サタンちゃまと剣山の大蛇1
翌朝になって俺は早速聖女さまに昨日の友達の件を伝えた。
「事情は分かったけど、使えない人員を養えるほどわたくしのチームは裕福じゃないのよ」
思っていた通り聖女さまの答えは否だ。
しかし政府からたんまり報酬貰っている癖に、良くその口で言えたなと俺は心中で呟いた。
しかしまぁ、幼女の俺は口を半開きにして馬鹿ツラで見あげた。
要は余りにも賢いより、馬鹿と思われていた方が警戒されないで済むからお得なのだ。
しかし困った。親友の松川がボッチになって困っているのを見て見ぬ振りは出来ないよ。
人を見下したり自慢話ばかりするちょっと軽薄な奴だけど、アレでも俺の唯一の親友だからな。
『何故護るって? そんなことは簡単なことさ。サタンはミーのトモダチだから困った時は助けるのは当然じゃないか?』
「にゃっ!」
ふと脳裏に浮かんだ俺に語り掛ける軽い口調の機械音。全く心当たりがないけど、何故か懐かしい気持ちで一杯になって俺の眼頭が熱くなった。
俺は手の甲で目をゴシゴシと擦ると、もう一度聖女さまにお願いした。
「聖女さまっあと二つのクエスト終了まで友達を保護して欲しいのにゃっ!」
「……友達にねぇ、まぁ、彼がどんな人物なのか会って見ないと判断しかねますからいいでしょう」
『やった!』聖女さまが折れた。
「ありがとうにゃっ聖女さまっ!あとで松川と連絡するにゃ」
「ああ、言い忘れましたわ。もし彼を受け入れた時はサタンちゃまのクエスト報酬はナシよ」
「にゃっ……」
やはりタダでは済まなかった。まぁなんらかのペナルティーは覚悟していたから、この程度で済んだと去って行く聖女さまの背中を見つめながら、前向きに考えることにした。
しかし、俺には本当のトモダチってのが果たしているのだろうか……。
□ □ □
翌朝水曜日に、沖縄から徳島県を目指して俺たちを乗せたエアカー三台が出発した。
聖女さまが言うにはあと一週間しか猶予が無いらしい。だから残り五日だ。しかも、今日は丸々移動で時間を費やすから新たなクエストは明日からだ。
「ねぇ、あの怪しい行商人が言っていた。強者を探せってどこにいるかヒント位欲しいよねー」
ベッドの上で寝そべりながらメリーが言った。
「そうね。彼がどこまで知っているか分かりませんが……残り二つのクエストで新たな仲間と出会えるかも知れませんね」
珍しく聖女さまかが会話に割って入った。
「出来ればそろそろイケメンが仲間になんないかなー?」
「にゃっ!」
天井を見ながらメリーが足をブラブラさせた。
しかし忘れていた。メリーは普通に男子と恋をしたい年頃な女の子なんだ。
「なによちびっ子……」
上半身を起こしたメリーが不満そうに俺を睨んできた。『にゃん』と一吹きしただけで思っていることに気づくとは、全くカンの鋭い女だ。
「メ、メリーは勇者ガレオみたいにゃのが好みにゃのか?」
とっさに思い浮かんだ軽薄勇者の名だ。しかしその名は不味かったか、聞いた途端にメリーが不機嫌そうに口を尖らせた。
「あんな女垂らしのクソヤローなんか好みじゃねーってのっ!あたしは単に有名な勇者チームだから入っただけでなんも関係してねーからな!」
「にゃっ!」
そう言ってメリーはソッポ向いた。まぁ、そこまでボロくそ否定しなくても……。
「しかし、真なる勇者チームに対抗する新たな仲間を加えるとなるとやはり……英雄クラスの魔法使いか凄腕の騎士か……」
「えーっあたしじゃ役不足ですか聖女様ァァ……?」
「ええそうよ。貴女はもう少し修行して強くなる努力が必要ね」
「そ、そんなぁ〜」
ハッキリ本人に言ってあげる。優しくも厳しい聖女さまがメリーの左肩に触れた。
「ところで仲間と言えば、サタンちゃまのお友達について詳しく聞きたいわね」
「なによ聖女様……ちびっ子の友達なんて……てかアンタに友達いたの?」
『にゃっ!』ずいぶんと失礼な赤毛のツインテールが腰を屈めて俺に指差した。しかもそんなに目を丸くして驚くことかい?
指摘した相手は一秒も気にしないが、言われた本人はこれから友達と言うワードを目にする度に思い出し苦しむんだぞ。
「で、ソイツどんな奴なの?」
「にゃ……べ、別にと、特徴のない男にゃ……」
「モブ風情か……」
「にゃっ!」
異世界人のお前が何故そのネットスラング知ってんだ? 思うに俺は、メリーに不必要な日本語を教えている存在がいると思った。
「しっかしウチのパーティーに一般人が加入する枠はないのよ」
「そんにゃ冷たいにゃメリー」
「抱きつくな子供っ!ダメったら駄目!」
『にゃっ!』無下に引き剥がされた。メリーには俺の可愛いが通用しないとはな……。
「ちょっとメリー」
「ハイッ!な、なんでしょう聖女様……」
見かねた聖女さまに呼び止められたメリーは、柱みたいに硬直した。
「とりあえず問題ないから、サタンちゃまのお友達を受け入れるわ」
「本気で言ってんの?」
「ええ、もし彼が良からぬことを考えたとしても、頼もしい仲間を目の前にして果たして出来るかしら?」
「確かに……あたしが目を光らせている限り妙なことは出来ないわね……」
『にゃっ!』自意識過剰の自信家ツインテールに一言。少なくとも聖女さまが言った頼もしい仲間にはアンタは入ってないよ。
「とにかく彼を受け入れるのは残りクエスト二つだけの限定期間よ。別に戦力外でもお客様扱いしてれば問題ないわ。それにもし、露頭に迷った少年の受け入れを拒否したと悪評されたらそっちの方がリスクよ」
「確かに……」
聖女さまの言うお客様扱いとは、仕事させずに見学させると言う意味。そして受け入れを拒否した方のリスクまで考えるとは流石聖女さまだ。
まぁ、悪く言えば合理主義者。
「そう言うことでサタンちゃまはお友達と連絡して合流場所を決めるように」
「分かったにゃ」
聖女さまは専用ベッドに寝転がると『せっかくサガネが運転しているのだから、その間に身体を休ませるように』と言ってカーテンを閉めた。
リーダーが休めと言って貰えると下っ端は気を使わずに助かる。
俺とメリーは目を合わせると素直にベッドに潜り込んだ。




