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竿斬りの舞  作者: 凪子
第八夜
86/146

86.

「そうじゃ。わらわのように永い年月を生きる者は、その身に何らかの力を宿しているもの。竿斬りの能力があれば、それと対になる能力があってもおかしくはない」


「誰かがKにその力を与えたと?ですが萌様、再生の力で竿を元に戻せば、SPOは結局、竿を得ることはできなくなります」


舞の投げかけた疑問に、萌は事もなげに応じた。


「そなたは義竿ぎさおというものを知らぬのじゃな」


「……義竿?」


「精巧に造られた、竿のイミテーションじゃ。恐らくSPOはその培養に成功したのじゃろう。本物の竿は保管し、竿を失った人間には、そうと分からぬよう義竿を与えている」


「Kは正義の味方をかたって、私達や男を騙していると?」


いや、と萌は真顔で首を振った。


「それはKもあずかり知らぬことなのじゃろう。義竿の存在は、それを知る者の間ではトップシークレットになっておるからの」


舞は爪が皮膚に食い込むほど手を握り締めた。


「一詩兄さんの申し出を受けてください。そうすればSPOとも協力体制を取ることができる。日向野の支配に屈せずとも、生き延びていけるではありませんか」


萌は首を横に振った。


「話は当主名代より伝え聞いておる。じゃがこの話、妾は受けるつもりはない」


舞は頭に血を上らせると、立ち上がって萌の側に詰め寄った。


「どうしてですか。千載一遇せんざいいちぐうのチャンスでしょう」


我を忘れて伸ばした手を、天河が冷酷に弾き飛ばす。


「たとえ舞様であろうと、萌様に危害を加えるのなら容赦はいたしません」


懐に忍ばせていた拳銃を向けられ、舞の目が凍りついた。


「舞様!」


藤城が駆け寄ってきて、舞をかばう体勢で銃を抜こうとする。


舞は手を伸ばして、厳しく制した。


「やめなさい」


「しかし、」


萌はまるで老婆のように深い溜息をついた。


「よすのじゃ。同族同士で殺し合って何になる。そのような茶番劇、もう二度と目にしたくはない。――天河、銃をしまうのじゃ」


その声には濃い疲労の色が滲んでいた。


間近でよく見ると、幼さを残す頬の線は痩せ、眼の下にうっすらくまが浮かんでいる。

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