魔王幹部の魔者『ディエイデン』
「ククッ…アンタ、こいつのお仲間か?」
「ま、そんな所だ」
「ア・・・アニー・・・・・・ポーション・・・を・・・くれ・・・・・・」
俺は内傷の痛みで弱々しくも荒い息を吐きながら、アニーの腰ポシェットを指さし回復ポーションをくれと訴えた。
「ポーション?お前持ってねえのか?」
「か・・・回復は宿に置いたまま・・・傷ふさぎは持ってたから傷は塞いだけどな・・・」
「お前よぉ・・・戦いに行くんなら回復ポーションも持っとかねえと、"ここ"じゃ死んじまうぞ〜?」
「戦いに行くつもりはなかったんだよ・・・・・・」
次からは回復ポーションも常備しとこう
ここは"裏世界"だ。
今の俺からして見れば、一撃で致命傷レベルの攻撃をしてくる敵はバンバン出てくるだろうし
今みたいに突如、超強敵とエンカウントする可能性だってあるし。
「しょうがねぇなぁ・・・」
アニーは腰のベルトポーチを開き中身を確認した。
数秒フリーズした後
改めて俺の方を見ると両手を顔の前で合わせ
「すまん!俺も回復ポーション持ってきとらんかった・・・」
「そ・・・ん・・・な・・・」
「悪いが…セフィーが来るまで我慢してくれ」
アニーは背負っている大斧を抜き出し直ぐ様両腕で構えて言い放った。
「コイツは俺が引き受ける」
もう限界ギリギリなんだが・・・まぁ…敵を引き受けてくれるなら…い…良いか……。
「アンタこの街の者じゃないな?」
「あぁ」
「何しに来た?」
「教えて何になる?」
「確かに…聞いてもわからんと思う…ッ!」
アニーは地を蹴り魔者に向かって飛翔する
大斧を魔者の頭目掛けて振り下ろすも片手の鉤爪でガードされたが持ち前の筋力で押し切った。
だが魔者はアニーの力を後ろに受け流すように回避し、アニーが振り下ろした斧が地面に刺さるとボコボコと周囲の地面に複数の亀裂が入った。
「(そういえば、さっきの子は・・・?)」
俺は周囲を見回して助けた男の子がまだ残っていないか確かめたが、その子の姿は目視では
「(た・・・多分逃げれたんだな・・・良かった・・・)」
ふと、安心すると俺の意識は霧のように薄れて行った・・・・・・・。
「お前は筋力値が特筆していると見える」
「あぁ、戦士だからな」
「見れば分かる。俺が出会った戦士の中でも少しばかり上に位置しそうだと思った…つまり…」
「少し、力を入れてやる」
「!?」
魔者が一瞬にしてアニーの目の前に接近し鉤爪で胸を貫こうとするもアニーが左手に付けたバックラーでガードした。だが・・・!
「(な…なんだ…?お…重い…??)」
アニーは鉤爪の突き攻撃をバックラーで防いだ瞬間に魔者の力が自分と同程度かそれ以上だと感じ取った。
「ふんっっ!!!!」
アニーは腕に掛ける筋力を上げて突き攻撃をバックラーで跳ね返した。
攻撃を跳ね返された魔者は後方に宙返りしてから地面に着地すると、顔を上げアニーに向けて告げた。
「言っておくが、この程度の力は我々にとっては””普通””だぞ?」
「へへ…そりゃあ楽しい戦いになりそうだ」
アニーは再び大斧を構えて魔者に向かって言い放つ
「それで全力だったら、物足りないと思ってたんだよ…!」
「ククッ、強がりを…」
両者己の武器を構える。
先行して動いたのはアニーだ。
アニーは地面が割れる程の脚力で跳躍すると
空中で身体を回転させ遠心力で威力が上がった斧の一撃を魔者に食らわせるも
魔者は鉤爪で防ぐもアニーが力で押し切り片手のごと鉤爪を切断した。
「へぇ…強がりでもないみたいだな…」
魔者は一瞬にして手を再生させ、カチャカチャと鉤爪を鳴らした。
「お前、今ので全力か?」
「いーや、全然?」
「ククッさっきの勇者は期待はずれだったが…お前は幾分かマシそうだ」
「リクはお前なんか簡単に超えるさ」
「ククッ死んでるのにどうやって俺を超える?」
「リクは生きてる、気を失ってるだけだ」
「…あ、そういえば奴にも言うつもりだったが忘れていた。死んで先に逝ったお仲間の勇者に会えたら伝えてやるといいさ」
魔者は鉤爪を長い舌で舐めてから己の名前を名乗った
「我が名は【ディエイデン】魔王様に仕える者だ」
「だからリクは…死んでないって」
「じゃあ、こう言い変えよう、”お前が死んだ後、俺がトドメを指して送ったお仲間に会えたら”これでどうだ?」
「そうか・・・。じゃあせっかく名乗って貰ったし。お返しに、俺は【アニー】だ」
「覚えておくのに値する実力だったら覚えておこう」
「今の言葉、そっくりそのままお前に返してやるぜ」
「ククッ…ほざいてろ」
「へへっ…」
2人は笑った直後ほぼ同時に地を蹴り攻撃を仕掛けた。
戦士の大斧と魔者の鉤爪が衝突し火花が散る。
ピシピシッ・・・。
と、音を立てながら鉤爪にヒビが走る。
アニーはそのまま魔者が構えてる鉤爪を砕き、そのまま魔者の胴体に一撃を入れるべく、斧の持ち手に掛ける筋力を一気に上げた。
アニーの筋力により上昇した大斧から向けられる力にディエイデンの鉤爪は貯めきれず砕けた。
その瞬間、アニーは魔者の胴体諸共切断したと確信した。
「(馬鹿め、"筋力特筆"相手と分かっていながら真正面から殺るかよ)」
しかし、鉤爪を砕いた勢いに乗せて大斧を振り下ろしたが、その感触はまるで空気を切断しているかのように感じた。
大斧から出力された"衝撃の塊"は向かった先の地面を抉り、巨大な大穴が大地に形成された。
アニーが認識した頃には既にアニーから数メートル離れた先に魔者は移動していた。
「ソディラ」
数メートル離れた先から魔者はアニーへ鉤爪の尖端を指向させながら魔技名を呟いた。
その刹那、アニーは戦士の勘により魔者からまともに命中すれば即死級の攻撃魔法が放たれようとしている事を察知した。
だが、察知したは良いものの、アニーが大斧を構える反応速度より、魔者が鉤爪の先端から攻撃魔法を放つ速度の方が上回っていた。
死への黒き光はアニーの額に命中する寸前で何者かが放った蒼き光線により軌道がずれ、顔の真横を通り過ぎて行った。
「今のは……」
「ふぅ・・・間に合ったみたいね!」
ディエイデンが放った黒き光の直進を妨げた。蒼き光線を発射した人物は駆け付けたセフィーであった。
「次は女か」
ディエイデンは駆けつけたセフィーに早速"不可避の一撃"を与えようと片手を向ける。
しかし、片手を向けた先には既に女騎士の姿は無かった。
駆けつけたセフィーは周りを見渡し、地面に倒れているリクに気づくと、一瞬にしてリクの傍まで駆け寄っていたのだ。
「この女、なかなかにマシな俊敏性を持っているようだな。たかが『表』から転移したばかりの女騎士と侮っていたとはいえ、俺が反応出来んとは・・・・・・」
セフィーは気絶状態のリクの生死を確認すべく、膝をつきリクの首に手を触れた。
「うん、まだ息はある。ちょっと待ってなさいね。すぐアレを片づけて、治すから」
そう気を失ったままのリクに一言伝えると、セフィーは立ち上がる。
「助かったぜセフィー・・・」
「どういたしまして、アニーもこのまま休んでて、アナタとこの敵は相性が悪いわ」
「あぁ、違いねぇな」
「とりあえず、巻き込まれないようにリクの遺体を離れた場所まで運んて」
「いや、遺体言うな」
「あはは〜っ!じゃ、よろしくね〜」
「その必要はないぜ。アンタらはここで死ぬのだから」
アニーが倒れるリクの元へと動き出す直前、ディエイデンが再び攻撃魔法を発射しようと鉤爪の尖端をセフィーに向けた瞬間、ディエイデンの片腕が地面へと落下した 。
「あ?」
「仲間が瀕死なの、すぐ終わらせて貰うぞ」
「な…?」
「(こいつ、さっきより速く動けている………!?)」
セフィーはディエイデンの腕を切断した剣を頭上へと振り上げると剣の周りに青い光が生成された。
その青い光は、セフィーが剣を振り下ろした瞬間、剣を覆っていた青い光は前方向に放出され、前方にある障害物は全て青い光に飲まれた。




