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竿斬りの舞  作者: 凪子
第六夜
58/146

58.

鉄が直接舞に連絡を取り、呼びつけるということはごくまれだ。


そういうときは大抵異常事態で、切羽詰まった要求が突きつけられる。


経験上それを知っていた舞は、覚悟の上で日向野エンタープライズのドアをくぐった。


社長室に通された舞は、執務机の前に座っている鉄に向かって一礼した。


「御剱舞、ただいま参りました」


顔を上げて、舞は目をしばたかせる。


鉄はサングラスを取っていた。


いや、身だしなみを整える余裕もなかった、というほうが正しいだろう。


表情には、濃い疲れと焦燥感しょうそうかんが滲んでいた。


組んだ指の上に顎を乗せ、重々しく頷く。


「先ほど言っていたカードのことだが」


舞はふところからカードを取り出し、鉄に差し出した。


鉄はそれを眺めると、低く呟いた。


「同じだ」


「ではやはり、SPOの仕業しわざなのですね。前回の犯人が、もう一度冷凍保管庫に忍び込んで、逃げおおせたと」


「我々をあざ笑うかのようにこんなメッセージを残すんだ。犯人は相当な自信家だろう」


鉄の声のトーンは陰鬱いんうつで、表情は暗い。


舞はその原因に気づいて問いかけた。


御前ごぜんには、まだお知らせしていないのですね」


女帝がこの事態を知ったらどうするだろう。


烈火のごとく怒るだろうか。嘆き悲しむだろうか。鉄を責め、罵るだろうか。


感情をあらわにする女帝の姿は想像のつかないものだった。


鉄は額に手を当て、苦しそうに嘆いた。


「あれから全セキュリティーシステムを改新し、警備の数を倍増した。もう二度と、外部からの侵入など許さないと思っていたのに」


鉄が打ちひしがれている様子を見るにつけて、舞は根本的な疑問が沸きあがってくるのをこらえ切れなくなった。


「社長。御前はどうしてそこまで、竿を狩り集めることに執着するのですか」


鉄は開いた指の隙間から舞を見つめると、ゆっくりと手のひらを降ろした。


力なく左右に首を振る。


「違う」


舞は怪訝に首を傾げる。


「何が違うというんです」


「君の考えていることは間違っていると言ったんだ。竿を集めているのは彼女じゃない。この俺だ」

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