31.
女帝は瞬く間にSPOという組織を調べ上げ、幹部の人間をピックアップした。
北山組はレストランやカフェなどのフランチャイズをはじめとした飲食店を経営している。
その中でも最も利益を上げているのは、新宿のホストクラブ「来夢」である。
舞は大手生命保険会社に勤めるOL『各務典子』としてホストクラブに潜入し、そこのナンバーワンホスト、阿部和哉に接近。
竿を奪った犯人と、竿のありかについて吐かせることを命じられた。
もし抵抗するようであれば、報復として竿を奪うこともいとわない。
どうせ相手は暴力団の息のかかった相手、警察に訴えることなどできはしない。
ホストクラブを訪れた舞は、あまりの悪趣味な装飾と、華美なスーツに身を包んだ不健康そうな青年たちに眉を寄せた。
だが、その中でも異彩を放つ存在が阿部だった。
彼にはナンバーワンと人に言わしめるだけの風格があった。
大人っぽく化粧をした美しい舞と、その横に並ぶ阿部は、まるで一枚の絵画のような眺めである。
女帝は阿部を、色じかけで落としにくい相手だと言った。
確かに阿部は抜け目なく、なかなか隙を見せない。
必要経費として渡された金は三百万ほどあったが、それを使い切っても阿部は舞になびいてこようとはしなかった。
叶うはずのない夢を見せ、金を絞り取れるだけ絞り取る。
あくどいことをすると思ったが、自分のしていることを考えれば、それでもまだ可愛いほうなのかもしれない。
――この仕事を成功させて、御剱家が信用に足ると証明してちょうだいね。
声色こそ優しかったものの、女帝の言葉はそのまま脅し文句となって舞の喉首をかすめている。
失敗は許されない。
だが、舞は竿を取るつもりはなかった。
今回は、倉庫から竿を盗んだ犯人が分かりさえすればいいのだ。手荒な真似をする必要はない。
阿部は確かにいけ好かない男だが、性犯罪者でもなければ、異常人格者でもないのだから。
自分の中で明確なラインを引かなければ、見境なく竿を奪うだけの存在になってしまう。
そのことが、舞には何よりも恐ろしかった。




