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ゴルド中央教会総本部

「でかいな…。」


教会の目の前まで来たケンジ、遠目で見る教会は四角い建物で学校のイメージがあった。


(実際に近くで見てみると細かい装飾が施されているな、ガラス加工技術もあるのか。)


窓にはステンドグラス風の窓ガラスがはめ込まれていた、短剣が描かれていたり、花などがデザインされていた。


「こんにちは。」


教会の外装に見とれていると声をかけられた


「あ、こんにちは。」


「お祈りですか?どうぞ中にお入りください、門はいつでも開かれています。」


やわらかい口調で話しかけてきてくれたのは教会のシスターだった。

細い目をした優しそうな顔で、背丈は160cmほどの平均的な身長だった。


アケラ村のシスター、ラシさんと違うのは服が真っ白な修道服という点だけで教会の人は基本同じ服装なのだろう。


「あ、知り合いと待ち合わせをしていまして…。」


「あら、そうだったんですね。

あ、申し遅れました、ゴルド中央教会総本部で幹部をしております『デル・パサミ』と申します。

お初にお目にかかります、ケンジさん。」


「!なぜ名前を...。」


「ささ、お外で話すのもなんですからどうぞ中へ。」


二コリと微笑むその瞳はあまり笑っていないように感じた。


今ケンジの頭の中はアケラが話してくれた教会の『仕事』の事でいっぱいだった。


(えっ、もしかして異世界人ってことがばれた!?けど悪いことはしていないはずだし…もしかして能力の事?死ぬまで国の奴隷として作物を作り続けろとか!?

とうしようどうしようどうしよう…!!)


いろいろ考えているうちにケンジは教会内部に入っていった


中の装飾はシンプルなものだったが細かい彫刻がいくつかあり、落ち着いた装飾の中に魅せるものがあった。


正面には大きな女神像がおいてあり、何とも神々しい姿でたっていたが、今のケンジにそれを見る余裕はなく頭の中でどうするべきかを必死に考えていた。


(今のところアケラさんにしか自分のこと話してないけど、自分の事を教会の人に教えて良いのだろうか?

この世界における異世界人はどんな立場なんだ?

嘘をつける様な雰囲気じゃないし...アケラさーん!!助けてくれ〜!!)


「こちらへどうぞ、そう焦らなくても良いですよ。

我々はいくつか聞きたいことがあるだけで、あなたに危害を加えるつもりはありません。」


パサミさんはそう言って通路の扉を開けた。


中は窓のない白い壁に囲まれた3×3の綺麗な立方体の部屋だった。

真ん中に木の机と椅子があり、机には万年筆に使われるインクがおいてあった。


拷問部屋を想像していたケンジは拍子抜けした。


「どうぞ向こう側へお掛け下さい、アケラ様も教会に着き次第こちらにご案内しますのでご安心ください。」


ケンジは言われるがままに向かいの椅子に座った、何を聞かれるのかソワソワしていた...


だが、すぐにその不安も薄まり、ケンジは落ち着きを取り戻していった。


(あれ?この感覚、前にもどこかで...)


「あの、ここって光魔法のなんとかって言う空間ですか?」


ケンジの向かいに腰掛け、1冊のノートっぽいものを取り出していたパサミは、その薄い目を少し開いて驚きの表情をした。


「おやおや、この部屋の魔法をご存知ですか?

それはそれは...」


すぐに薄い目に戻った彼女は何やら不敵な笑みを浮かべ、持っていたノートを開きペンをとりだした。


「では、えーお名前はケンジさんでよろしかったですね?」


「は、はい。

あの、何の質問を...?」


「今あなたには不法入国者の疑いがかけられています。

数日前に、アケラ村付近での確認がされましたがそれ以前の目撃などが一切なく、尚本人は記憶喪失との事で。

本当に記憶喪失なら申し訳ないのですが、現段階では怪しい点が多過ぎますので一時身柄を拘束させていただきます。」


拘束

その言葉にケンジは身震いした。


この世で言う『拘束』とはイメージとかなり違う可能性があるのだ、しかもここは教会。

暗殺などの裏組織としても機能していると教わったばかりである。


「な、なんでも正直に話しますのでお命だけはどうか...!!」


必死に祈りの手を合わせ懇願するケンジ。


その姿をみたパサミはキョトンとした顔をして


「あはっ、大丈夫ですよ。

酷い事をするわけではありません、いくつかの質問をしたいだけですのでご安心ください。

その後審査して解放致しますので。」


とりあえず命の保証だけはあると聞き、一気に力が抜ける。


「では早速ですが質問を。

本名を、フルネームでお聞かせ願います。」


「な、ナカヤマ ケンジといいます。」


「ふむ。」

パサミはノートにペンで書き込んでゆく。


「ではご出身を。」


それはケンジにとって非常に困った質問だった、なんせ日本なんて国は無い(と思われる)のだから。

仮にあったとしてもこの世界の日本なんてのは知らない、すぐにボロが出るだろう。


(まいったな、アケラさんが居れば答えて良いかどうか聞けるのに...そうだ!)


「あ、あの。」


「?」


「自分、アケラ・グラディウスさんと待ち合わせしていて...自分の話はかなりややこしいのでアケラさんが居るとお話しやすいのですが...。」


「なるほど?ややこしい話ですか...。

アケラ様に不利益な事になる感じですか?」


異世界人のことを知るのは今のところアケラだけだ、そしてその情報の重要度を知るのも彼女のみ。

この情報が漏れることで彼女の不利益になる可能性は高い


「そうですね、一度彼女を通してもらわないと...」


「訳ありですね...わかりましたアケラ様が来られるまで待ちましょう。」


(ホッ。)


「直ぐ来られます?」


「教会で待ち合わせしているので...来ると思います。」


「そうですか...ではこの部屋でお待ちください、アケラさんが来られるまで。」


「は、はい。」


ケンジは白い部屋に1人で残された。

 

◇     ◇     ◇     ◇



「思ったより時間かかっちゃった。」


アケラは路地を駆け足で進んでいた。

ノックスの鍛冶屋の後に、マントを加工してもらう革細工屋に寄っていた為かなり日が傾いていた。

ケンジとは日が傾くまでに教会で待ち合わせしようと思っていたが、かなり遅れてしまっている。


「いやはや、初めて来た人を見知らぬ土地で待たせるのは良くないな。」


その後、何とか日が沈むまでには教会の正門にたどり着いたが、そこには誰もいなかった。


「あれ?もういると思っていたんだがな...すいません!ここに20代後半の革の毛皮を着た青年を見かけませんでしたか?」


近くで箒で掃除していた黒服のシスターに声をかける。


「...アケラ・グラディウス様でしょうか?」


「そうだが。」


「ケンジ様からお話を伺っております、今は東の光の部屋にてシスターパサミお姉様とご一緒です。」


「はぁ、そうですか。」


「ご案内します。」


大きなため息をつくアケラと、表情を変えずに淡々と話すシスター。

(面倒だな、もう教会に目をつけられちゃったかぁ、面倒事にはしたくなかったな~。)


シスターの後ろについてゆき、ケンジのもとへと向かう。


(もう教会本部に話が来てるって事は、村のラシちゃんも知ってるだろうな。

いや、私が知らないだけでギルマスとかリガ君が調べようって話だったのかもな。)


「教会はどこまで調べがついているのかな?」


歩きながらシスターに語り掛ける。


「...何もつかめていないと聞いております。」


「何も?」


「幹部の方がイラつきを隠せない様子でした、恐らくあの男性についてでしょう。」


(なるほどね、恐らく身元調査をしても何も出てこなかったんだろうな。

教会はプライドが高いからな…。)


「こちらでお待ちください。」


案内されたのは白い部屋、その真ん中に椅子と机があり不安げな様子でソワソワしている青年がいた。


「アケラさん!!」


「ごめんね~来るの遅れちゃった!」


右手だけで手を合わせるジェスチャーをするアケラ


「まだ何も話せてないんですけど、教会の人が僕のことを教えてほしいって...。」


「なんとなく話は分かるよ、私が話すよ。」


そこに一人の女性が入ってきた


「お待たせいたしました、お二方が揃いましたのでお話を再開させていただきます。」


入室してきたのはパサミ、手にはノートとペン。


「おや!誰かと思えばパサミちゃん!白服になったんだ!!」


「...一応今の位ではあなたよりは上なので、敬語を使ってください。」


「なんでぇ、私が騎士団に入ったときからの仲じゃん!」


「とにかく!今からする話は仕事です!!座ってください、聞きたいことが山ほどあります!!」


「全部聞かないと怒られる感じ?」


「分かってるなら協力してください。」


(アケラさんが来てくれたから安心したけど、聞きたいことって何だろうか、まず異世界の説明からしないといけないし、そうなるならアケラさんの能力の事も話さないといけないのかな。

能力知らないけど。)


3人は椅子に座り三者面談のような形になった。


教会での取り調べの始まりである。



◇ ◇ ◇ ◇



「なるほど...」


パサミに話した内容としては

・大天使ヨヴィの力によって転生した

・不思議な力を授かってる事

・決して敵ではない事


「う〜ん、にわかに信じがたいですが転生や天からの授かり物の話は確かに存在します。」


パサミはチラチラこちらを見ながらアケラと会話を続ける。


「その話ってのは?」


アケラは身を乗り出してパサミの話を聞く。


「まぁ、私も白服になってからまだ浅い身で使いっ走りしかしてないのですが、地下図書にその様な文献が残されてるのは読んだことがあります。」


「あ、あの、話を遮って申し訳無いのですが。

『白服』って何ですか?

気になって話が...」


「あぁ、階級だよ階級!

シスターたちは黒服から始まり、白服になるのさ。

白服はトップをのぞいて13人、そのうちの1人がパサミなんだよね。」


「何故あなたが自慢げに話すのですか?

まぁ言ってることは正しいです、ちなみに私は13位なので一番下っ端の新入りの白服です。」


(幹部制度の服装の事だったのか、にしてもアケラさんは顔が広いな、騎士団だったからかな?)


実際、騎士団の仕事としては外回りと国内の警備などがあった、その警備の対象として教会や市場があるので最年少で騎士団へ入隊し10年間勤めた彼女の顔はかなり知られてる。


「とにかく、転生とやらは地下図書で調べておきます。

そして上司に相談して指示を仰ぎます。」


「それよりもさ、教えてよ、依頼者。」


椅子から立ち上がり、退室しようとしていたパサミが動きを止める。


「...言うとでも思ってるのですか?」


「ふふっ、白服、似合ってるね。」


空気がピリつくのがわかる、ケンジからはパサミの背中しか見えないが怒りの様な雰囲気は感じる。


「ここで貸し借りをチャラにしたくない?

教えてくれたらチャラにしてあげるんだけど。」


パサミは振り返るとアケラの目をまっすぐと見て


「...あの時の事は本当に感謝しています、大きな借りがある事も分かっています。」


「じゃあ...」


「しかし、私も教会の1人、しかも白服としての責務があります。

いくら貸しがあろうと、たとえこの首が飛ぼうと情報は売りません。」


その覚悟を聞いたアケラは肩をすくめて


「さすが白服だね、こりゃ無理そうだね。」


アケラはそう言うとケンジを見る。


「あっ、僕は特に気にしてないです!!実際怪しいですし、説明がつかないことも多いので、僕自身も何も分かってないことが多すぎて...」


まだこの世界に来て1ヶ月も経っていない、なんとなく世界観などには慣れてきたかもしれないが。

まだまだ分からない事が多い、今後も苦労するだろう。


「では、私は一度書物を調べたりしますね、お二方は自由にしていただいて大丈夫です、あとはこれ。」


パサミはノートに挟まっていた一枚の黄色い封筒を手渡す。


「うわ、黄封筒じゃん、やだなぁどうせこのタイミングだと村からじゃないの?

どうせ『緊急 村へ戻れ』とかだよ。」


「これは?」


「こちらは『郵便』という物です、鳥を使い高速で文をやり取りするシステムでして。

そしてこの黄色は『緊急』赤だと『異常事態』です、逆に白は普通の手紙です。」


(驚いた、伝書鳩みたいなシステムがある!!なんだかいろんな時代の技術が混ざった世界だな。)


「なるほどぉ、宛先は?」


「アテサキ?」


「あっあっ、送り主!!」


「どれどれ?ダロランだって、嫌な予感。」


アケラは封を切り中を見る、パサミも気になるのか退室せずにこちらを気にしている。


「ん〜〜〜〜〜〜、予想的中、魔族の訪問があったらしい、対応求むとな。」


「「魔族!!」」


ケンジのイメージはやはり悪いイメージが出てしまう。

ここはゲームの世界では無いので必ずと言って悪では無い、しかし幼い頃から触れたゲームでは必ずと言っていいほど『魔族』は悪者として扱われていた。


「ちょちょちょっと!魔族ってほんとですか!!?

知らないんですけど!!」


パサミが一番驚いているかもしれない、アケラは予想できてたのかあまり驚いていない。


「あれじゃない?教会の定時連絡のタイミングが悪かっただけとか。」


「致命的な悪さですね、改善が必要かも...」


「魔族って、敵なんですか?」


「いや?今回は違うみたいだね、魔族にも悪い奴と友好的なやつが居るよ、人間の様にね。

悪い奴なら手紙は赤色だし、そもそも手紙出す余裕無いと思う。」


それもそうだ、手紙を出せてる時点で皆は無事なのだろう。


「けど心配ですね、すぐにでも帰ったほうが良いのでは...?」


「いやいや、明日で良いよ。

今日はとりあえず休んで明日の朝イチに出よう。」


帰りは船は使えない(逆流の為、倍以上時間がかかるそうな。)ので陸路で帰らねばならない。

そうなると陸路は魔物や賊に襲われたりするリスクが出てくる。

しかも今から出るとなると確実に夜になる。


「出るなら明日の早朝に出たいかな、メメを回収しないといけないから。」


「メメ?」


「私のメイド、野営地で船に乗り換えたから野営地からココまで馬車を運んでくれてるの。

多分今日の夜には着くと思うから。」


(あぁ、すっかり忘れていた、申し訳ないな...。)


野営地までアケラ達が乗ってた馬車を操縦してくれていたのは彼女だった、野営地で船に乗り換えた後にゴルド王国まで馬車を走らせてくれてるのだった。


「メメさんと合流した後に帰る感じですか?」


「それが一番早いかもね。」


「では話が纏まりましたので、私は失礼します。

また何かあれば教会から連絡があると思いますので。」


パサミは色々とノートに書きまとめ部屋を出た。


「では私たちはお祈りをしてから宿屋に行こう。」


「お祈り?」


「あれ知らない?教会でお祈りすると天使様と会話出来るんだよ。」



◇ ◇ ◇ ◇


場所を移動して教会の大広間。

大きな天使像がある広間には複数人の黒い服を着たシスターが祈りを捧げていた。


ケンジは決して信仰深い方ではないが、この世界に連れて来てもらった恩もあるし、最初はかなりお世話になった、あのアドバイスや能力などがなければ行き倒れていただろう。


(近況報告とこれからの助言を貰おうかな。)


そんなことを考えているとアケラが手招きしてくる。


「こっちこっち、祭壇前はシスターの祈り場だから我々信者は長椅子に座って祈るんだ。」


よく教会で見る様な長椅子に腰掛け、手を合わせて祈る。


(祈ったとしてもな、前回のヨヴィさんは忙しそうだったからいつでも話せるか分からないよな...)


ケンジは瞼を閉じて語りかけた。




(...あれ?)


体が軽くなった感覚を覚えてふと目を開ける。


目の前にはいつの日か見たちゃぶ台。

周りを見渡すと横にはアケラさんが居た。


「おっ?あれ?」


アケラも目を開けてびっくりした感じであたりを見渡す。


「ここって、ヨヴィさんの...」


「あぁ、私も来たことがある!天使様の空間だ!!」


「ゴルド王国まで来たんだね。」


「「おわぁ!!」」


ちゃぶ台に並んで座っていた2人の目の前にいきなりヨヴィが姿を現した。


「あはははっ!!驚きすぎだよ、ここは光の力が強いからね、声だけじゃなく意識も行き来できるのさ。

それよりも楽しんでるかい?異世界を!!」


いきなりの事すぎて混乱しかけたが、この空間には精神安定の魔法が常時発動してるのですぐに落ち着いた。


「そう...ですね、なんか前の世界のいろんなのが混ざってる感じです。

技術や服も時代がバラバラな感じが...。」


「おぉ、着眼点が良いね!!」


「そうなのか?ケンジの世界と似てる感じなのか?」


「似てるというか、別世界なのに明らかに僕がいた世界の知識や技術がある感じなんです。

通貨の単位は違いましたが、重さの単位や長さの単位とかも...。」


ふとヨヴィに目をやると、もの凄くニヤニヤしていた。


「そこに気付いてくれるとは!嬉しいねぇ、そう!何を隠そうこの世界の一部はケンジ君が元居た世界の知識が使われている!!」


なんとも衝撃的なカミングアウトだ。


しかし


「どゆこと?」


1人話についていけないアケラ。


「わかりやすい話、君たちが生まれるずっと前から異世界転生という試みはあった、それもトクトクプロジェクト以前から様々な方法で異世界転生は行われていたのだ!」


「ほほう、つまり我々の先祖は別世界の住人と言う事ですか?」


「おしい、異世界転生者は子を成せない様になっているので先祖に異世界人は居ない。

異世界人はこの世に知識を遺していったのだ。」


ドヤ顔で答えたアケラをピシャッと突き放す。


心なしかしょんぼりしてる気がする。


「その中に日本人はいました!?」


「もちろん、さまざまな人種が死後に転生したりしたよ。

もしかしたら馴染み深いものがコチラでも見つかるかもね。」


「おおっ!新しい目標ができました!」


「そうそう、何か目標があるといいよね、ケンジ君は自由なんだ。

授けた能力でスローライフを満喫するのがいいよ、それが徳を積んだ褒美ってことになるのかな。」


(なるほど、なんか異世界にきて使命みたいなものがあると思い込んでいた...自由にしていいんだ。)


「天使様、私も質問があります。」


「ヨヴィで良いよ、天使ってほど現世に影響を与えていないからね。」


「では、ヨヴィ様と呼ばせていただきます。

『騎士の心』についてです。」


「あーあれね....ややこしい話なんだよね。

あれはもともと私の前のプロジェクトの担当者が作ったものなんだよね。」


『騎士の心』ヨヴィの前任者がトクトクプロジェクトを効率よく循環させるために作成した『仮死装置』である。

仕組みとしては


騎士の教えとして『自己犠牲』の精神をもって使用した場合、『徳』が発生する。

その瞬間に光魔法で精神を飛ばし仮死状態とし、その仮死状態の間に『トクトクプロジェクト』の契約を結ぶ。


といった何とも強引で非人道的な装置である。


「そのことは!!騎士団の上層部は把握しているのですか!!??」


「いや?そこまでは私はわからないな、けどかなり複雑な装置だから分かってないんじゃないかな~。」


「...そうですか。」


アケラからすると半分人殺しの様なものを騎士団が使用していたのがショックだった、もし黒幕が居るなら懲らしめてやろうと思っていたのだ。


「その前任者って。」


「ノーコメント、これ以上はダメ教えられない。」


急に真剣な声で話を切り上げたヨヴィにアケラはそれ以上踏み込めなかった。


「あと、こうして意識下で会うのも次回からは月一、満月の日だけにしよう。

本来あまり関わりすぎないほうが良いんだよ、我々は。」


「えぇ、まだまだ聞きたいことがあるのに…。」


「ケンジ君はゲームを始めるときに攻略本を最初に読むのかな?」


「…確かに。」


「君はそのまま第二の人生を楽しみたまえ、そしてアケラ君は復讐に囚われすぎないように、味方はいるよ。」


「っつ!ヨヴィ様!!」





「「!?」」


瞬きをした瞬間に目の前の空間は消え、代わりに教会の大広間が見えた。


「戻されちゃいましたね。」


「あぁ…我々の力だけで何とかしよう…さっ!!切り替えていこう!!」


(アケラさん、なんか無理しているな…復讐?とか言ってたし。

ドラゴンに襲われた時の事をまだ引きずっているのかな。)


「アケラさん、無理しないでくださいね、手伝えることあるなら行ってください。」


「…ありがとね、とりあえずはアケラ村の発展だね!!」



二人は教会に寄付を少しして、宿屋へと向かった。









読んでいただきありがとうございます!!


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