠れている子供に目を向けると微笑んだ。




