93.
『Café ONE plus ONE』で、秋山は閉店作業をしているところだった。
そこに現れ、鮮やかな笑顔でひらひらと手を振ったのは、
「店―長♪」
「朋子ちゃんじゃないか。どうしたの」
「お店、もう終わりですよね?よかったら一杯どうかなと思って」
「一杯って……ありがたいけど、君まだ未成年だろ?」
秋山は苦笑した。
朋子はかわいらしく頬を膨らませると、
「未成年は恋愛対象に入りませんか?」
上目使いで秋山を見つめる。
秋山は床を掃いていた箒を用具箱に戻し、
「そうだね、あと五年したら歓迎するよ。そのときは俺、もうオジサンだけど」
「嘘つき」
突如、冷たい声が割って入った。
「舞とはデートしたくせに」
怜悧な顔で指摘され、秋山は眉を寄せる。
「何で君がそんなことを知ってるの」
「やっぱり、いくらかっこよくても、店長もああいう女に騙されるクチなんだ。残念」
朋子は唇を尖らせ、刺々しい声で言った。
かと思えばにっこり笑い、
「あの清純ぶった顔に、みーんな騙されるんですよね。ホント、男って馬鹿」
秋山の表情が、困惑から、かすかな嫌悪に変わる。
「何を言ってるの。舞は君の友達だろ」
「友達?――笑わせないで」
朋子は腕を組むと、秋山を挑戦的な目つきで見上げた。
「知らないんだったら教えてあげる。あの子はね、男の竿を斬って盗む、汚くていやらしい化け物よ」
カタンと物音がして、二人は音のしたほうを振り向いた。
そこにいたのは、真っ青な顔で立ち尽くす舞だった。




