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竿斬りの舞  作者: 凪子
第六夜
57/146

57.







人混みの中をい、隠れるようにして舞はあてどなく歩き続けた。


ちかちかと頭の中で赤い光が明滅めいめつしている。カードを握りしめた手が汗ばんでいた。


誰も彼もが自分を監視しているように見えて仕方ない。


いつもついてくるはずの藤城も、竿斬りの際は自宅待機を厳命してあるため、気配を感じることができなかった。


耳障りなメロディーが鳴り響いているなと思ったら、鳴っているのは自分のポケットの中に入っていたスマホであった。


舞は駅前で立ち止まり、スマホを見る。


画面には『日向野鉄』の文字。通話ボタンを押すと、静かな声が流れてきた。


『もしもし、舞か』


「すみません。北山にしてやられました。あれは偽のアジトで――」


『分かっている。その情報が今こちらに届いたところだ。実は、竿塚さおづかのほうも昨夜にまた何者かの侵入を許した形跡がある』


舞は目をみはった。


「それでは、」


『ああ。被害状況を確認してみたが、倉庫の第一区画と第二区画のほとんどの竿が抜き取られている。どうやら相手は、持てるだけ竿を持って逃げたようだ』


地下倉庫の第三区画は予備の領域である。


つまり日向野はとうとう、SPOにほぼ全ての竿を奪取されたということだ。


それだというのに、鉄の声は小面憎こづらにくいほど落ちついていた。


「社長。倉庫には、白いカードが置かれていませんでしたか」


鉄は沈黙を持って応じる。


それが何よりの答えだった。


『ともかく、今すぐ本社へ来てくれ』


電話は一方的にそれだけを告げ、いささかの猶予ゆうよも与えずに切れた。

















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