サタンちゃまと新たなクエスト
下山して正門まで戻ると聖女さまが警備兵からたこ焼き五人分を手渡された。しかし彼女は差し出し人も聞かずにたこ焼き1パックづつ皆に配った。
受け取るとすでに冷めていた。
聖女さまは普通誰の手土産かと預かった警備兵に聞くものだけど、それはしなかった。それは、差し出し主があの怪しいたこ焼き屋とピンとキタからだろう。
よほどのアホでない限りすぐに分かる。
「ちょっと一体誰よたこ焼きなんか置いて行ったのは?」
一人だけ居た。
メリーだけ分からないらしい。いや、冗談と言ってくれ……。
しかし五人分ってまるで、谷川シェフが仲間になったことを現場で見ていたとしか思えないな。
やっぱりストーカーか……謎が深まるばかりだ。
「たこ焼きと言えばあの、たこ焼きストーカーが岡山までついて来たは驚いたわね。もうドン引きよ」
「にゃっ……」
メリーさんが手にしているのがそのストーカーが作ったたこ焼きですよ。
もうボケてる振りして本気だからアホのメリーは恐ろしい。
「なぁさっきからたこ焼き屋って知り合いか?」
事情を知らない谷川シェフが聞いてきた。
「ねぇ聞いてよ。そのたこ焼き屋ってこの前のクエストからあたしたちをつけ狙うストーカーなのよ」
「へ〜でっ、なにか実害はあったか?」
「…………特に無いわね……それに今日なんかタダでたこ焼きくれた……」
メリーは今日貰ったたこ焼きを指折り数えた。
「だったら別に気にすることねーんじゃないか?」
「そうだけど、気になるでしょ?」
「なら次に会った時本人に付きまとう訳を聞けよ」
「……確かにそうね……次会った時捕まえてみるわ……」
どうして考えがそうなる。平和的に話し合えばいいだろう。
「お仕事お疲れ様です聖女様」
サガネさんがお辞儀して出むかえてくれた。まぁ彼女は主人しか見てないけどな。
するとサガネさんと谷川シェフの目が合った。
「あら、聖女様。この方は確か……」
「丁度良かった。紹介するわ。今日からあたくしたちの仲間に加わった谷川様よ」
「先日はお世話になりました。これからは仲間としてよろしくお願いいたします」
サガネさんは丁寧にお辞儀した。
『…………』ずいぶんと俺との対応が違うな。やっぱり彼女に嫌われているのかなぁ……俺。
気を取り直して俺たちは国会議事堂に戻った。
◇ ◇ ◇
「お勤めご苦労様です」
議事堂正門のセキュリティチェックを受け中に入ると、異世界対策本部広報の朱雀さんが議事堂エントランスで出むかえてくれた。
相変わらずボーイッシュ美人だ。
「どうぞこちらへ」
いつもの会議室に俺たちは案内された。
「凄えなっ国の中枢だぜ!」
「へへ〜ん♬ でしょっ?」
辺りをキョロキョロして興奮する谷川シェフにメリーが得意気に答えた。
お前はほぼなにもしてないだろ。鼻先をあげるな。
俺たちは席に座った。
相変わらずパイプ椅子と長机だけの殺風景な室内だ。
「今回の中国地方クエストクリアおめでとうございます」
「ええ、こちらも思わぬ収穫がありましたわ」
聖女さまはクリア証拠の大型フロッグドラゴンの角を朱雀さんに渡した。
そして思わぬ収穫とは、谷川シェフの加入のことだ。
「今回の討伐報酬です」
朱雀さんは封筒に入れた明細書を聖女さまに渡した。彼女は前回と同じく黙って懐に入れた。
そこに目を光らせたメリーが聖女さまに指を差した。
「ちょっと待ったーーーーーっ!」
「なにかメリー?」
「すっとぼけんな聖女。報酬いくら貰った?」
金のことになるとカンが鋭い女だ。
「ごめんなさい。まだ中身見てないわよ」
「だったら今すぐ確認しなさいよっ!」
「分かりました」
メリーの押しに負けた聖女さまが封筒を開けると明細書をチラリと確認した。
そしてほくそ笑むと仕舞って懐に入れた。
「どうなのっ?」
食い気味に顔を近づけるメリー。
「…………まぁまぁよ」
「なっ!」
開いた口が塞がらないとはこのことだ。聖女さまのあまりに自然で曖昧な返事にメリーが固まった。
「ちょっと!誤魔化さないで貰った金額正直に言いなさいよ聖女っ!」
「仕方ありませんね。今回貴女の報酬です」
メリーに追求されるのが想定済みだったのか、聖女さまは用意周到に現なま入りの給料袋を手渡した。
「えっ…………結構重い。そうね…………わ、悪かったわね。疑って…………」
頬に汗を流しながらニヘラ笑いを浮かべたメリーは給料袋を上着のポケットに入れた。
現金な女だ。
ちなみに俺にはまた給料くれないの聖女さま?
そうだよねぇ、俺は聖女さまの犬だからあきらめた。
「それでは次のクエストは北海道積丹半島に向かってもらいます」
朱雀さんがモニターを出して北海道の地図を見せるとメリーが得意気に『次のボスはきっとクマね』と得意気に言った。
日本初心者異世界人の癖になんでソコだけ知ってんの?
とにかく次の目的地が決まり。出発は明日に決まった。




