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竿斬りの舞  作者: 凪子
第七夜
80/146

80.






優しい時間はどうしてかくも短く、かくも一瞬なのだろう。


夢心地もつかの間、舞を現実へと引き戻し、冷水を浴びせかける出来事が起こった。


横浜駅にて二人を出迎えたのは、自家用車に乗った藤城ふじしろだった。


舞は驚きと怒りのあまり、言葉も出なかった。


家まで送ると言い張る秋山を何とか電車に乗せると、舞は険悪な表情で、


「どうしてあなたがここにいるのかしら」


「言いつけを破り、このような場所へ馳せ参じたこと、深くお詫び申し上げます」


平身低頭で謝られながら、舞は自家用車に乗り込んだ。


「秋山さんのことを警戒しろと言ったのはあなたよ。それなのにノコノコと姿を現わして……御剱家のことを嗅ぎつけられたらどうするの」


「秋山さん、ですか」


棘の含まれた口調に、舞の血は沸騰ふっとうした。


「何よ。言いたいことがあるならはっきり言いなさい」


「では申し上げます。日向野夫人が火急の用件で御剱家に協力を要請しました。至急、日向野本社へ出向いていただくようにとの厳命を、萌様よりうけたまわっております」


舞は不機嫌に眉を寄せ、盛大に息を吐く。


「分かったわ。行けばいいんでしょう。車を出して」


車は夜の街を滑るように走り出す。


美しい夜景を見つめながら、舞は運転席の彼を横目で見やり、低く呟く。


「藤城」


「何でしょう」


「一詩兄さんの申し出を、萌様は受けるかしら」


藤城は思慮深い瞳をそっと細め、少しく沈黙した。


「当主様のお考えは、わたくしなど下々の者には分かりかねます」


皮肉っぽい口調に、舞は鼻白はなじろむ。


「何を怒ってるのかしら。おかしな人」


「怒ってなどいません」


藤城はそっぽを向くと、不必要に勢いよくアクセルを踏み込んだ。

















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