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竿斬りの舞  作者: 凪子
第八夜
91/146

91.

一詩の瞳は、やじりのような鋭さで舞を捕えている。


へばりついた喉の奥から、しわがれた声が出た。


「どうして」


一詩は切ない目をして微笑んだ。


「知ってたよ。俺の親父は北山組とその背後にある組織、SPOに資金援助をしている。俺も会社を継ぐ上で知らないわけにはいかなかった。北山や田中に面が割れたのが決定打になったな。SPOは今、血眼になってお前の行方を探してるぞ」


信じていたものが壊れゆく音に、舞は耳をふさぎたくなった。


「俺が御剱に融資を申し出たのは、狭山コーポレーションにとってもSPOにとっても一番都合のいいことだったからだ。舞さえSPO側についてくれるのなら、怖いものは何もない」


「兄さんは……御剱だけでなく、私を買収しようとしていたのね」


小さく痛んだ胸の傷を、秋山の優しい言葉がかすめてよぎった。


こちらに来いと言った彼もやはり、SPO――狭山と裏でつながっていたということか。


「幼馴染のお前に、こんなひどいことをさせる日向野を、俺は許さない。舞、俺を信じてこっちに来るんだ」


舞は思わずその手を取ろうとする。


だが、脳裏に朋子の悲痛な泣き声が蘇る。


萌の全てを悟ったような面持ちも。


それらが舞をがんじがらめにし、足を踏みとどまらせた。


「……できないわ」


「どうして」


「謝りはしない。私を、殺したいほど憎めばいい。だけどもう決めたの。


……あなたの竿をもらうわ。一詩兄さん」


一詩は衝撃におののいた。

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