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竿斬りの舞  作者: 凪子
第六夜
62/146

62.

鉄は苦々しく眉を寄せる。


「相手は明らかに盗みのプロだ。足がつかないように身元を隠匿いんとくする分別ふんべつくらいはあるだろう。しかし、ここまで周到に正体を隠し、張り巡らした罠をかいくぐることができるとは思っていなかった」


舞は口元に指を当てて考え込む。


「今のところ分かるのは、Kが単独犯であることだけですね」


「カードに『私』と書かれていたからといって、そのまま単独犯だと捉えるのは早合点だと思うが」


舞は薄く笑って首を振った。


「いいえ。Kは間違いなく単独犯です。そうでなければ、わざわざ二度も警備を突破して倉庫へ忍び込むわけがありません。

恐らく彼と同程度の技量と知識をもった人間は、SPOにいないのでしょう。

犯人が一人だったから、侵入はできても、一度で全ての竿を持ち去ることはできなかった。

そして昨夜カードを置き、私達を挑発するためと見せかけて、前回持ち運べなかった分の竿を盗んだ。最初から、Kは二回倉庫に忍び込むつもりだったと私は思います」


鉄は大きく目を見開いた。


「Kは自信家だとおっしゃいましたね。それもあると思いますが、私にはこれが、Kが込めた怒りのメッセージのように感じられました。再生の力というのが、ハッタリなのか本当なのかは分かりませんが、」


バン、と大きな音を立てて社長室の扉が開き、血相を変えた女帝が飛びこんできた。


舞は呆気にとられて立ちつくす。


女帝は舞のことなど視界に入っていないかのように鉄の元へ駆け寄り、抱きついた。


白いうなじに目が釘づけになる。


鉄は驚いているのかいないのか、表情を全く変えずに彼女を抱きとめている。


女帝はなまめかしく吐息をつきながら、


「まずいことが起こったわ、鉄」


いつもの女帝からは考えられない動揺ぶりに、舞はただ事ではない何かが起こったのを悟った。


「舞。悪いが、今日のところは一度引き上げてくれ。また改めて連絡する」


鉄は女帝を抱きかかえたまま、抑揚のない声で言った。















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