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竿斬りの舞  作者: 凪子
第二夜

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13/146

13.

「驚かせてしまい、申し訳ありません」


丁重に言い、目礼したのは天河てんかわだった。


舞の表情は驚きから、冷ややかなものへと変わる。


周りを見れば、このむし暑い中、律儀りちぎにも背広を着込んだ美しい青年の姿は注目の的となっている。


「何の用」


不快感をあらわにして、舞は言い放った。


めぐみ様がお呼びです。お楽しみのところ大変恐縮ですが、至急お屋敷にお戻りいただきたく存じます。正門を出たところで、藤城ふじしろがお車にて待機しております」


口先だけは詫びていても、鋭利えいり眼光がんこうにはいささかも謝罪の色は込められていない。


舞はくっきりと眉根を寄せた。


「ここへは来るなと言ったはずよ」


「藤城はたいそう恐縮しておりました。二時間ほど前ここへ到着した際、せめて正午までは待つようこのわたくしに申し出てきましたから」


天河てんかわは御剱家の筆頭執事ひっとうしつじである。


彼に逆らうことは、御剱家当主の意向にそむくことを意味する。


このままでは、藤城はただでは済まされないだろう。


「その申し入れをんだだけ、譲歩したと言いたいの」


「いいえ、そのようなことは。ただ、舞様の慈悲じひ深きお心で藤城をお救いになることは可能かと」


「この私をおどすというわけ」


舞は腕を組み、冷酷にしなるむちのような声ですごんだ。


萌からの呼び出しは、日向野から任務の依頼があったことを意味する。


帰還きかんすれば、ただちに指令が下されるだろう。


少女でいられる時間を奪われ、非情な竿斬りへと引き戻される。


嫌だと心は叫んでいる。


けれど、どんなに抵抗したところで、力ずくで連行されるのは目に見えているのだ。


「舞!プレーンとね、苺とチョコ、どれが……」


何も知らず駆け寄ってきた朋子が、天河の姿を見て絶句ぜっくする。


その細い指先から、チュロスの袋がかなしい音を立てて地面へ落ちた。

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