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竿斬りの舞  作者: 凪子
第七夜
75/146

75.

ケーキセットを食べ終わって時計を見ると、もはや夕刻を指しており、舞は驚いた。


コーヒーを飲んでいた秋山が、窓の外を眺めている。


夕陽が海に向かってきらめきながら沈んでゆく。


浮かぶ雲が、水平線の彼方が、黄昏色たそがれいろに燃えていた。


あっという間だった――本当に。


舞は過ぎ去ってしまった時を名残惜しく感じた。


魔法が解け、現実に帰るときが刻一刻こくいっこくと迫ってくる。


「最後に、あれに乗って帰ろう」


秋山が観覧車を指さした。


切なさが胸を覆い、息をするのも苦しい。


ゆっくりと空を横切っていく箱の中から見下ろす景色は、何の変哲へんてつもないものなのに、何より美しく見えた。


秋山は鉄のことを聞きたいと言いながら、ほとんどその話をしなかった。


交わした会話はごく普通の若者がするような、他愛のないものばかりだった。


意を決して問おうとしたとき、図ったようなタイミングで秋山が口を開いた。


「鉄のことをどう思う」


舞は来たか、と身構えた。


「立派な方だと思います。面と向かってお話したことは数えるほどしかありませんが、冷静で賢明で、なすべきことを堅実に行っている方だと感じました」


秋山は頬杖をついたまま返答を聞いていたが、やがて軽く笑い声を上げた。


舞は首を傾げる。


「これじゃ答えにならないですか?」


「いや、違うんだよ。やっぱり俺の目は正しかったなと思って」


「どういう意味でしょう」


秋山は柔らかく微笑んだまま、声を真面目なものに改めて、


「君は俺と似てるね」


思いがけない指摘に、舞は目をしばたかせた。

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