21.
「休憩入ります」
川村耀が声をかけると、店長からはまぬけな返事があった。
店舗の奥の従業員用スペースに腰をおろすと、タバコに火をつけて一服する。
無意識のうちに脳内で今月の給料を計算し、舌打ちをする。
時給1000円のアルバイトなど、つくづく割が合わないものだ。
世の中にはもっとてっとり早く、まとまった金を稼ぐ方法が山ほどある。
それを知っている人間のみが、富を得る権利を持つのだ。
自分は勝者であり、選ばれた側の人間であると川村は自負していた。
今月は女子中学生2人と高校生3人、OL1人を盗撮した。
ネット上に画像をアップロードし、スポンサーから金をもらってぼろ儲けだ。
そろそろ自分のウェブサイトを開くのもありかもしれない。
売りさばけるコンテンツはいくらでもそろっている。
暗い笑いが、けいれんのように頬をひくつかせる。
世の中なんて甘いものだ。
小銭を得るために汗水たらして働くなんて馬鹿げている。
それに、自分には技術がある。
カメラワークには絶対の自信があるから、盗撮がばれてブタ箱にぶちこまれる心配もない。
羽ぶりよく金を使うときの快感と、周囲の羨望の視線は、川村にとってたまらなく甘い蜜の味だった。
恍惚とした気分でいること数分、不意に尿意を覚えて、川村は壁の時計を見上げた。
休憩時間はあと5分ある。さっさと済ませておこう。
男女共用のトイレの個室に入り、ズボンのチャックをおろす。
用を足すと解放感に満ちあふれ、川村は完全に無防備な状態になっていた。
そのとき、ふと冷気を感じて、川村は振り向いた。
そして悲鳴をあげた。
いや、悲鳴をあげたつもりだった。
実際には、川村の口は鍵をかけていたはずの個室に侵入した謎の女にふさがれていた。
動転のあまり、全身がしびれて力が出ない。
冷や汗が体じゅうの毛穴からどっと噴き出す。
全力で抵抗しているのに、女はびくともしなかった。
恐慌状態の川村の股間に、舞の手刀が予告なしに振りおろされる。
断罪のギロチンによって容赦のない一撃を食らわされながらも、川村は何が起こっているのか全く理解できないままだった。
舞は素早く竿を回収し、漆塗りの小箱にしまうと、幻のように忽然と消えうせた。




