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竿斬りの舞  作者: 凪子
第七夜

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81/146

81.






日向野本社へ到着した舞は、車を降りると最上階へ向かった。


出迎えた女帝の笑顔の裏に隠された硬い瞳の光に、舞は日向野ひがのが情報を得ていることを確信した。


狭山コーポレーションが御剱家を買収しようとする動きに、気づかない彼らではないだろう。


「いらっしゃい。突然呼びつけてごめんなさいね」


女帝は大胆にスリットの入った深紅のチャイナドレスを着ていた。


見事な茶器に淹れられたジャスミン茶から、かぐわしい香りがする。


こうして見ると、あでやかに美しい彼女は、とても病魔びょうまに冒されているようには思えない。


先日の鉄とのやり取りが、全て空虚な妄想だったのではないかとさえ思えてくる。


「あなたをお呼びたてしたのは、竿斬りの指令のためよ」


女帝は率直に切り出した。


「竿斬りですか?竿奪回の任務ではなく?」


「ええ、そうよ」


女帝の口調は穏やかだったが、反論を許さない力があった。


どういうことなのだろう。舞は首を傾げた。


このままKを野放しにしておけば、いくら竿を斬ったところで無意味なのに。


舞の逡巡しゅんじゅんを知ってか知らずか、女帝はドレスの胸元から一枚の写真を取り出し、無造作に机の上に置いた。


「これが今回のターゲットよ」


舞は身を乗り出して写真を覗き込み――音を立てて息を呑んだ。


女帝の大きな瞳が食い入るように見つめ、歌うように告げる。


「狭山一詩、二十六歳。狭山コーポレーション次期代表取締役社長」


それはまるで死刑宣告のように舞の胸に突き刺さった。


足元が崩れていくような、とてつもなく恐ろしい感覚が襲う。


「お願いするわね。竿斬りの舞」


言葉も出ない舞に、女帝は不敵に唇を緩ませると、勝ち誇るような笑顔でそう言った。


















【第七夜・終】

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