表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竿斬りの舞  作者: 凪子
第五夜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/146

56.







だが、舞はのちに、自分の甘さを嫌というほど痛感することになる。


竿塚の鉄に竿を預けたのち、舞は竿奪回のため、frank中目黒店を訪れた。


早朝の、まだ店が開いていない時間帯を狙って侵入する。


厨房に入ると、大きな冷凍庫が目についた。両手をかけると、扉はあっけなく開いた。


そして――舞は大きく目を見開いた。


壁に手をつき、氷の含まれた冷気を吸い込む。


「……ない」


そこはもぬけの殻だった。竿どころか、食品類さえ一切積み込まれてはいなかった。


がらんどうな空間の中に、白いカードのようなものが置かれている。


手を触れた瞬間、舞の本能は激しく警鐘けいしょうを鳴らした。


――ここから離れなければ。


扉を突き破るようにして外へ転がり出る。


その瞬間、建物が一瞬横に膨張したかと思うと、凄まじい衝撃音を立てて内部から爆発した。


バアアアアアアアアアアン!!!!


鼓膜が破れるほどの音、もうもうと煙の立つ地面に伏せて、舞は苦しげに眉を寄せる。


うかつだった。――甘かった。相手の言葉を信じ、ノコノコこんなところにまで来るなんて。


北山の高笑いが聞こえてくるようだった。


教えられた場所に竿などなく、そこへ来た人間を抹殺するための罠だった。


本物の竿は、とっくに安全な場所へ移動していたのだ。


そして竿を奪われるという恐怖さえも、北山の前には何ら意味をなさなかった。


なぜなら――舞は手元に残った一枚のカードを見つめる。


そこにはこう書かれていた。




【愚かなる竿斬りへ。お前がいくら竿を斬ろうとも、再生の力を持つ私には無駄だ。竿は全て私が元の持ち主へかえす。お前の右手に有する力は、私には通用しない K】






同じカードを、日向野本社の地下倉庫で見つけた鉄は愕然とする。


つまりこいつは――Kは、盗みたいときにいつでも、竿を盗むことができるのだ。


日向野本社の地下倉庫の堅固な護りを、いとも容易たやすく破って。


そして、この手紙に書かれてあることが真実なら、Kが竿を取り返しさえすれば、北山や他の人間の竿を再び体に戻すことも可能なのだ。


再生の力。そんなものが存在するなんて。


舞はわなわなと震える右手を押さえ、強くかぶりを振る。


灼熱の炎を上げて燃えさかる建物は、哄笑こうしょうするかのように舞を見下ろしていた。































【第五夜・終】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ