12.
「こっちだよ!早くはやく」
笑いながら小走りする朋子の手を取り、舞は優しく微笑み返す。
日曜日の東京ディズニーランドは、祝祭の空気に満ちていた。
地上に造られたかりそめの楽園で、人々は浮世の苦しみをつかの間忘れることができる。
道行く人の何とはなしに浮かれた様子を眺め、舞は目を細めた。
ビッグサンダーマウンテンの前には人だかりができ、むわりとした熱気が立ち込めていた。
「久しぶりだね。二人で遊びに来るの」
「朋子、絶叫系乗れるようになったの?」
「それは小学校の時の話でしょ。いつまでたっても持ち出すんだから」
「あの時の朋子ったら、ずーっと私の腕にしがみついて泣いてたね」
「もう。舞の意地悪」
頬を染めている朋子を見て、舞はいたずらっぽく笑う。
「そろそろお昼だよね。お腹すかない?」
小花のあしらわれた腕時計を見て、朋子は言った。
「言われてみれば、ちょっとすいたかも」
「じゃあ私、そこでチュロス買ってくるから待ってて」
「それなら私が」
「いいからいいから。ちゃんと並んでてね」
朋子は舞の肩を押して列に並ばせると、身軽に走り去った。
取り残された舞は、しばし手持ちぶさたにスマホを見る。
独り(ひとり)でいることは、舞の日常だった。
孤独は影のように常にそばにあり続けるもので、改めて苦痛だと感じることはなかった。
しかし今、水が沁みこんでくるように理解する。
見知らぬ人たちで溢れ返ったこの世界で、これからずっと、たった1人で生きていかなければならないのだと。
うつむいていると、背後から突然肩をたたかれ、舞は身構えた。




