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配信49枠目 帰り道で拾ってみた。


「悪い。待たせちゃった」


 ド平日の早朝。あっくんにて、予め伝えられていた時刻にそこそこの余裕を持って来たのだが、あっくんの方が先に着いていたようだ。バカ気まずくてワロタ。例え間に合ってても、待たせたって思うと、なんか申し訳ないよね。


「それにしても、相変わらずの怪しさだね」


「うん。そんなニッコリ笑顔で言う事じゃないよね」


 あまりの満面の笑みで、自分が不審者である事に疑問を持てなくなって来た。思わず、俺も笑顔見せちゃった笑。もしかしたら、俺は生まれた時から不審者だったのかも知れない。いや、きっとそうに違いない。


「うーん。時間に余裕は有るけど、此処に居ても仕方ないし、行こうか」


「そういや、現地集合じゃダメだったのか?」


「いや?全然良かったけど、ソラちゃんの性格的に僕が着いてた方が良いかなって」


「だからこんな時間に…」


「だって、予定がツメツメなんだもん!」


———

——


「それで。今日、ソラちゃんがする事だけど」


「うん」


「先ずは契約。その後に、台本の読み合わせだね」


 これは、前もって聞いていた通りだな。にしても、変な体制で話してんな俺等。俺がタクシーの座席に座って、その隣に座ってるあっくんが俺の髪をセットしている。うん。どう言う状況?


「…読み合わせと言いますと?」


「実際に撮影する前のリハーサルの前に、役者皆で台本を読み合うの。声優みたいな感じでね。まぁ、顔合わせみたいなものだよ」


「ほー」


 こんな状況でも話は進むんだよなぁ…真面目な話をしてる筈なのに気が緩みまくるわ。何も頭に入ってこねぇ。俺バカだからわかんねぇけどよ!バカだからわかんねぇわ!


「一応、Pも監督も。偉い人達が集まったりするから手を抜かない様にね。まぁ、期待はされてないから然程変わらないと思うけど」


「おぉ。抉るなぁ」


 うっ、心に甚大なダメージが。まぁ、期待されてるなんて、初めから思ってないから全然ダメージなんて無いが。例え、俺の所為で駄作になったとしても、俺を起用した方が悪いって思えば、メンタルは安定するだろ〜?無論、心は痛むが。


「でも、監督の要望で、監督とだけは先に顔合わせするから、そこだけは安心してね」


「…それは安心出来るのか?」


 コレは完全に持論だが「安心して」と言われた事象の内、8割は安心出来ない。「安心して」と言う言葉は「押すなよ!絶対に押すなよ!」くらいの盛大な前振りだと思ってる。絶対に安心してなるものか。


「因みに、撮影は来月くらいを予定してるよ。突然の台本変更とかで、撮影時期が前後する事もあるけどね。基本的には稀だよ」


「詳しいな。あっくんスタイリストでしょ。何でそんな詳しいのさ」


「……監督の所為で何回か出演させられたから…」


「うん。安心出来ない」


 とりあえず、監督がヤバそうな事だけは理解した。ホラ、安心なんて出来ないんじゃん。


———

——


「次、此処にお願いね」


「…コレで良いですかね」


「……うん。はい。問題無いです。暫くの間宜しく」


 割印とか人生初で草。本当に存在する文化だったんだと言うお気持ち。因みに、今、俺と契約書を交わした弟似の超弩級白髪金眼イケメンは、ソラさんとレイさんの所属している芸能プロダクションの社長さんです。ヒョ、ヒョエ〜!


 聞いたところによれば、この社長さん。身長が高いし、レイさんのご兄弟だとか。その所為で、弟とも激似と言う話。その上、身長も高い。多分、弟が成長したらこんな感じになるんだろうな。身長高いし。まるで、未来予想図でも見てる気分だ。身長高いな。


「それにしても良かったんですか?私と契約なんてして」


「え?嗚呼。そんな事?全然構わないよ。天羽…嗚呼、知ってるかも知れないけど、監督の事ね。彼には借りがあるし、君にウチの役者そっくりの見た目で変な事される前に拘そ……いや、契約出来て良かった。私達を繋いだこの縁に乾杯」


 今なんか聞こえたな。拘束って?まぁ…そりゃそうか。契約書には「問題起こさないでね。起こしたら、貴方を債務不履行で損害賠償を請求します!理由は勿論お分かりですね!」って、とんでもなく念入りに書いてたしな。何か悲しい。


「コレで貴方は今日からウチの役者です。問題起こさないでね」


「大丈夫です。こう見えて、ネットで10年近く生きてきた人ですよ。問題なんて起こしませんよ」


「ネットで10年近くイキってきた……ねぇ…成程」


「誤解です」


 誰がイキってきただ。誰が。寧ろ、常に炎上しまくっててイキるどころか、意気消沈だわ。絶対、視聴者の中に放火魔いるよな。放火魔ハンパないって!こんな炎上しぃひんもん!普通!


「とりあえず、コレである程度の対策が出来ましたね」


「…えぇ。まぁ。心配は底を尽きませんけど」


「…心配せずとも大丈夫ですよ。改めて、コレから宜しくお願いします」


 …何だか、レイさんとは似てないな。寧ろ、この宥める様な笑い方は弟とそっくりだ。多分、レイさんよりも弟の方が遥かに兄弟らしく見られるだろう。……まぁ、だからなんだと言う事だが。


「こちらこそ。宜しくお願いします」


 コレにて、俺は役者と言う肩書を手に入れました。俺が専属マネジメント契約を交わした理由は、まぁ、言ってしまえばただの言い訳作りです。その内分かる時が来ます。勿論、来ない方がいいけど。


———

——


「うーん。とりあえずはコレでだな」


「監督。連れて来たよ」


「おう。じゃ、宜しく。…はいはい。ご苦労さん。悪いな。手駒みたいに扱っちゃって」


 先程まで話していたスタッフを払い、白髪混じりの中年男性はコチラに顔を向ける。少し…いや、かなり胡散臭い。が、しかし。何処か貫禄を感じる見た目ではある。


「で?君がソラくんだっけ?名前まで似てるってややこしいなぁ」


「いえ…初めまして。そうは言っても旧姓ですから。今は違いますよ」


「ほう…ふむ」


「……どうかしました?」


 ジロジロと徐に俺を観察する監督。こうも露骨に見られるとゾワゾワするからか、気持ちの良いものでは無いな。あっくんに前髪をセットされたのもあって、色々と恥ずい。俺を見るなァ!


「うーん。お前。俺に対して敬語禁止。後、媚びるのも禁止。お前は俺を10年来の友達の様に扱う事。親友じゃなくて友達な」


 うわ。何だその条件。あっくん…はもう居ないか。仕事あるって言ってたしな。つまり、助け舟は無いと。とりあえず、表情からしてネタで言ってる訳では無さそうだが…ふむ。


「別に良いけど、理由は?」


 とりあえず、ノッてみるか。人生ノリノリで行こうってどっかのバカも言ってた。イェイ!イェイ!人生最高人生最高!お前も人生最高と叫びなさい!……ふぅ…先生。俺死にたいんですよ。


「おうおう。悪くないな。お前アリだ。役者経験は?」


 何を持ってアリなんだよ。どこ見て判断したんだよ。俺のツラか?それとも、ただ普通に勘なだけか?後、質問に質問で返す(ゲフンゲフン。


「お遊びを含むなら3年間」


「そうか。才能無さそうだな」


「遠慮とかって…」


 まぁ、元より才能があるとは一度も思って無いけども。それにしても、どこで判断してるんだ?今までの会話に判断出来る要素はあったか?幾ら、思い返しても見当たらないが…


「でも、人よりも圧倒的な適応力があるな」


「まぁ…はい……ええ…?」


「後、圧倒的に自分を見せない。本音を吐かない。仮面を二つ以上被り、初対面には一枚目を破って安心させるやり方が多い。感情が乏しく、露わにしない。そう言う奴は嫌いじゃない。感情の扱い方を熟知してるからな」


「初対面にボロクソ言われて横転」


「それだよ。普通、目上の人間に硬くするなと言われて、ここまで柔らかくなる奴がいるか?俺の機嫌を読んで何処までふざけられるか考えてるだろ。良いな。そういう奴は好きだ」


 ごめん。合ってるのか否かが分からなくて、監督が凄い人なのか痛い人なのかが分からん。「お前の性格ってこうだよな」って言われて「はいそうです」って言える程、自分の事知らないんですけど?


「…お褒めに預かり光栄ですね」


「敬語禁止な」


「ダル…」


 1つ言える事があるとすれば、このおっさんからは、凄く面倒臭い雰囲気を感じる。無精髭とか、頭に掛けられたオシャレサングラスとか、見た目からしても絵に描いた様な胡散臭さだしな。無論、どこぞかの知り合いを装ってきたカフェのマスター程では無いが。


「さて。そろそろ集まってくる頃か。おい、パンピー。台本は貰ってるか?」


「あっく…『ノア』に出演の話を伝えられた時に一通りは読んだけど、貰ってはない」


 危ない危ない。あっくん呼びじゃ監督には伝わんないよ。ちゃんとスタイリストとしての活動名を伝えなきゃね。とは言え、ノアだったかどうかはうる覚え。


 あっ、うる覚えって言うのは、うろ覚えをうろ覚えしているって言うネタであって、別にうろ覚えをうる覚えと覚えていた訳では無いので、そこの辺り勘違いされない様よろしくおねがいしますね。(早口)


「じゃあ、コレやるよ。俺は無くても困らん」


「……急に投げないでくれませんかね?」


「ナイスキャッチ。後、敬語禁止な」


「ウッザ…」


 それにしても…うーん。内容が結構変わってるな。その上、ボリュームもかなり増えてる。あの時はこれの何倍も分厚いとは言え、ラストまで入ってたし、アレは初期構想の代物だったのか?


「嗚呼、一応伝えておくが、本読みでお前に忖度とかはしないからな。足りないと思えばバシバシ指導するからよろしく」


「…当然。望むところですよ」


「ふっ……ガキが。敬語禁止な」


「くたばれ」


———

——


 さて、演出家の人達とかが帰ってきたら読み合わせが始まる訳だ。役者さんも増えてきて…まぁ…ね?その…うん。視線が凄い。メチャクチャ見られてる。そんなに目立つか?俺。


 まぁ!目立つか!(主演の人気俳優と容姿が同じ)


「顔色暗いぞ先生」


 む、この声は…弟。では無いか、今頃は学校に行ってるだろ?此処に居る訳がないし、こんな喋り方は先ずしない。となると、残る可能性は1つだな。


「嗚呼、レイさん。お久しぶりです」


「いーよいーよ。そんな硬くなんなくて。今日の俺は部外者だし」


 そうか。そうだよな。レイさんはこのドラマに出演しないし。…じゃあ、何で此処に居るんだよ。え?ま、まぁ?美形が視界の中に増える分には嬉しいし?何の問題も無いけど?


「レイさん。勝手にあちこち動き回らないでください…あっ」


「ソラさんも。お久しぶりです」


「いえ、先生も。お久しぶりです」


 うん。いつ見ても俺。あまりにも同じ容姿過ぎて、超難関校の入試レベルで難しい間違い探ししてる気分だ。もし、俺にニキビが出来たら、ソラさんにも出来るのかな。何かの強制力とかで。


「…念の為に聞きますけど、先輩と呼んだ方が良いですか?」


「え〜、ど〜しよっかなぁ〜」


「大丈夫ですよ。どうせ、ウチの事務所は上下関係が崩壊してるので」


「それはそれで大問題な気が…」


 そもそも、上下関係が崩壊してるってどう言う事だよ。イメージとしては、ロリがおっさんを従えてるみたいな感じか?いや、違うか。逆転なら兎も角、崩壊ってちょっと想像つかんな。


「それで?先生は何を悩んでるんだ?」


「…特に?強いて言うなら、キャラの解釈?」


「嗚呼、はいはい。分かる分かる。後々、変な情報が出て思ってた人と、全くの正反対だったなんて事ある」


 他の演者達の挨拶を一身に受けるソラさんを眺めながら、レイさんと2人で会話は進む。俺と違って人望あるなぁ…俺とソラさんの違いってなんだろうか?コミュ力?人格?カリスマ性?無限に思い付いてワロタ。


「とは言え、演出や監督はその辺りも全部分かってるから、ちゃんと指摘された通りにしてたら問題無いよ。それに、今回の裏方は優秀だし、多少下手しても見れるくらいにはしてくれる」


 有難いお言葉の様で、遠回りに「お前には期待してない」と言われてる様な感覚。いや、レイさんの性格的に、そう言う意図が込められて無いのは、嫌って程分かってるんだけどね。どーせ、俺の受け取り方が悪いんですよサーセン。


「ですかね」


「ですです」


「…それで。レイさんは挨拶して来ないんですか?」


「違う。されないんだよ畜生!コイツら全力で潰したろっかな。Pと監督とズブズブの俺にご挨拶の1つも無しとは…舐めた態度を…」


 …聞きたくない事を聞いてしまった。どうしようか。物凄く記憶を消したい。この人、さては、成功はしているが、尊敬とかは出来ないタイプの人だな?いや、俺の周りの配信者は全員そうだったか。何故だ…?


「おっ。先生に挨拶したそうな奴が来たぞ」


「…いや、レイさんに挨拶しに来たんだと思いますけど」


「あはは。それならこっちからお断りだわ」


 なんなんだこの人…さっきと真逆のこと言ってる。恐ろし過ぎるだろ。と、そんな事を話してたら、もうその渦中の人が目の前に。ふむ。遠目でも分かってたがイケメンだな。優男って感じがする。


「やあ。初めて見る顔だね。君はこう言う現場は初めてかい?」


「ほら。言われてるぞ」


「…えぇ、そうですね。一応、初の現場って事になりますね」


「……驚いた。声までそっくりだ」


 分かる。1日くらいは入れ替わってても問題無い説ある。…それにしても、マジで俺に用があったのか。俺よりも目立つ人が隣で屯ってる筈なんですけどね。


「私には何の用事で?」


「いや、ただどんなものか見に来ただけだよ」


「…それで。見たいモノは見れました?」


「…ふっ……さぁ?それは君次第だ。キリッ」


 去ってしまった。……今、最後に「キリッ」って言った?成程。彼は厨二病患者か。中々の難病を患っている様で、それはそれはご愁傷様だ。俺も罹患していたから分かる、分かるよ。中々治らないよな。ソレ。


「分かるでしょ?お断りの理由」


「…まぁ、何と無く」


「見渡せば分かる。Pと監督の趣味全開の役者陣。例えば、さっきのクリーム色マッシュは厨二病だし、あそこの藍色ロングは腐女子。その隣の青プリンショートは陰謀論者。そんなのばっかり」


 草。流石に個性が豊か過ぎるだろ。特に陰謀論者ってなんだよ。1人だけベクトルが違うんだけど?てか、レイさん詳し過ぎるだろ。なんでそこまで熟知してるんだよ。


「詳し過ぎて怖い」


「だってアイツ等何一つ隠さないんだよ!それどころか、メチャクチャ勧誘してくるんだぞ!勧誘しても俺は腐女子にはなれない!腐男子だろ!」


 違うそうじゃない。ツッコミを入れる場所はそこじゃ無いんだ…!もっとあるだろう!ホラ!いや…なんか多過ぎて逆に分かんないな。何処にツッコミを入れるべきなんだコレ…?


「兎に角、俺はアイツ等と仲良く出来ない。こっちからお断り」


「心中お察しします…」


「……とは言え、全員が役者としては天才的だから飲まれない様にな。さっきも厨二ながらに牽制してきた訳だし」


「…分かってますよ」


 その時、ソラさんが戻って来た。部屋には監督や演出家の人達がそれぞれ台本を片手に待機している。


「さて、監督達が帰ってきました。そろそろ始まりますよ」


「頑張れコールしてあげよっか?」


「貴方は邪魔なんで帰って下さい」


 辛辣で草。メチャクチャ温厚そうな人が辛辣な態度取る相手。なんかこう言う関係って萌えるよね。コレがエモーショナルか…!俗に言うエモい。


「おい。パンピー。ちょっとこっち来い」


「…?はい」


———

——


「……此処は?…」


 本読みが始まる。プロローグの事故シーンはセリフが1つも無いのでぶっ飛ばされました。悲しいね。ちな、今は本編入って、記憶を失ったまま病室で目を覚ますシーンだ。


「…あ…えっと……何だっけ…」


 実力派と言うだけは有る。まるで実際に記憶を失ったかの様に、思い出せない事に困惑する様な、何も分からない事に恐怖する様な表情。この部屋の空気感も相まって、引き込まれるものがある。


 扉をノックされ、看護師が部屋に入ってくる。そして、もうすぐ俺の出番だ。


「あっ、目を覚ましました?」


「……えーっと?」


 記憶の無い主人公は、混乱が残っており、今の状況が上手く理解出来ない。…と、此処で俺のセリフが入る訳だ。


 それと同時に、俺に多くの視線が向く。その視線からは明らかに良い感情を感じない。そりゃそうだ。側から見た俺はコネで出演している一般人。期待もされてなければ、敵視されて然るべきだ。


 そんな中。先程、監督に言われた言葉が、俺の頭を隅から隅まで駆け巡る。


『演技は基本的に感情演技だ。感情が篭っていれば、演技力が無くても目は当てられる。役者は役に入り込み、演技にキャラの感情を込める。だが、お前にそれは必要無い。役に入ろうとするな。お前を曝け出せ』


 何故、そんなオーダーを出したのかは、台本のセリフを見て分かった。このキャラの性格は俺と似ている。口調や、行動原理は全く違うが、性格だけはそっくりだ。


「大丈夫。落ち着いて」


 文句のつけどころがない微笑み。誰よりも優しそうで無機質な声。そして、ハイライトの無い暗い瞳。台本の何処にも、そんな情景は書かれていない。だが、俺がこのキャラと同じ立場に立ったら、きっとこうなる。


 ラストを知った状態でこの台本を読むと、隠された真実に気付くことが出来る。偶然か、はたまた仕込みか。奇しくも、このキャラは俺とそっくりの性格をしていると言える。


 だから、オーダーの意味は簡単。


「お前は、わざわざ役に入らなくてもコイツが考えている事が分かる」


———

——


 監督side。


 初めからパンピーに期待していたとは言わない。寧ろ、期待どころか心配が勝っていた。だからこそ、俺は問題の無い様にルートを″2つ″練った。だが、しかし。これは——


 期待以上だ。


 主人公マナカ。別人格のアラタ。この2人は多重人格では無い。元は同じ人格。最悪とは言い切れない家庭環境の中、平穏に生きる為に創り出した理想の自分がアラタだ。


 当初の予定では、ソラに一人二役させる予定だった。だが、設定を練る内に、2人は別人で有る事を強調するべきだ。と、俺は結論付けた。だからこそ、そこには適当な役者をキャスティングするつもりだった。


 そんな時、ソラが自分と同じ容姿の人が居ると言う話をして来た。聞けば、それはノアの幼馴染だとか。そこは正直どうでも良かったが、ソイツの詳細が判明していると言うのは明らかに追い風だった。


 そして、ノアに話を聞いて分かった事。ソイツはマナカ同様、劣悪な環境で育っており、その性格はマナカそっくり。だが、中学時代から性格が変わり、それまた、アラタそっくり。


 恐ろしいくらいにハマり役。コイツは使える。キャラの心情はコイツ自身が1番理解出来るし、演技力は今回の制作チームなら、編集で幾らでも誤魔化しようがある。


 映画やドラマに於いて、画面の先に迫力をもたらすのは演技力では無く、感情だ。感情が全身に乗った演技は、画面の前の人間にあたかもそのキャラが存在しているかの様に錯覚させる。


 コイツ以上にアラタを演じられる人間は居ない。


「忘れないでね。マナカ」


 俺は天才だった。

 

———

——


 先生side。


「パンピー。素晴らしい。予想以上だ」


「そりゃ結構」


「やはり惜しいな。後、数年早ければ」


「まだ言うか」


 例え、後数年早くても俺は役者にはなれない。今回の事で心から良く分かった。俺は役者には向いてなさ過ぎる。


 感情を込めると言っても、今日の俺の演技に感情は入ってなかった。入っていたとして微量。ただ、雰囲気で誤魔化しただけだ。ソラさんを見てたら分かる。俺はアレにはなれない。


「ただ合わせただけで、俺に才能は無いよ。確信した」


「何言ってんだ。主人公が目立つ様にするのは当然だろ。特に、この2人の殆どを対比として描いている。マナカは感情豊かに、アラタは感情乏しくな。元から比べようがないんだよ。それに、アラタは序盤こそ出番は多いが、すぐに出番は無くなる」


「知ってるよ」


 そもそも、キャラの設定的に最後まで生き残るとも思えないからな。途中退場は予想の範疇だ。寧ろ、この設定で退場しない訳がない。


「お前はただ土壇場で目立てばそれで良い。その時にどれだけ感情込めれるかだ。今日はお疲れさん。数週間もしたら撮影だ。しっかりな」


「当然」


「……そういや、お前。パンピーの癖に緊張とかしなかったのか?


「……まぁ。ガラの悪いヤンキー20人くらいの中に、文字通り放り込まれた時に比べれば?」


「さてはパンピーじゃねぇな。お前」


———

——


「…ふぅ…安心感」


 漸く前髪を下ろせる。前髪上げてたら視野が広くてなって、脳がしんどいんだよな。記憶力と視力が良過ぎる弊害。べ、別に無意味に前髪を伸ばしてる訳じゃ無いんだからねっ!


 ……アラタとか言うキャラ。元の台本と比べて、余りに性格が変わり過ぎている気がする。元の台本で、アラタは感情の無いマシンの様に書かれていた。


 記憶のないマナカを助ける為、機械的に助言を口にする。だが、マナカを見て感情が芽生え、芽生えたばかりの感情を露わにしながら消える…つまり死ぬ。それが元のアラタと言うキャラだ。


 だが、今の台本のアラタは、安心感を与える笑みを浮かべ、頼れる存在かの様な空気を纏い、命令を無視するマナカに焦りを見せる様な人間味。


 …まるで、俺の理想の人間像でも見ている気分だ。そして、何よりも、あの時の監督の言葉。まるで、初対面の俺がアラタと同じ性格でもしてる事を確信していたかの様な言い方。


 この台本を書いたのはあの監督自身だ。初対面にしては明らかにおかしい俺に対する理解度。俺の性格を把握する速度。…さては、あの監督。俺の事を最初から知ってたな。それか、誰かから聞いたか。


 おかしい。最近、あまりにも俺の情報が漏れ過ぎている。ゴミ箱の社長。見覚えの無い胡散臭いマスター。そして、監督。


 俺の事を言い広めている奴が居る…?


「うげ…」


 雨じゃん。梅雨終わったんじゃ無かったのかよ…しかも、ドンドン強くなって来てるし、家までまだまだ距離あるんですけど?走っても10分は掛かるんですけど?


 クソ!頭が痛い!結構大粒だな雨ェ!しかも、量ェ!誰か俺の頭上でプールひっくり返してる?何で今日に限ってフードないんだよ!いつも有るじゃん!何で今日だけ!


「嗚呼!……もう!」


 歩いても痛いのに走っても痛い。詰んでる。でも、風邪は引きたくないからダッシュ。マジでクソ痛い。これ以上に色々とシリアスな事考えながら帰りたかったのに!ムードが台無しだぜ!


「ん?」


 何か倒れてる人が居る。いや、倒れてると言うか、塀にもたれ掛かってるというか。え?どうしてこんな雨の中倒れてるんですか?呑み倒れですか?こんな夕方から?


「すみませーん。大丈夫ですか?」


「………」


 反応が無い。まるでしかば…いや、これ以上はアカン。身内以外に言う事じゃない。意識が無いのは分かるが、呼吸はどうだ?胸は動いてるし、息はありそうだな。となると、心臓も問題無しか。とりあえず、救急車をだな。


 声を掛けた手前、放置すると司法が俺を3枚に下ろしやがる。誰がまな板の上の鯛だ。舐めた口聞きやがって。全く、コレだから司法は嫌いなんだよ。やれやれ。


「とは言え、顔色はそう悪くなさ……そ…え?」


 は?いやいや、待て待て。待ってくれよ…。余りの衝撃に脳内でエンディング流れ出した。俺の知らないエンディング曲が流れてて草。多分、俺の見えないところでクレジットも流れ出してる。このままだとエンディングに入っちゃう。入っちゃうよ?


「…え……な…ん……え?」


 雨に濡れてしっとりとした黒い髪。しかし、その根本は真っ白で、まつ毛や眉毛はまばらに白くなっている。年老いて白髪に?否。グレーを挟まずに頭真っ白になる訳がない。


 明らかに大きな体躯。塀にもたれ掛かり、その正確な身長は分からないが、180は超えている。そして、見覚えのある端正な顔付き。意識を失っていても残っている気品。そして、理由は分からないが頭に巻かれた包帯。


「……なんで此処に」


 帰り道で義父を拾ってしまった。


———

——


465 風邪引けば名無し ID:osMmgmPx

ファ?!

————————————————————————

ダークナイト何某@超弩級究極完全暇人

————————————————————————

新しい同居人拾いましたり




は?????

————————————————————————


466 風邪引けば名無し ID:IgJopMwn

流石にワロタ


467 風邪引けば名無し ID:IUgDTJxM

拾いましたり←これ好き

敵将討ち取ったのかよ。


468 風邪引けば名無し ID:YmGoMtxh

もう少し情報をだな…


469 風邪引けば名無し ID:ODGoKsxj

冷やし中華始めましたみたいで好きです

付き合って下さい(ド直球)


470 風邪引けば名無し ID:fDjYjsxK

お?遂になのちゃんと入籍したか?


471 風邪引けば名無し ID:OmTyjxSn

いや、過程をすっ飛ばし過ぎで草


472 風邪引けば名無し ID:AMxSymXo

もっと健全にお付き合いから始めろ

ついでに、その様子を配信しろ


473 風邪引けば名無し ID:YmEstFjQ

???「お前の事が好きだったんだよ!(唐突)」




その後、二人は幸せなキスをして終了。


474 風邪引けば名無し ID:VplmtXvJ

うーん。コレは純愛


475 風邪引けば名無し ID:VJxgoJyT

きたない


476 風邪引けば名無し ID:EjWmPyJw

厄ネキ。解説


477 風邪引けば名無し ID:yDgRwvJx

普段ネタに走る癖して今回は走ってない。

また、フリック入力をミスっている。

(過去10年近くで一度も無かった)

この事から、かなり焦っていると予想。

ワイに言わせれば、分かり易過ぎて欠伸出るわ。


478 風邪引けば名無し ID:RjyJsyYn

ナイス。厄介ネキニキ。帰って良いぞ


479 風邪引けば名無し ID:DyGvSxtw

厄ネキ。帰国の準備をしろ


480 風邪引けば名無し ID:yDgRwvJx

うるせぇな!!!!!れ!!!


481 風邪引けば名無し ID:iJnTmWlm

とりあえず

楽しそうな事になってるのは分かった


482 風邪引けば名無し ID:DxSljWtw

コレでこそ先生や

最近は何もやらかしてなかったから心配してた


483 風邪引けば名無し ID:oNgTwTyd

やらかさないと心配されるのか…

……まぁ、せやな!(納得)


484 風邪引けば名無し ID:AyMpcnpv

周りがイカれ過ぎてる所為で

そこまでイカれてると思われてない男


485 風邪引けば名無し ID:cDpvMwgY

言うて、どっこいどっこいやけどな


486 風邪引けば名無し ID:NgrdyMxt

そもそも、イカれてないと思われてるか…?


487 風邪引けば名無し ID:FtPvjTxt

ほ、ほら、他のオモシレー奴等に比べたら…ね?


488 風邪引けば名無し ID:EsVjToXm

そんな、天元突破のやべー奴等と比べられてもなぁ…




 気が付けばクリスマスイブ。あまりにも遅くなってしまいました。非常に申し訳ありません。


 遅くなった理由としては、風邪を引いていたのもそうなのですが、一度完成したのを1から書き直していた事もあります。更に、趣味の方にも色々と浮気してたりもました。一体、私は何をやっているんでしょうか。


 次回は今回程遅くならない思います。待たせてしまって申し訳ありません。


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